三十四話
邪魔をしているのは、神木騎士団と呼ばれる団体だという。
それが、神の御使い様としてヨミを使わせ、時がくれば神に差し出す存在とすればいいと考えているというような団体だということだ。
「なんですか、それはあり得ません」
「そうだな。ウタの状況とほとんど同じだから、怒る気持ちもわかるな」
「違います。私は自分の意志で悪いことをしてきましたんですよ、セツ。でも、ヨミは違うでしょ?私のように何か悪いことをしてきた人じゃありません」
「確かにそうかもな」
「ちょっと、セツ!」
「なんだ?」
「そこは違いますというとこでしょう?」
「なんでだ?自分で言ってただろう?私はよくないことをしたってな」
「そうなんでしょうけど…」
ちゃんとしたことを言ったというのに、ウタはどこか不貞腐れたような感じになる。
言葉選びを間違えたとでもいうのだろうか?
ヨミとミミの二人が俺のことをどこか残念な目で見ているのが本当だということはわかるが、それだけだ。
この腕を解放すれば、どんなことを思っているのかもわかるだろうが、こんなことのために解放するのは勿体ない。
我慢をしながらも、俺たちはその時がくるのを待っていた。
「ここで待ってれば本当に来るの?」
「俺に聞くなよ」
「だって、ここにいる中で、一番話しかけやすいんだもん」
ミミはそう言葉にする。
確かに、ヨミとウタは、見た目から欠落者とわかるので、ミミが言う御使い様と思うのは仕方ないことだ。
それによって、気にしてしまうというのは理解できるが…
「ちゃんと仕事はしてくれ」
「わかってるって、うちが重要な役割をしてることくらい」
そう、今回の一番といっていい重要な役割というのは、ミミが担っているからだ。
片足がないながらも、ない足のほうに木の足をつけることかなり速く走れるというのも逃げ足として重要な点ではあるが、一番はそこではない。
欠落者としての能力だ。
ミミは、名前の通り、耳がいい。
音がよりしっかりと大きく聞こえるそれは、何かが動くとわかりやすいものだ。
特に今回のようなことをしていればだ。
「うちが何も聞こえなかったら、どうするの?」
「そうなったら、俺たちが全員窮地からスタートってだけだ」
「かなり責任重要じゃない」
「仕方ないだろ?俺たちの能力を考えたらな…」
「そうなんだけど!」
今回の俺たちが行う作戦は実は簡単なものだ。
「来た!」
「よし、やるぞ」
俺たちはすぐに行動を開始する。
生贄に使う場所というのは、ヨミに聞いて知っていた。
場所は、神木の一番頂上だ。
欠落者のみが、ここの入口を見つけられると言われているように、ここに来るためには最低限案内人というものが必要だ。
雨を降らせるという失われた機械。
そして、神木の頂上に人を移動させることができる機械。
そんなものを見つけることができるのは、欠落者だけというのが気になるところではあるが、今は考えている暇ではなかった。
俺たちは上がってきた人たちというのを見る。
人数は四人、一人が欠落者で、あとの三人はどこかで見たものを胸につけている。
「おいおい、本当にここにいるのか?」
「そうだと思うんですが…」
「思うじゃねえんだよ」
「す、すみません」
「いいから、さっさと探せや!」
欠落者の男が命令されて、頭を下げながらも、必死に探している姿は、ヨミたちを裏切ったからこんな扱いをされているのだろう。
しょうがないのだろうが、少し可哀そうに思えてくるのは仕方ないが、やるしかない。
ますは手始めに、雨を降らせるのだった。




