三十一話
「ウタは俺が同じ欠落者ということはわかっただろ?」
「はい。それはわかったのですが…」
「欠落者として、失った体の一部は両腕だった。その両腕についているのが、ミッシングアーム。ある科学者が作った欠落者を救済するための金属だ」
「救済?」
「そうだ。ウタは、能力をある程度制御できているな」
「はい。そうしなければ、私の言葉が全て意味のあることになってしまいますから」
「それが普通だっていうことは、俺もこれまで出会った同じやつらで知ることができた」
「セツは…」
「ああ…能力を制御できない」
俺は、この腕がないと能力を制御できない。
能力を抑えている理由は、聞こえすぎてしまうからだ。
周りの人が考えていること、思っていることのすべてが、際限なく聞こえる。
それは、他の人が思っている以上にキツイものであり、普通の人であれば、聞こえる声と、思いの強さに心が壊されるだろうと、この腕をくれた人が言っていた。
むしろ、ここまで耐えたのがあり得ないことだと…
それから、その人に会うことはなかったが、定期的に成長とともに新しい腕というものが、俺がいる場所に届けられることになる。
まるで、俺の全てをわかっているかのようにだ。
セントラルにいない以上は、今後替えが俺の元に届くのかという心配は多少あった。
「ウタ」
「なんでしょうか?」
「俺の能力は、戦いのときに言った通りだ。人が考えている全てのことがわかる」
「それは、わかりました。セツは何か言いたいことがあるのでしょうか?」
「あるな。もし俺が周囲の声によって押しつぶされるようなことがあれば、能力を使ってくれ」
「それは決まり事でしょうか?」
「そうだ」
「でしたら、私のことも言っておきますね」
「なんだ?」
「セツの能力は封印されていても、発動していますよね」
「わかっていたのか?」
「確信をもてたのは、能力を聞いてからにはなりますが、どうして私を殺さなかったのかについては、それでわかりました」
「ウタの感じた通り、確かに俺には言ったことが真実か噓なのかが簡単にわかる」
「そうですか…では、私が心の中と言っていることが間違ったら、お願いしますね」
「それは、わかった…」
ウタの言いたいことというのはなんとなく理解できた。
お互いにお互いが求めることは同じだったということだ。
そして、この話は終わったとばかりにウタが明るいトーンで会話を変える。
「では、セツ。その腕についてちゃんと教えてください」
「わかってる。この腕は能力を制御できるって言ったな」
「はい。それは聞きました」
「それだけじゃないっていうのも、なんとなく戦いを見てわかってくれたと思うが、これには違う力がある。ボディズを破壊する力がある」
「すみません。セツ、そのボディズというものは結局どういうものなんでしょうか?」
「そうだな、あれについては、この腕の模倣品、もしくは出来損ないって呼ばれている」
「不良品なのでしょうか?」
ウタは不思議そうに俺に聞く。
だが、俺にも詳しい説明がわかるのかと言われれば正直なところわからない。
一応のところは、この腕を作った資料を基に作った模造品のようなものだということくらいだ。
「俺にもわからない。ただ、この腕が本物といえばいいのか、オリジナルとは言われているな」
「本物ですか?」
「そうだな。ボディズはこれの模倣品という話だ」
「だから、本物だと壊せるのでしょうか?」
「どうなんだろうな…原理も俺が作ったわけではないからわからない。一つわかるといえば、このミッシングアームというものは、いくつかあるというくらいだな」
「どういうことですか?」
「欠落者として、強い能力を持ったいくらかの人たちが、その能力を抑える…制御させるために、この特殊な金属を使うわけだからな」
「セツと同じような人がまだまだいるわけですか?」
「そう聞いたな」
「そもそも、セツにその腕をくれた人というのはどういう人なのでしょうか?」
「それについては、俺もよくわかってないな」
「どういうことでしょうか?」
「記憶が曖昧なんだよな…」
俺もこの腕について、使い方はわかるが、どこの誰からもらったのかと聞かれると、わからなかったからだ。
まるで、記憶から抜けているような…
「セツ、大丈夫ですか?」
「ああ、すまない」
「いえ、気にしていません。腕とセツのことについては、なんとなくわかりましたから…」
「ならいいんだが、よくわからない感じですまない」
「いいえ、仕方ありません。私だって、やってきたこと全てを覚えているわけではありませんから…」
「そうか…」
そして、俺たちは無言になる。
だが、そのタイミングでヨミたちが帰ってくる。
ゆっくりと俺たちに近づいてくると、俺にだけ聞こえる声で言う。
「ゆっくり話せました?」
寝ないとこれからのことがわからないというのは本当なのだろうか?
俺はそう考えながらも、頷いたのだった。




