【終局】帝国の全資産を譲渡(カタ)に、システムを再起動させてあげますわ
「皇帝誕生祭」の朝。帝都を包んでいたのは歓喜の歌声やなく、絶望の叫びやった。金が動かず、食いもんが届かず、魔石の供給が止まって街の明かりが消えた。機能不全に陥った巨大都市は、飢えた獣のように暴徒化し、宮殿を取り囲んどった。
「エリザベスを出せ! あの女を魔法通信に繋げろ!!」
皇帝が、乱れた髪を振り乱して叫ぶ。ようやく繋がった大型のホログラムに映し出されたんは、ナニワ領の執務室で、優雅に高級タルトを頬張るエリザベスの姿だった。
『あら、皇帝さん。……どないしはったんです? そんな酷い顔して』
「ふざけるな! 貴様のギルドの決済が止まったせいで、我が帝国は破滅の危機だ! 今すぐ、今すぐシステムを元に戻せ! これは命令だ!」
画面越しに飛ばされる皇帝の怒号。けど、ウチは扇子で口元を隠して、クスクスと、そらもう楽しそうに笑うた。
『オホホ。命令? ……困りましたわ。今の帝国さんは、システムの「無料トライアル期間」を過ぎた、ただの“未払い客”に過ぎへんのですけど?』
その時。皇帝の背後にある巨大な窓が、凄まじい風圧でガタガタと鳴り始めた。現れたんは、空を覆い尽くす数百頭のワイバーン。そしてその中心、宮殿を丸ごと飲み込むような巨体を誇る『黒銀の魔竜 (ギルさん)』が、窓越しに黄金の瞳で皇帝を凝視した。
ギルさんは巨大な顎をニヤリと歪め、帝都全体に響き渡る、驚くほど流暢で重厚な声を放った。
「――やかましいぞ。エリザベス様の商談中に、ガタガタと吠えるな」
「な……魔物が、喋った……!? それも、これほどはっきりと……!」
「驚くことか? 言葉を覚えなければ、貴様らから効率的に資産をむしり取ることもできんからな。……さて、皇帝。我が持ってきたのは『無料体験版・地獄ツアー』の契約書だ」
ギルさんは、鋭い爪で窓ガラスを軽く叩き、不敵に笑った。
「今すぐサインするか。それとも、部下たちがこの帝都を更地にして、物理的な『資産整理』を手伝ってやるか……選ばせてやる。もっとも、更地になった後の土地(ジャンク品)をエリザベス様が買い取ってくれる保証はないがな」
エリザベスの論理的な追い込みに、魔竜による「商売人の脅迫」が重なる。皇帝は、眼前に突きつけられた絶望の深さをようやく理解した。
『さあ、皇帝さん。……サインしなはれ。国民にパンを配り、自分だけは生き残る……そのための、唯一の「救い」やで』
皇帝の目から、光が消えた。彼は震える手で、魔法契約書に「全資産提供」の印章を叩きつけた。
その瞬間、帝都の決済端末が一斉にチャイムを鳴らし、止まっていた物流が動き出す。
「……助かった……のか?」
『毎度おおきに。……これで今日から、この大陸の土地も、空気も、国民の命も……全部、ウチからの“借り物”ですわ。……さて、『レンタル料』、たっぷり稼いでもらわな困るで』
魔竜が再び翼を広げ、空高く舞い上がる。大陸最強の帝国は本日をもって、ナニワ領を本店とする巨大商会の「子会社」へと転落したんや。
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