断罪の宴? ちゃうわ、今日は「一括返済」の日や! ――ナニワ商会・王都出張所、本日開店。
【祝・日間70位ランクイン!】
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王国の首都、かつては白亜と謳われた王宮。今やその外壁は寒気でひび割れ、磨き上げられていたはずの廊下には、暖を取るために引き剥がされたタペストリーの残骸が散らばっている。
今宵、そこではアルベルト王子と聖女マリアの婚約を祝う「祝勝と断罪の宴」が開催されていた。だが、そこに華やかさは微塵もない。
広間に集まった貴族たちは、高級なドレスの上に薄汚れた毛布を巻き付け、青白い顔で互いの体温を分け合っていた。ビュッフェのテーブルには、カビの生えたパンと氷の浮いたワインが並ぶのみ。すべては、追放したはずのエリザベスによって、物流と燃料を完全に掌握された結果だった。
「……そ、それでは、エリザベス・エヴァーグリーンの家系取り潰しと、死罪を……」
震える手でグラスを持った王子が、枯れた声で告げようとした――その時だった。
ドゴォォォォォン!!
夜空を切り裂く轟音と共に、広間の巨大なステンドグラスが粉砕された。月を覆い隠すほどの巨大な異形――伝説の『黒銀の魔竜』が、バルコニーを粉砕しながらドスンと着陸したのだ。
「ひっ、魔竜!? なぜ王都に!」
「やかましいわ。祝宴の最中にノーアポで着陸したんは謝るけどな。こっちも商売道具の維持費がかかっとんねん。……さっさと本題に入らせてもらうで」
魔竜の頭から、優雅に(だが作業着のまま)飛び降りたのは、エリザベスだった。その後ろには、威圧感だけで周囲の温度をさらに下げるカシムが、仁王立ちで控えている。
「エ、エリザベス……! 貴様、なぜ生きている……!」
腰を抜かす王子に、エリザベスはアイテムボックスから、天井にまで届くほどの「請求書」束を叩きつけた。
「死んどる暇なんて、あらへんやろ。……はい、これ。現時点での『未払い慰謝料』、および『王家への特別融資の即時返還請求書』や。利子と魔竜の特別航空運賃、あとな……ウチの安眠を邪魔した『精神的苦痛への損害賠償』。これ、一括で払てもらうで。あ、分割は審査落ちやから、今すぐ現金か資産で用意しなはれ」
「ふ、ふざけるな! そんな不当な請求、認められるはずが――」
「認めへんかったら、明日から王宮の暖炉、全部『氷の塊』になるけどええんか?」
エリザベスの冷徹な一言に、広間が凍りついた。
「今、あんたらが震えながら待っとる燃料も小麦も、全部ウチの領地で止めてある。この書類にサイン拒否した瞬間に、王都のライフライン、全部解約や。裸で震えて眠る準備、できとるんやろな?」
ぐうの音も出ない王子。隣で絶望に顔を歪める聖女マリア。その時、飢えと寒さに限界を迎えていた貴族たちが、一斉に叫んだ。
「早くサインを!」
「エリザベス様、どうか火を、食べ物を……!」
アルベルトが震える手で『国家経営権の譲渡契約書』にサインを書き込んだ瞬間、エリザベスはパチンと指を鳴らした。
「まいどありー! カシム、在庫全部ぶちまけ! 今日からここは、『ナニワ商会』王都出張所や!」
号泣するカシムが魔竜の荷台から燃焼石と炊き出しのスープを広間にぶちまける。一瞬で春のような暖かさが広がり、貴族たちがスープへ群がった。エリザベスは、バルコニーに残っていた最高級ケーキを一つ手に取り、口に運ぶ。
「……んー! やっぱ王宮のクリームはええもん使てるわぁ。……カシム、あんたも食べ。これ、今日からウチらの『資産』やからな」
「……おお! さすがエリザベス様! 国を買い取るなどという生ぬるい真似はせず、一気に実効支配されるとは。なんと凛々しいお姿か……!」
夜空に吠える魔竜。ソロバンを弾く令嬢。そして勝手に感動する騎士。追放令嬢エリザベスは、たった数ヶ月で一国を鮮やかに乗っ取った。
全世界を彼女の色で塗り替える快進撃は、まだ始まったばかりである。
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