表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/35

聖女、ログイン。――なお、王子は『差し押さえ』済み

「――あぁ、間違いないわ。この石造りの街並み、空を舞うワイバーンの群れ……。ここは前世で私がやり込んだ乙女ゲーム『ルミナス・ラヴァーズ』の世界だわ!」


 帝都の噴水広場の中央で、一人の少女がうっとりと空を見上げていた。波打つようなプラチナブロンドの髪に、吸い込まれるような碧眼へきがん。彼女の名前は、セレスティーヌ。帝国が「最後の神頼み」として異世界から召喚した、自称・真の聖女である。


「うふふ、見てなさい。これから私は聖女として覚醒かくせいして、隣国のアルベルト王子と『運命の出会い』を果たすの。そして彼を苦しめる『悪役令嬢エリザベス』を追放して、ハッピーエンドをつかみ取るんだから!」


 彼女の頭の中には、完璧なシナリオが出来上がっていた。シナリオ通りなら、今頃この広場には、王国のアルベルト王子が視察に来ているはずだ。そこで暴走した魔物が現れ、彼を救うために彼女が「光の奇跡」を発動させる。それが全ての始まり……。


「さあ、王子様はどこかしら? ……ん? あそこにある掲示板、何か人だかりができてるわね。きっと王子の来訪を告げる高札だわ!」


 セレスティーヌはドレスのすそひるがえし、自信満々に掲示板へと駆け寄った。だが、そこに貼られていたのは「王子」の文字ではなく、どぎつい金文字の巨大なポスターだった。



【緊急募集:ナニワ商会・帝国支店】 未経験者歓迎! 夢の『スカトロン』清掃員 (スカベンジャー)! ~君の手で、帝都の環境(とウチの利益)を守らないか? ~ ※給与:歩合制(※別途、過去の負債がある場合は全額天引き)



「……は? すかとろん……? え、何これ、偽物? バグ?」


 セレスティーヌが目を白黒させていると、横にいた帝国の市民たちが「あー、また求人か」と溜息をつきながら会話を始めた。


「なあ、知ってるか? アルベルト、あの『地の果て』で、毎日泥にまみれて働かされてるらしいぜ」


「ああ、あの借金王だろ? エリザベス様に逆らったせいで、一生かかっても返せない利息を背負わされたって話だ。情けないよな、元・王子様も」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 セレスティーヌが思わず身を乗り出した。


「アルベルト王子が、借金? 働いてる? 何言ってるの、彼は今頃この国を救うために――」


「お嬢ちゃん、いつの時代の話をしてんだ? 今やこの帝都のパンも、お前さんが着てる服も、全部ナニワ商会の貸し出し品だぞ。王子だろうが、果ては皇帝陛下だろうがな。金がなきゃこの街じゃただの『ゴミ』なんだよ」


 セレスティーヌは、あまりの衝撃にひざから崩れ落ちそうになった。ゲームのシナリオにあるはずの、美しく輝かしい「王子」というキャラクターが、ログイン初日に「汚物にまみれた借金持ち」という設定に上書きされていたのだ。


「……う、嘘よ。そんなの認めない! きっと何かの間違いだわ! 本物の聖女である私が現れたんだから、世界は慈愛の光にあふれるはず!」


 彼女は顔を真っ赤にして立ち上がると、宮殿の方角を指差した。


「見てなさい! 私がその『ナニワ商会』とかいう怪しい店を浄化して、王子様を救い出してみせるんだから!」

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ