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成り上がりたいのなら勝手にどうぞ。僕は『テリトリー』で使い魔と楽しく過ごす事にします  作者: すみ 小桜


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第1話

 「で、僕に話って何?」


 僕の部屋として使っている錬金部屋(工房)に、僕が所属する『晴天(ファインウェザー)』のギルドマスターのトムが入って来た。

 この頃は、僕を置いてギルドメンバー全員がクエストに向かっている。今日もそのはずだ。


 「この部屋も見納めか」


 僕の質問に答えず、部屋を見まわしている。

 うん? 見納め?


 「見納めって? 拠点を移すの?」

 「いいや。この部屋ごと錬金ギルド協会に売る事になった」

 「え……。なんで!? ここの存在を隠してきたのに?」

 「金になるからさ。これはメンバーの意向だ」

 「メンバーって。彼らはここの事を知らないじゃないか!」


 正確には、この部屋の秘密をだ。

 それを隠す為に、僕にこの部屋を与えたんだよね?

 ごちゃごちゃはしているけど、普通の個室の倍ある部屋の為に、贔屓だと言われ無能のくせにとメンバーから厄介者扱いされる始末。


 冒険者でありながら僕は戦えない。

 だから無能と見られても仕方がないけど。

 でも、僕のスキルはかなり役に立っている。メンバーが知らないだけで。


 「わかってる。だが、君を追い出さないと半数が抜けるといいだした」

 「え……」


 そこまで厄介者として見られていたの?


 「待って。僕が作ったポーションをメンバーは使っているよね? Eポーションと変わらないって」

 「そうだな。それは感謝している。けど……Eポーションではない」

 「それは、Eランクになれなかったから……」

 「あぁ。錬金術師としても無能だと……」


 は? 錬金スキルを取得したのは僕の意思じゃないじゃないか!

 そして、Eランクになれなかったのも僕のせいじゃない!

 それに……。


 「僕は、冒険者だ! クエストに連れて行ってくれないからポーション作りをしているだけじゃないか」

 「しかたないだろう。今や君のテリトリーは必要ないのだから」


 そうかもしれない。

 僕のスキル『テリトリー』は、敵の攻撃を阻むものでなく邪霧(ジャム)を退けるだけ。それに範囲が狭いのでメンバーが多くなれば、彼らが戦いづらいのも確かだ。

 そして、邪霧を退ける魔道具がギルドから貸し出されるようになり、僕がクエストに参加する意味はなくなった。


 「……シューさんとノガさんはなんて」

 「彼らもメンバーと同じ意見だそうだ」

 「そう……」


 二人は、この拠点を購入した時からいるメンバーだ。

 そして、僕のスキルに一番あやかった人たちでもある。その2人も僕に出ていけって言ってるのか。

 悲しいけど、なら仕方ないかな。


 僕は戦闘以外でかなり貢献したと思うのだけど。

 そこは評価してもらえなかったんだ……。


 「確認だけど、拠点は解除する事になるけどいいんだよね?」


 僕の固有スキル『テリトリー』は、邪霧を退けるだけではなくテリトリー内に色んな効果をもたらすものだ。

 その一つに、固定した場所を拠点とする能力があって、その場所(テリトリー)を自動的に修繕する効果があった。


 ギルド『晴天』の拠点の建物は、森の麓のギルドタウンに建っていて、中古で売り出されていたのを二束三文で買った。

 普通に修繕すれば、凄くお金がかかったはずだ。それをトムに頼まれて僕のスキルを使って修繕した。

 だが、メンバーはそれを知らない。


 「あぁ、もう必要ない。なにせ、この部屋を売れば魔道具を格安で買えるからな」

 「え……」


 この部屋を売ったお金や修繕費用が浮いた分を邪霧を退ける魔道具に使うっていうの? しかも1年では、ここまで修繕できないはずだ。

 やっぱりトムは、僕を利用しただけだったんだ。

 成り行きで、錬金スキルを取得する事になったけど、そうなるように仕向けた。

 確かに、Fランク錬金スキルのお金は出してくれたけど、それさえ彼の思惑だったのかも。


 「契約のせいで、みんなに説明できなくてわるかったな」


 そうだ。そのせいで、拠点の秘密は言えない事になっている。しかしその契約は、今日で切れたはずだけど。

 でもメンバーに言う気はないって事だよね。


 「この部屋いくらで売れるって?」

 「魔十(マト)金貨1枚」


 嬉しそうにトムは、手近にある魔道具に触れた。


 魔十金貨1枚だって!? それなら錬金部屋を売って邪霧を退ける魔道具を買っても、約束通りEランクスキルを買うお金が出せるよね?


 「それなら約束通り、魔法陣スキルのお金くれないかな?」

 「無理だな」

 「なんで!?」

 「元々買うならお金はかからないから」

 「………」


 そっか。僕の分も彼が買うならタダだった。だから気軽に出してやるって言ったんだ。だから手元から出したくないと。


 「仕方がないだろう。3年修行しろって言うんだから。まあBランクギルドに籍を置いていたっていう実績があればなんとかなるだろう。ただし、違う街でだけどな。ここに残っても宛てはないだろう」


 この街を出て行けって事か。


 『こんなやつ、こちらか見限ってやりましょう』


 チャルの言葉に僕は静かに頷いた。

 僕の足元に、僕の髪色と同じシルバーグレーの毛色の猫がすりよる。瞳も僕と同じ銀色。

 この子は、僕の使い魔だ。

 チャルの姿は僕にしか見えない。


 ――拠点を解除しますか?


 はい。


 ――拠点を解除しました。


 「お世話になりました。僕は、この街を出ます」

 「街から出て行くのが賢明だ。君の噂はあまりよくないからな」


 トムが、頷きそう言う。

 噂ね。このギルドに入る前からデマが流れていて、後から入って来たメンバーによい印象がなかった。

 そして、戦えない僕はただついて来るだけの魔石泥棒と言われるようになった。

 トムに頼まれて、魔獣が落とす魔石を拾ってるだけだったが、錬金に魔石を使うので全て奪ってると思われていたみたいだ。


 僕は、建物を出て振り返る。

 本当に立派になったよなぁ。あんなにボロボロだったのに。


 『ラシル様。あんな奴の事なんて気にする事ありません。私は戦闘も出来ますので、ラシル様をお守りします!』

 「うん。ありがとう。さあ、まずは旅の準備でもしようか」

 『はい』


 僕は決心した。この子達(使い魔)の為にスキルを使おうと――。

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