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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第1章:愛は知りまへんけど、対価はキッチリいただきます。 ~追放令嬢の損得勘定~
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婚約破棄するなら、今すぐその服脱いで返して?

 エリザベス――中身はクレープを愛する大阪庶民――は、ゆっくりと首を傾げた。その瞬間、脳の奥で「チャリンッ!」と硬貨が弾けるような音がした。


(……なんや、これ。ウチの頭の中に、見たこともない膨大な帳簿が流れ込んできよった。あ、これエリザベスとしての記憶か。どれどれ……。え、うわ、えっぐ! なにこの公爵家の総資産。……あ! あれ、イケメン殿下の横の姉ちゃんが首から下げてる石、これやん!)


 その視線は王子の顔ではなく、マリアが首元に下げているペンダントに釘付くぎづけになっている。インストールされた記憶によれば、それは紛れもない「資産」だった。


(……間違いない。ウチの公爵家が先祖代々守ってきた『魔導王の涙』やんけ。なんであの姉ちゃんが勝手につけとんねん。しかも無償レンタルか? 契約書はどうなっとんねん!)


 怒りよりも先に、「損得勘定」が脳内のソロバンを猛烈な勢いで弾き始める。


「おい、聞いているのか!」


 アルベルト王子の怒鳴り声。エリザベスは、深いため息を一つ。そして、淑女のカーテシーをかなぐり捨て、ドレスの腰に手を当てて仁王立ちになった。


「……あのな、殿下。さっきから『真実の愛』やの『絆』やの、えらいふわふわした言葉ばっかり並べてはりますけど。……その前に、精算せなあかんこと、山ほどあるんとちゃいます?」


 広間に、場違いな響きの言葉が響き渡った。マリアが「えっ……?」と目を丸くする。


「えっ、ちゃうねん。姉ちゃん、そのペンダント。それ、ウチんところの家宝や。婚約しとるから『貸して』ただけで、婚約破棄するんなら速攻で返してもらうで。あと、そこの王子!」


「な、なんだ!」


「あんたが今着てるその特注の礼服。それ、ウチの親父が『将来の婿殿むこどのに』って、仕立屋に大金積んで作らせたやつや。破棄するんやったら、それ脱いで返してな。今すぐ、ここでや。裸で帰る勇気あるんやったら、婚約破棄でもなんでも受理したるわ」


「き、貴様っ……何を、下品なことを……!」


 アルベルトの顔が、屈辱くつじょくで真っ赤に染まる。だが、エリザベスの勢いは止まらない。脳内に流れ込む「公爵家の支出データ」が、彼女の闘争心にガソリンを注いでいた。彼女にとって、この豪華ごうかな王宮はもはや畏怖いふの対象ではない。「不当な契約破棄を目論む、たちの悪い取引先」に過ぎなかった。


「下品? 踏み倒す方がよっぽど下品やろ。……ほな、マリアさん。あんたも運命とか言う前に、そのドレスのレンタル料、ウチの会計係に振り込んどいてな。あ、利子もキッチリつけさせてもらうで。王家御用達の金利、なめたらあかんで?」

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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