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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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三十話

「ということは、何をすればいいのか、わからないってことか?」

「はい、その通りです」


ヨミがそう言葉にするのには理由があるというのは先ほど聞いた内容だった。

すでに、ヨミの欠落者としての能力というものを聞いている。

ヨミがもつ能力というのは、全ての出会いから未来をかなりの確率で予測できるというもので、予測は二つ以上ある場合がほとんどらしいのだが、その予測のどれかには必ずなっていたというのだ。

でも今回に限っては違っていたために、ここからの予測を立てるのは難しいということだった。


「再度予測を立てるのは確かに可能ではあります。ですがそれをするのであれば、最低でも半日は横にならないといけません」

「なるほどな」


今すぐにすることはできないということだ。

そもそもだ。


「このままでいいのか?」

「動いても動かなくても、難しい状況ですね」

「わかっているなら、あまり喋らないでくれ」

「そんなことを言わないでください。そもそも、倒してください」

「この人数は無理だ」


現在俺たちは囲まれていた。

というのもだ、あの場所から逃げたところで、俺以外に速く移動できるものたちはいない。

だが、簡単には捕まらないためにも、一緒にいたミミという女性が持っている、遠くまで聞こえる能力によって危険は避けていたのだが、それも完璧というわけにはいかない。

それに、このウエストという都市では、ヨミが生贄にされることについては正当化されているのだ。


「だからって、これだけの人数でくるっていうのは、ダメだろ…」

「本当ですね」

「うちがなんとかするしか…」


ミミがそう言葉にしたときだった。

横にいたウタが前に出る。


「セツ、いいですか?」

「これだけの人数だぞ?いけるのか?」

「はい、私に任せてください」


ウタはそう宣言する。

周りで俺たちを囲んでいる男女は、確かに俺たちが欠落者ということもあり、その能力に警戒はしているが、どんな能力であるかわからない以上は防ぎようがない。

特にウタの攻撃については…

ウタが前に出ることで、少し警戒はされるがそれだけだった。

ウタはそのまま胸のあたりに手をあてると叫ぶ。


「”止まれ!”」


全員に響き渡るように発せられた言葉によって、俺たち以外の人たちが固まるのがわかるが、その瞬間ウタはゆっくりと倒れるのがわかる。

力の使い過ぎということだろう。


「ヨミ…」

「わかっています。わたくしの指示通りに動いてください」


俺はヨミとウタを小脇に抱えるようにしてもつと、ヨミの指示通りに神木のある場所に戻ってきていた。


「ここは」

「はい。最初にセツとウタがたどり着いた、神木にある隠れ家のようなところです」

「隠れ家?」

「はい。セツはここがどういった場所かわかっていませんよね」

「ああ、ただの神木がえぐれて入れる場所じゃないのか?」

「いえ、ここはそもそも、わたくしたちと同じ能力を持った人しかわからない場所です」

「そうなのか?」

「はい。彼女は知らなかったと思いますが、だからこそわたくしたちと同じだと確信できるのです」

「それは、わかった。それで、ここに連れてきた理由はなんだ?」


そう、確かに見つかりにくいという点ではいいかもしれないが、ここに来た理由がわからなかった。

バレていないはずがないからだ。

それでも、ヨミがここに向かえと言ったことには理由があるような気がしたのだ。


「わかりますよね」

「まあな、今は封印しているとはいえ、言っていることが嘘か本当か、何かを隠しているのかくらいはわかるからな」

「そうですか…本当に強力な能力なのですね」

「そうだな」

「では、時間も惜しいので、すぐにお話をします。わたくしが見ていた予想の未来の話というのから外れているということは聞いたと思います」

「聞いたな」

「だからこそ、ここに来ました」

「どういうことだ?」


意味がよく理解できていなかった。

予想が変わったのであれば、そもそもこのウエストから逃げるというのが一番理想ではないのかと考えてしまう。

だが、ヨミの考えは違っていた。


「ここに来るというのは、わたくしが見ていたすべての予想にはなっていまいした」

「じゃあ、結局今は予想通りになったということか?」

「いいえ、そうではありません。ここに来たのは、全てわたくしが生贄になると決まったとき…簡単にいえば捕まったときということです」

「そういうことかよ…」


ヨミがそこまで言って理解した。

ヨミが言いたいことは、そもそもが自分が見た予想というものが、捕まってここに連れてこられるというのであれば、先にここにいてやろうというものだからだ。

考えとしては理解できるが、確かに重要なことだ。

それに、先に来られたということは、小細工をする時間があるということだ。


「どうせだ。最後まで悪足搔きをすればいい」

「はい。そうさせてもらいます。わたくしの本当に考えているものが聞こえたセツにね!」

「え?どういうことですか、御使い様!」


その言葉に黙っていたミミが反応するが、ヨミは何も話すことはないというか、恥ずかしくなったのかはわからないが、逃げていく。

わかっていた。

俺が欠落者としての能力を発動したとき、ヨミが考えていたことというのは、決して自分自身が生贄になりたくないというものではなかった。

ただ一つ、それは……だった。

聞いた以上は、それをやらないといけない。

だから、本当に能力を使うのは嫌だった。

全てがわかってしまうから、そしてその思いを受け止めてしまいたくなるからだ。

俺はため息をついたときだった。


「ゔ…」

「大丈夫か?」


そんな声とともに目を開けたウタに声をかける。

ウタは、頭を少し押さえながらも笑顔を作った。


「は、はい…頭痛がかなりしますが…」

「無理はするなよ」

「はい、では…体調が少し戻るまで、セツの体についているものを教えてくれませんか?」

「そうだな。簡単な説明でもいいか?」

「はい」


俺はゆっくりとこれに両腕について話をするのだった。


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