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伝説の最終決戦装備、実は『延滞金発生中』の盗難品

 馬車が止まったのは、かつての帝国騎士団・中央演習場跡だった。今は建物の大部分が差し押さえられ、ナニワ商会の「資材置き場」として利用されているはずの場所。その一角にある、管理の目から漏れた地下貯蔵庫が、帝国残党の根城だった。


「さあ、こちらへ。君を待ちわびていた義士たちがいます」


 レオンハルトにエスコートされ、セレスティーヌは薄暗い地下へと足を踏み入れた。そこには、すすけたよろいを着た騎士や、顔色の悪い魔導師たちが、松明たいまつの炎に照らされて立ち並んでいた。


「……おお、ついに。ついに我らが希望、真の聖女様が……!」


 一人の老騎士がひざをつき、震える声で叫ぶ。その様子を見て、セレスティーヌは内心でガッツポーズを作った。


(これよ、これ! この『歴史の闇に隠れたレジスタンス』感! アルベルト様は残念だったけど、こっちが真のメインシナリオだったのね。やっぱり私は愛されているんだわ!)


 彼女の脳内では、すでにエリザベスを倒して帝国を再興し、レオンハルトと結ばれるハッピーエンドのスタッフロールが流れ始めていた。


「皆様、顔を上げてください。私はセレスティーヌ。この世界を救うために召喚された聖女です。……で、レオンハルト様。私へのプレゼントっていうのは?」


「ええ。エリザベスという強欲な魔女に対抗するには、君の魔力を増幅させる『特別な鍵』が必要です」


 レオンハルトが合図すると、奥から四人の男たちが、ずっしりと重そうな白銀の箱を運んできた。ふたが開けられた瞬間、地下室全体を塗り替えるまばゆい光があふれ出す。


「……っ、これは!? 『聖なる輝きのドレス』に『叡智えいちの杖』!? ゲームの最終決戦用装備カンストセットじゃない!」


 箱の中に鎮座していたのは、虹色の魔力を放つシルクのドレスと、巨大な魔石が埋め込まれた白銀の杖。セレスティーヌは興奮のあまり、杖をつかんで振り回した。


「すごい……! この魔力、間違いないわ。これさえあれば、アウトレットモールだって一撃で浄化できちゃう!」


「お目が高い。……実は、この白銀の輝きこそが帝国の正統なる象徴しょうちょう。ですが今は、エリザベスが『管理費の未払い』という難癖いちゃもんをつけ、不当に占有を主張しているのです」


(……実際には、帝国がナニワ商会から「月額リース」で借り、代金を一度も払わずに持ち逃げしている「盗品」なのだが、レオンハルトは真実を口にしない)


「許せないわ! 聖女の持ち物を奪うなんて、立派な犯罪よ! これは私が正式に『回収』させてもらうわね!」


 セレスティーヌはさっそくドレスに着替え、杖を構えてポーズを決めた。だが、握り締めた杖の裏側。よく見なければ気づかない場所に、銀色の小さなプレートが埋め込まれている。



『資産番号:NW-9901 ナニワ商会・特級貸出備品。 ※勝手に持ち出すのは、ドロボーです。GPSでずっと追いかけます』



 聖女は、最強の装備を手に入れたヒロインだと思い込んでいる。だが実は、世界で最も「高額な延滞金」が発生している盗品を、自ら身にまとった「歩く賠償確定案件」に過ぎなかった。


「……ふふ、よく似合っている。さあ、聖女セレスティーヌ。授けられた光で、世界を『再定義』してあげてください」


 レオンハルトは微笑む。その目は、愛しい女性を見るものではなく、いかに効率よく「爆弾」を投げ込むかを計算する舞台監督だった。

 最後までありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
これってまずいんじゃ......。 聖女様、可哀想。 ドロボー扱いされるなんて
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