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序章




 目の前に広がる渓谷、豊かで柔らかな膨らみが揺れる。俺はそれを前にジリジリと後退した。いかん、負けるな、あれは悪魔の誘惑なのだ。


 しかし俺も男だ。目は吸い寄せられるようにその白くたわわな膨らみを凝視してしまう。


 だいたいなんでわざわざ胸元がこれでもか! と開いた服ばかり着るんだ。少しは慎みというものを――



「おいで、みーちゃん」


「はぅん」



 壁に背がぶち当たり、後退出来なくなった俺に向かってそこだけ淑女な色の薄桃色の唇が蠱惑的に俺を呼んだ。


 目の前に迫る美女は豊かな胸を揺らして俺に手を伸ばす。俺の意地はそこで呆気もなく砕かれた。


 ――きゅむっ


 美女が俺の脇に細い指先の手を入れて持ち上げる。俺の顔面は視線が外せなかった渓谷へと挟まれた。



「ハァハァ……みーちゃん可愛い食べちゃいたいわハァハァ」


「…………」



 美女の手が、俺の尻をさわさわと撫で回した。俺は両の頬に綿雪のような柔らかな感触と人肌の温もりを感じつつもうこの際だから堪能するかと、尻の怖気は無視してくったりと美女の胸へ体重を預けた。すんと鼻をならせば、桃のような甘い匂いがする。


 俺に貞操の危機を抱かせるこの美女の名はレーヴァテイン。胸元の露出が高い服を好んで着用し、彼女が動く度に揺れるたわわな乳をもちながら腰のくびれは俺の腕でもすっぽりという冗談のようなプロポーションを持つ。それでいて特Sランクという凄腕の魔術師。少々垂れ気味の眦にぽちりとついた泣きボクロ、薄桃色の唇が愛らしいくまぁそこらの男は彼女が通ればみんな振り返る。


 そう、この女、黙って立ってるだけならば文句なしの美女なのだ。



「ハァハァ……みーちゃんみーちゃんお尻可愛いね。ちょっとだけ噛んでいい?」


「……いいわけあるかァァーッ」



 本当に、黙ってさえいれば……文句なしの美女なのに。


 あろうことか半ズボンに手をかけ脱がせにかかる女を突き飛ばし俺は部屋を飛び出した。



「あぁぁっ、みーちゃんの生尻ィ!」



 俺はけして、泣いてなんかいない。けして!




***




 恐怖の変態美女から逃亡した俺は、逃げ込んだ馬舎で藁をはんでいた馬相手にブツブツとあの女の所行について愚痴を垂れていた。馬よ、頼むからそのつぶらな黒い瞳で邪険そうに俺を見るな。


 膝を抱え何故こうなったと俺は目を細め馬舎の窓から見える青い空を見上げた。馬舎があるとはなかなか上等な宿屋であるなと現実から逃避をはかるが、俺を取り巻く状況が変わる訳ではない。


 憎らしい……あぁ忌々しい忌々しい。


 俺は国際魔獣対策機構では名の知れた剣士であった。レンバノンにその人有りと詠われ、剣の一薙ぎで十の魔獣を屠ると恐れられた大剣使い。機構所属の派遣戦闘員のランクでは特Aと位置付けられ、夜毎女が俺を誘いレンバノンの夜の野獣という恥ずかしい二つ名まで持っていたこの俺が!


 いまや、みーちゃんである。


 ぷにぷにとした瑞々しい肌、薔薇色の丸い頬に大きな濡れた瞳、まだ筋肉の発達がない弾力のある小尻とふっくらした手足……ともすれば少女と見紛うこの容姿。


 グァン! と俺は馬舎の壁に自ら額を押し当てた。叩き付けるように何度かぶつけこぶが出来て止まる。


 屈辱とはまさにこの事である。


 何が悲しくてこの俺が! レンバノンの夜の野獣と言われたこの俺がぷにぷにショタで女に守られ夜毎女相手に貞操の心配をせねばならないのか!



「グゥッ……!」



 何がみーちゃんか! 女に守られてどうするのだ。愛らしくて剣が握れるか!


 御し難い感情に苛まれるまま唇を噛み締めて床を殴るが俺の拳はたったそれだけで痛みを覚え擦り切れた。


 すべてはあのイーフリーテス討伐作戦から狂いだしたのだ。






他のが詰まったので息抜きに頭をあまり使わない話として書き出しました。

そんなに長くはならない……はず。

欲望だけを詰め込みました。

質問疑問誤字脱字ありましたら指摘等お願いいたします。

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