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六話

「あの…」

「なんだ?」

「車両がある場所に向かうんじゃないのでしょうか?」

「確かに、それが目標ではあるな」

「では、今すぐにでも!」

「ウタ…俺たちは追われている身だということは覚えているか?」

「はい、それはもちろん!」

「だったら、まずはそこを解決してからじゃないといけない」

「どうしてですか?」


疑問そうにするウタには悪いが、殺し屋として、確認をしておかないといけないところはある。

それは、俺たちを狙う殺し屋がいるのかどうかだ。

もし、すでにいるのであれば、車両に乗った後に出会うことだけはないようにしたい。


車両というのは、小さな金属でできているものだ。

乗ったことなどはないが、乗れる人というのも十人程度だと言われている。

密室であり、狭い場所となると、襲われたときに逃げられなくなるだけじゃなく、もし切り抜けられたとしても中で暴れることになれば、車両を今後使うこともできなくなる可能性があるからだった。


「でも、どうやって確かめるのでしょうか?」

「簡単だ。本拠地に行くのが一番いい」

「本拠地というのは…」

「殺し屋たちが集まる場所だ」

「そんな場所があるんですね」

「ああ…そもそも、無制限に人殺しをしているわけじゃないからな」

「た、確かに考えればそうかもしれませんね。そもそも、そんなものがあることに驚きました」

「あるだろ…どんな世界になったところで、人の欲望というのはなくならない。そのことをお前はわかっているんじゃないのか?」

「はい。そうですね」


ウタは伏し目がちにそう答える。

ウタ自身もわかっているのだろう。

欠落者として、強力な能力を持っているからこそ、それを使ったこともこの反応を見るにあるのだろうと考えてしまう。


「今は、ここからを考えるしかないな」

「そうですね」


顔を上げて頷くウタの腕を引っ張るようにして、俺たちは目的の場所である、依頼が書かれている掲示板の場所へとやってきた。

違和感というのにすぐに気が付く。

ウタも俺の雰囲気で、何かが起こっているということに気付いたのだろう。


「セツ?」

「心配するな。大丈夫だ」


掲示板のある場所は、街はずれであるゴミ捨て場の一画だった。

用がある人でない限り、絶対に来ることがないであろう場所であり、俺たち殺し屋のことはお金さえ払ったら、それを行ってくれる、使い捨てのゴミだということでも表しているのだろう。


「処分するなら、ここのほうが都合がいいってことだろ?でてこいよ」


俺は声を上げる。

声に反応するかのようにして、二人の男が出てくる。


「ははは!ようやくこのときが来たな」

「本当だ。ようやくお前をお金をもらって殺せることができる!」

「ここで殺せば後始末が楽だからな」


自信満々に言う二人というのは、いつも俺に文句を言ってくる二人組だということを思い出す。

名前なんていうものがあるのかは知らないが、こんな三流の殺し屋に負けるわけにはいかないということはわかる。


「どうした?女連れで、何も言えないのか?」

「何か言ったほうがいいか?」

「いや、殺す相手だからな。少しくらいは話くらいは聞いておいてやろうという、俺たちの優しさだということがわからないのか?」

「そうか…だったら、さっさと俺のことを殺せばいいんじゃないのか?」


いつものように煽るように言う俺に、二人は笑う。


「足手まといがいるのに余裕だな」

「だったらどうした?」

「その余裕をなくしてやるよ!」


一人の男がそう言葉にして、ナイフを懐から出して勢いよく突っ込んでくる。

さすがは殺し屋ということもあって、速い。

ただ、そんなことは最初からわかっていた。

弱点も…


「おら!」


勢いのまま、男はナイフを俺にめがけて振ってくる。

確かに速い動きではあるものの、殺し屋と名乗るには、太刀筋と言えばいいのか、ナイフの使い方がまっすぐすぎる。


俺は速いだけのナイフを体の動きを見て避ける。

そして、相手の勢いを活かすようにようにして、握っていた拳を腹に叩き込む。


「ぐふ…」

「殺し屋なのに、まっすぐ突っ込んでくるっていうのは、どうかと思うぞ」

「うるせえよ!」

「あぶねえ」


かなりの痛みはあるはずだが、男は怯むことなくナイフを振ってくるが、ダメージは少し入っているのか、振りは鈍い。

簡単に避ける俺を見て、男は舌打ちをしながら距離をとる。

それを見ながら、もう一人の男が呆れたように言う。


「おいおい、一人で行って返り討ちにあうなよ」

「うるせえな…」

「お前が最初は一人でやりたいって言ったんだからな」

「わかってんだよ、そんなこと…だったら、今のを見ただろ?一人だとやりにくい。援護しろや」

「しょうがねえな」


ナイフを構えた男がそう言葉にして、向かってくる。

もう一人の男は援護をしろと言われていた通り、タイミングを見ながらこちらに向かって何かを投げてくる。

それもウタに向かってだ。

男たちはわかっているのだろう、ウタに攻撃をしかけることによって、俺が対応しなくちゃいけないということを…


だからそれに対してのうのうと俺がやられると思っているのだろうか?

そもそも、どうしてここで戦おうとしたのかを男たちはわかっていない。

地面を俺は思い切り踏みつける。


「何をやっている?」


意味がわからない行動に笑うが、むしろこちらが笑ってしまう。


「いつもと違う行動をしたら、警戒をする。当たり前のことじゃないのか?」

「は?」


何を言っているのだろうか?

相手はそう思っているだろう。

でも、俺はあいつらと同じで殺し屋だ。

そして、失敗をしないとされている殺し屋。

だから、前もって準備を怠らない。

すでに俺には音が聞こえている。


「セ、セツ?」


同じように聞こえたのだろう、ウタが不安そうにそう言ってくる。

向かってくる何かと、俺に向かってくるナイフの男。

確かに同時でこられれば大変だろう。

でも、分断すればどうだ?


ゴゴゴゴゴゴという音が鳴り、水が地面から出てくる。

こちらに向かってきていた何かはその水圧によって勢いをなくす。


「何が起こった?」


慌てて急ブレーキかけたナイフを持った男ではあったが、立ち止まるということは自慢のスピードを完全に殺してしまうことをわかっていない。

急な出来事で戸惑っているナイフの男に俺は詰め寄る。

それも、男よりも速いスピードでだ。


「んだと!」


驚きながらも、男は俺に向かってナイフを向けてくる。

ただ俺はそんな男のナイフを手ではじくと、先ほどと同じ場所に拳を突き付ける。


「ぐふ!」


全く同じ場所に二度も打ち込まれると思っていなかったのだろう、男は悶絶しながら倒れるのだった。

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