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五話

いくつか同じように袋を回収した。

中には先ほどと同じようにお金と非常食が入っている。

非常食の多くが、先ほどウタが美味しくないと言ったクッキーであり、各袋にはそれぞれ違う味を入れていたのだが、ウタにはそのすべてが不評だった。


「し、舌が気持ち悪いです」

「普通に食べられるものだけどな」

「はあ…セツがまともなものを口にしていないことだけはわかりました」


ウタがため息をつきながらもそんなことを言いながらも毎回のようにチャレンジするのはさすがだった。

何か毎回チャレンジしないといけないという自分ルールのようなものがあるためだろうということは、なんとなくわかるのだが、不味いのであれば無理をして食べなくてもいい気がするのだが、そうはならないらしい。


「栄養があるものはあまり美味しくないと誰かに聞いたな」

「美味しくないといっても、限度があると思うのですが…」


これまで普通に食べていたものを否定されるというのはなかなか新鮮なことで、驚くが、そもそもそういうことを言われる相手が周りにいなかったからだろう。


「じゃあ、いくつか集まったところで、今後についてを相談しておきたいんだが、いいか?」

「はい。大丈夫です」

「なら、まずは次に向かう都市についてだな」

「それなんですが…」

「なんだ?」

「都市の外は安心なのでしょうか?」

「どういう意味だ?」

「その…」


ウタは言いにくそうにする。

その理由というのはわかっている。


よくある本に書かれている物語の内容だった。

この世界は終わりに向かっているというのは、誰でも知っている話ではあるが、そこに書かれている内容というのは、世界は五つの都市があるというものだ。

大きな建物が多く、タワーと呼ばれるシンボルがあるここセントラル。

多くの作物がなり、神木と呼ばれる大きな木があるウエスト。

魚などの海鮮と呼ばれるものが多くあり、神湖と呼ばれる大きな湖があるイースト。

鉱石と呼ばれるものが多く取れ、神山と呼ばれる大きな山があるノース。

油という液体が取れ、神殿と呼ばれる大きな何かがあるサウス。


これが今ある世界の都市だと言われているが、本当なのかどうかはわからない。

だって、俺は他の都市に行ったことすらないのだからだ。

理由は、ウタが言っていることである、都市の外が危険だと言われているからだ。


「実際にはわからないな」

「セツは外に行ったことがないのですか?」

「それに関しては、あるだ」

「それでは、外はどうなんでしょうか、外は…」

「わからない。俺も外に出たとっていも、ほんの少しだけだからな」

「そうなんですか…」

「ああ…」


俺がそう答えたことには理由があった。

都市から出たというのは本当のことだが、少し外周を見て回ったというのが実際のところだ。

それにはちゃんとした理由がある。


俺は結局依頼の殺しをやるために、この都市にいる。

だからこそ、殺しを行うために必要であれば外に出るだけで、これまでの目的ではほかの都市に行くことではなかったため、必要なときしか外に出たことがなかった。

まあ、そんな少ししか出ていない俺でも感じた都市の外というのは、あれだった。


「暗闇だ」

「どういうことでしょうか?」

「俺が少しだけ知っている都市の外についてのことだ」

「それが暗闇なのでしょうか?」

「ああ…都市は明るく外は暗い。本当に俺の目にはそう映った」

「そうなんですね」


表現しようとしても、難しいということに、ウタも気づいてくれたのだろう。

言いたいことに納得してくれたからこそだろう。


「まずは外に出ることを考えないとな」

「えーっと、どこからか出られるのではないのでしょうか?そもそもセツはどうやって外に出たのでしょうか?」

「そんな簡単なことじゃない。外に出るためにあるのは門だけだ。そこを突破しないと難しい」

「では、セツはどうやって?」

「俺は、壁をよじ登った。ロープを使ってな」

「そ、そんなことが、できるんですね」

「できるな。条件がちゃんとそろえばな」

「どういうことでしょうか?」

「簡単だ。こんなに荷物をもっている状態では、高さがある壁を上るのは難しいってことだ」

「そういうことですか…」

「ああ、だけど一つだけ手はある」

「それは、なんでしょうか?」

「車両だ」

「車両ですか?それは、かなりお金が必要になるんじゃないですか?」

「ああ、だからお金を集めて回っていたってことだ」


ようやくお金を使うときになったということだ。

本当であれば、一人で使う予定ではあった。

世界が本当に終わるタイミングで、どこかに行くために…

でも、それが少し早まっただけと考えるのが今だろう。


「お金を使うときは今しかないからな」

「私が一緒にしてもいいのでしょうか?」

「ああ、ちゃんと働いてもらうからな、大丈夫だ」

「それは、どういうことでしょうか?」

「大丈夫だ、そのときになればわかる」


少し笑いながら、そう口にすると、ウタは不安そうに言葉にする。


「わ、私は何をさせられるのでしょうか?」


俺はそれに答えることもなく、次の場所に行くのだった。

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