【悲報】帝国、死に体。――「便利」という名の鎖が締まりすぎて、息ができひんようになった件
その日は、最も盛大な「皇帝誕生祭」の前夜やった。帝国中の貴族や商人が集まり、ナニワ領から届いた極上のワインと食材で、浮かれとったその時。
ピタリと、すべてが止まったんや。
「……おい、どういうことだ! ナニワ領からの追加発注が通らないぞ!」
「ギルドの窓口が閉まっている!? この『手形』がただの紙切れになってるぞ、どうにかしろ!」
帝都最大の市場で、悲鳴が上がった。エリザベスが運営する「ナニワ中央決済ギルド」が、何の前触れもなく『システムメンテナンス』という名目で、すべての取引を停止させた。
パニックは一瞬にして、財政を司る中央金庫へと飛び火した。
「陛下! 大変です! 帝国全土の物流が麻痺しております!」
「落ち着け! 決済が止まっただけだろう。現物の金貨で支払えば済む話だ!」
皇帝が怒鳴り散らしたが、財政卿は真っ青な顔でガタガタと震えていた。
「そ、それが……できません! この数ヶ月、我らは『便利だから』と帝国の現物金貨をすべてナニワのギルドに預け、手形一枚でやり取りしておりました。今、帝国の金庫には……ナニワの判子がなきゃ動かせない『帳簿上の数字』しか残っておりません!」
「な……んだと?」
「さらに、今日届くはずだった穀物の馬車も、ナニワ領の『警備保障』が検問を強化したせいで、国境で足止めを食らっております! このままでは、誕生祭どころか、明日の帝都のパンすら底を尽きますぞ!」
帝国は、エリザベスが「今までタダ同然でやってあげてたお世話」を止めただけで、崩壊し始めた。
その頃、ナニワ領の執務室。エリザベスは、静まり返ったソロバンを見つめて、ゆったりと椅子に背を預けた。
「見てみぃ、カシム。帝国さんは今まで、ウチが用意した『舗装された道路』を、ウチが用意した『馬車』で、ウチが用意した『地図』を見ながら走ってただけ。……その全部を『今日はお休みです』言うたら、一歩も歩かれへんのですわ」
「……恐ろしい。攻め込むよりも遥かに確実に、帝国の息の根が止まっていく」
「カシム、これこそが本当の支配や。……『依存』させて、『停止』させる。……さて、帝国さんは今頃、喉から手が出るほど『ナニワの助け』を欲しがってる頃やろね」
ウチは、テラスから大きな首を突っ込んで、甘えるように鼻を鳴らす『黒銀の魔竜 (ギルさん)』の頭を撫でた。
「ギルさん、先手必勝や。……帝都に行って、パニックになっとる皇帝さんに伝えてきなはれ。…………ってな」
魔竜がニヤリと、人間顔負けの邪悪な笑みを浮かべ、巨大な翼を広げた。
「……承知……した。……“毎度……おおきに”……と、耳元で……囁いてやろう」
空高く舞い上がる魔竜の影が、夕暮れのナニワ領を覆う。帝国が気づいた時には、もう遅い。便利さに魂を売ったツケは、国家そのものを丸ごと差し出しても、足りひんくらいの高利貸し (トイチ)になって返ってくるんや。
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