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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第1章:愛は知りまへんけど、対価はキッチリいただきます。 ~追放令嬢の損得勘定~
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魔竜降臨? ちゃうわ、これは「空飛ぶ配送スタッフ」の面接や!

 その日の夜明け前。ナニワ領の空は、夜よりも深い絶望に塗りつぶされた。伝説の『黒銀の魔竜』。ただ一吠えすれば城壁が崩れ、翼を羽ばたかせれば街が消し飛ぶと言われる災厄が、数百のワイバーンを引き連れて領地に飛来したのだ。


 狙いは、地表に露出した燃焼石からあふれ出す濃厚な魔力の波動。魔物にとってそれは、何物にも代えがたい「極上のエサ」だった。


「……ギギ……。人間、ドケ……。ココハ、我ラノ、領域……」


 魔竜の地響きのような声が荒野に響く。そんな緊急事態の中、領地で唯一の馬車(現在は事務所兼住居)の中で、エリザベスは泥のように眠っていた。


(……あかん、あと五分。今、ウチは王太子に『精神的苦痛への慰謝料』を請求する夢を見とんのや……。邪魔する奴は、金貨一兆枚積まれても許さへんで……)


 耳栓みみせんをガッチリはめ、アイマスクをしたエリは、外の地響きを「心地よいマッサージ」程度にしか感じていなかった。


 一方、馬車の外ではカシムが静かに剣を抜いていた。彼の瞳には、悲壮な決意と、それ以上の「高潔な狂気」が宿っている。


「……なるほど。エリザベス様はあえて眠りにつき、私に無言の命を下されたのだ。『この程度のトカゲ、一人で片付けられなくてどうする』と……。そして、昨日おっしゃっていた『空を飛ぶ宅配便があれば配送料が浮く』というお言葉……。左様さようでございますか、これがその『仕入れ先』なのですね!」


 カシムの全身から、すさまじい黄金のオーラが噴き出した。かつて王都最強とうたわれながら、その実力ゆえに煙たがられ、悪役令嬢エリの監視役にまで落とされた。


「主の眠りは、世界の平和より重い。……魔竜よ、貴様の翼、物流のかなめとして接収させてもらう!」


「……!? ナ、ナンダ、コノ、人間――」


 魔竜が恐怖を感じる間もなかった。カシムが地を蹴った瞬間、空中に一筋の閃光が走る。魔竜が放った絶望のブレスは、カシムの「勘違いという名の絶対防御」によって真っ二つに切り裂かれた。  


 圧倒的な剣技。そして「ここで負けたらエリザベス様の寝起きが最悪になる」というカシム独自のプレッシャーが、魔竜のプライドを粉々に打ち砕く。最強の魔竜は、自分よりもはるかに恐ろしい「何か」に仕えているこの男に、本能的な死を感じて地面に平伏した。



 数時間後。太陽が昇り、耳栓を外したエリが欠伸あくびをしながら馬車から降りてきた。


「……ふわぁ、よう寝た。なんか外、工事でもしてたん? やたら振動してたけど」


 エリが目をこすりながら見上げた先には、翼を震わせて整列するワイバーンの群れと、その中心で縮こまっている巨大な魔竜。そして、彼らに「荷物の積み方」を指導しているカシムの姿があった。


「おはようございます、エリザベス様。仰せの通り、航空便ワイバーン・エクスプレスのスタッフを確保いたしました。この魔竜は、その責任者リーダーとして教育済みです」


「……え、ちょっと待て。カシム、あんた何してんねん。そのデカいトカゲ、絶滅危惧種の魔竜やん。……え、それを『空輸スタッフ』にしたん?」


 エリの脳内のソロバンが、目にも止まらぬ速さで弾け飛ぶ。  


 空路。燃料代ゼロ。魔物による警備付き。しかも、王都のど真ん中に強制着陸して納品できるという「最強の物流インフラ」が、寝ている間に完成していたのだ。


「……あんた、やっぱり天才やわ! これで配送料、全部利益やんけ! 利益率、百パーセント超えるで!」


 エリの称賛(利益への歓喜)を受け、カシムは感極まった。


「……おお! もったいなきお言葉! 全ては、主の慈悲深き計画ねぼうのおかげにございます!」


 こうしてナニワ領に、前代未聞の「魔竜航空」がプレオープンした。王都へ向けた「最終通告(請求書)」を運ぶのは、もうすぐそこまで迫っていた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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