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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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三十二話

少し回復したウタを椅子に座らせると、俺たちはこれからについての話をする。


「それでは、ここからどうするのかというのを、考えないといけませんね」

「いや、それについては決まっている」

「セツ、そうなのですか?」

「まあ、ヨミは嫌がるかもしれないがな」

「どう意味ですか?」

「わかってるだろ?」


ヨミにそう聞くと、わざとらしく目をそらされる。

だが、俺がこう言うのにも理由がちゃんとあった。

あの男と戦っていたときに、能力を解放して周りの声が聞こえていた。

それは、ヨミも例外ではなかった。

ウタとミミからの言葉というのは、言っていることと思っていることがほとんど同じなので気になるということもなかったのだが、ヨミに関しては考えていることが違ったりしていた。

戦っている相手を倒せと言っていたミミと、死なないでと願っていたウタ。

そんな中でヨミが考えていたことというのが、予測を変えてくれというものだった。

自分が頭で予測したものが、全て実際に起こることとを考えれば、確かにおかしくなりそうだというものだが…

俺はわかったからこそ、ヨミに言いたかった。


「ヨミ!」

「何ですか?」

「ヨミはそれでいいのか?」

「何が言いたいのでしょうか?」

「だから、ヨミが見た予測というものを変えるのが、自分じゃなくていいのかってことだ」

「それを言うってことは、わたくしが変えないといけないということですか?」

「違うのか?」

「違います。そもそも、それを言うのであれば、セツ…あなただってその能力を使えば、もっと!」

「もっとなんだ?」

「世界を変えられていたはずです!」

「ああ、だから変えたんだよ。今さっきな」

「何を言って…」

「ヨミ、お前は能力を使ったところで、全く変える気持ちすらなかっただろ?周りに変えようとしている人がいるのにな」

「何を言っているんですか?わたくしに、わたくしに死ねと言ったのは、周りの人間たちなんですよ。それを今更変えろっていうのですか?」

「変えろ?それは俺は言う気はない」

「はあ?意味がわかりません、セツ…あなたは何が言いたいのですか!」

「だったら、言ってやるよ」


俺はチラッとウタのことを見る。

当たり前だが、見えているわけではないので俺の視線に気づくこともない。

だから、俺たちが言いあっているのを止めていいものなのかオロオロとしている。

動きから全て正直すぎるな…


「俺は、変えたよ。変える気はなかったがな」

「どういうことですか?」

「ヨミの予測にいた俺はどうだった?こんなことを聞いていたか?」

「いえ、あなたは一人のときもウタがいたときも冷たくてあまり喋ることはありませんでした。全て殺し屋として、人を殺して解決することを考えていました…」

「確かに、解決しなければ殺しをしているな」

「?わたくしの考えがおかしい?」

「どうなんだろうな?俺はお金のためであれば、確かに殺しは行うが、それ以外であればしないぞ」

「そんなわけは…わたくしが出会ったセツは全て殺しで解決できるのであれば、それをすると思ってました」

「そこから、違うな」

「なるほど、そうなるとこれは…」

「ヨミが見たものを変えられるってことだ」

「わたくしが死ぬことを望まれているのに?」

「お前は死にたくないだろ?」

「わたくしが死ねば解決するのに?」

「お前一人が死んでたったの十年生き延びるのと、しがらみを全部解決して、お前も全員も同じく生き延びるほうがいいと思わないのか?」

「ですが…ですが…」

「失敗が怖いのか?」

「当たり前です。もし失敗すれば、全員が死ぬんですよ」

「いや、死ねばいいだろ?」

「え?」

「だって、考えてもみろ、お前を殺すんだぞ?次は誰が犠牲になる?ウタか?それともお前と同じく欠落者として強い力に目覚めた欠落者か?」

「それはでも…」

「死んだところで、解決しないってことを、ヨミ…お前もわかっているんだろ?」


俺がそう言葉にしたときに、ヨミはハッとしたような表情をする。

ヨミが見た予測では、ただヨミが生贄になってしまうというだけだ。

本当にそれだけしか聞いていない。

だったら、ヨミが犠牲になったら、それで終わりなのか?

違うだろう?

周りにいる人たちは、自分と違う欠落者を御使い様などと祀り上げて生贄とする。

そんなこと許すわけがない…


「人は生贄になって死んだところでヨミが救った人など、誰もお前に本当の感謝なんかしないぞ?」

「それは、わからないじゃないですか?」

「だったら、死ぬ前に聞いてみるか?」

「何を…」

「すまない、ヨミと二人になる」

「大丈夫ですよ」


ウタに確認をとった俺はヨミを抱えると外に出る。

何をするのだろうかと考えているのだろう。

俺は両腕を上げる。


「ミッシングアーム、解放」

「セツ?」


外というのは、声というものがよく響く。

頭の中に声が響いてくる。

「生贄はいつ?」「気持ち悪い見た目のやつが死んでせいせいする」「なんで偉そうなのかわからない」「次は誰が生贄に?」「あー、役目がこないように」


「封印…はあはあ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。それよりもわかっただろ?今、言葉にしたのが、このウエストでヨミの評価だ」

「そんなこと、わかっていました」

「だったら、やることは決まってるだろ?」

「でも…」

「言われっぱなしで、この体の思い通りになっていいのか?」


ヨミはその言葉で、体をびくっと跳ねさせた。

そうなのだ。

俺たちは最初から普通とは違う、欠落者として生まれた。

だというのに、運命だからとか、他とは違うからと、本来普通の人が受けられるはずだったものを諦めるということは全く違うのだからだ。


「わたくしが変えられると思いますか?」

「一人じゃ無理だろうな」


俺はヨミの言葉にそう返す。


「み…ヨミ様~」


見計らったようなタイミングで、ミミがヨミに抱き着く。


「確かに、一人じゃ厳しいかもしれないわね」

「だったら、わかるだろ?」


俺の言葉にヨミは頷く。


「ミミ、ウタ、セツ。わたくしの予測を…わたくしが死ぬ未来を変えるために力を貸してください」


ヨミはそう言葉にするのだった。

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