王宮まるごと棚卸し。~借金は旧経営者の王子に請求しなはれ~
一夜明け、ウチは王宮の執務室で頭を抱えていた。目の前には、埃を被った分厚い帳簿の山。そして、青白い顔で並ぶ文官たちが、ウチを「新しい支配者」として恐る恐る見ている。
「……なぁ、これ冗談やろ? 王家の貯蓄、ゼロを通り越して真っ赤(赤字)やないの」
ウチがソロバンを弾くたび、文官たちの肩がビクッと跳ねる。帝国への借金、無駄な儀式用のドレス代、聖女マリアの「肌の輝きを保つための特注ミルク風呂代」……。出てくるのは、生産性ゼロの支出ばかりだった。
「エリザベス様、これは王家の伝統でございまして……」
「伝統? 伝統で腹が膨れるんか! これだけ火の車で、よくもまぁ豪華な宴会なんか開けたもんやな。これは経営やない、ただの『ごっこ遊び』や!」
ウチはバチンと帳簿を閉じた。
「カシム! 今すぐ王宮の備品を全部 棚卸しや。金の食器、無駄に長いレッドカーペット、王子の寝室にある意味不明な彫像……全部売却(キャッシュ化)して、運転資金に変えなはれ!」
「はっ! さすが主。思い出に固執せず、過去を清算して未来を買い取る。その決断力、まさに救世主! ……しかし主、帝国への莫大な借金はどうされるのですか? 売却益だけでは到底足りませぬが……」
カシムが不安げに尋ねると、ウチはニヤリと口角を上げた。
「カシム、あんた何言うてんの。あんなもん、一銭も返す必要ないわ」
「えっ……? しかし、帝国に知れれば軍が動きますぞ!」
「ええか、よう聞きや。昨日の夜、ウチは王子からこの国を乗っ取った。つまり、旧・王国は事実上の破産、倒産や。帝国が金を貸しとったんは『旧・王国』という会社であって、ウチが新しく立ち上げた『ナニワ商会・王都出張所』とは何の関係もない別法人なんや。貸した相手が潰れたんなら、その借金は『焦げ付き』。商売の世界じゃ常識やで」
ウチは羽ペンを走らせ、帝国宛ての通知書を書き殴った。
「『前経営者の放漫経営により王国は消滅しました。債権の回収は前代表(王子)の個人資産からどうぞ。あ、ちなみに彼、今は一文無しですけどね。知らんけど』……よし、これを速達で帝国に送りつけなはれ」
文官たちが「そんな無茶苦茶な……」という顔で絶句する中、ウチは冷たく言い放った。
「ええか。今日からここは『ナニワ商会・王都出張所』や。定時退社は認めへん。借金がチャラになった分、浮いた予算は全部投資に回すさかい。あんたらもウチの『資産』として、黒字が出るまで馬車馬のように働いてもらうで!」
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ヒロインの計算高(?)な快進撃は、まだまだ続きます。
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