【付加価値】元聖女の涙をトッピングしたら、その辺の「荒野の石ころ」が金貨になった件
王都の広場は、異様な熱気に包まれていた。中央の特設ワゴンで、震える手で「燃焼石」を掲げているのは、かつての救世主――マリアだ。
「さ、さあ……お買い得、ですわ……。この石があれば、冬の寒さも……うぅ、ひっく」
涙目で鼻を啜りながら、無理やり顔を作って微笑むマリア。その瞬間、彼女の無自覚な「聖女の魔力」が、商品の燃焼石に過剰にチャージされた。石がボゥッと神々しい黄金色の光を放ち、周囲の気温が劇的に上昇する。
「な、なんやこの石! 聖女様が触れた瞬間、火力が五倍……いや十倍になったぞ!?」
「しかもこの光……見てるだけで肩こりが治る気がする! 縁起物や!」
本来はただの「家庭用燃料」だったはずの石が、マリアの「泣き落としスマイル」による加護で、超高性能な『聖なる魔石』へと昇華してしまったのだ。
「聖女様! その石、全部くれ!」
「こっちもや! 孫の受験のお守りにするさかい!」
「あ、あの……わたくし、商売女では……きゃっ!? 押さないでくださいまし!」
殺到する民衆。その喧騒を、広場が見渡せるテラスから優雅に眺めているのは、もちろんウチや。
「見てみぃカシム。マリアの『泣き顔』が逆に購買意欲をそそる『限定感』を演出してる。しかもあの魔力付与……。タダの石が、今や金貨一枚でも飛ぶように売れてるわ。計算通りの付加価値アップやね」
「恐れ入りました、主。マリア様の『絶望』すらもエネルギーに変換し、商品力に変えてしまうとは……。もはや、経営の神そのものです」
カシムが感動で涙を流している横で、ウチは爆速でソロバンを弾く。パチリ、と心地よい音が響いた。
「よし。マリアが泣き止まへんうちに、在庫全部出させなはれ。……あ、カシム。あの子に『疲労回復のポーション』一本持っていって。もちろん、後で給料から『福利厚生費』として三倍の値段で差し引いといてな」
広場では、完売の知らせにマリアが腰を抜かして座り込んでいた。それを見て、ウチは扇子で口元を隠し、高らかに笑う。
「オホホホ! 聖女の祈りで世界は救えんかったけど、ウチの帳簿は救われたわ。次は……『聖女印の特製ミルク風呂(入浴剤)』でも開発しましょか」
ナニワの商売人に「利用価値」を見出されたら最後。一滴の涙も無駄にさせへんのが、ウチの流儀や。
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