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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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二十九話

優しさに包まれている気がする。

なんだろうか?

初めて感じたような感覚だった。


「これは…」


倒れたセツを膝枕のように座らせたウタは自分の能力を発動させていた。

だが、それはすべてわかっているはずのヨミですら予想外のものだった。


通常欠落者としての能力というものは一つだ。

二つ以上の欠落ですら強力な能力が手に入ることはあっても、それ以上はあり得ないはずだった。

だというのに目の前で起こっていることはそんなあり得ないことだった。

ウタがセツに向けて歌っている。

彼女の能力というのは声であるというのは知っていたが、それは意識があって聞こえている相手にのみ関係がある能力だと思っていた。

それなのに、歌によって周囲が温かさに包まれている。


「御使い様、これは…」

「ミミ、そう言うのはやめてください。わたくしにはヨミという名前がありますから…それに、これはわたくしも全く知らなかった能力です」

「御使い様がですか?」

「わたくしだって知らないこともあります」


そもそもヨミが見ていたいくつもの未来のどれとも違うものだったからだ。

ヨミが死ぬという未来が変わらないとしても、この時点で多くが違うということに驚いていたときだった。


「ぅう…く…」


セツの意識が戻ろうとしているのだろうか?

セツが少し呻くのが聞こえる。

そして、目を開けたと同時に歌が止む。


「くそ、いてえ…」


体に痛みが走るのがわかる。

だが、勝ったのは俺だということは覚えている。


「なんとかなったな」

「本当に、よかったです」

「痛いんだよ」

「仕方ないじゃないですか。せっかく合流したのに無茶をするから!」

「さっきのは仕方なかっただろ?」

「そもそも、この腕はなんですか!」

「わかるだろ?ウタと同じで欠落者ってだけだ」

「そうだったんですね」

「ああ、だからちょっと待ってくれ」


俺は腕の解放を封印するためにいじる。

金属がむき出しになってしまったのは仕方ないとはいえ、ここにいる全員が今思っていることが流れ込んでくることはかなりキツイかった。

聞こえなくてもいいものが無意識のうちに聞こえるというのは、全てにおいてよくないことだと思っているからだ。

ガシャガシャと音がなり、機械的な腕から普通の腕に戻る。

ミミが驚いているが、これについては、俺自身もどうなってそうなっているのか原理はわからない。

俺は無意識に聞こえていた声というのがなくなってから言う。


「これからどうするんだ?」

「どうするのがいいと思いますか?」

「どういう意味だ?」

「正直に言います。わたくしの予想と今現在は全く違っていました」

「じゃあ、その予想というものを聞かせてくれ」

「はい、それでは少し移動をしながらにしませんか?」

「どうしてだ?」

「気づきませんか?」


ヨミは上を指さす。

ここは滝の後ろにある空洞であり、狭い空間だ。

そんな中で俺が爆弾を使ったせいもあり、上がボロボロになっていた。

時間がたてば剥がれ落ちるような見た目をしていることを考えてもここから離れる必要があるのがわかる。


「行くか」


俺はウタの手を握ると立ち上がると、外に出るのだった。



「あーあ、結局うまくいかないじゃん、せっかく力を与えたのにさ」

「仕方ないだろう?試作品なんだ」

「魔女の兵器には敵わないってか?」

「やめろ、縁起でもないことを言うな」


足音は一つだというのに、四つの声がした。

そして、足音がしていた男が、ボディズに手をかけたところで、それは粉々に崩れ散った。


「やっぱり、壊されると回収は無理みたい」

「試作品なんだ、頼む」

「でも、もう粉々なんだもん、仕方ないよ」

「だったら、写真だけでも見せてくれ」

「わかったよ、それなら映像を切り替えるね」


男は何かを操作する。

それによってどんな変化が起きたのかはわからないが、男は笑う。


「ふひひひひ、ようやく楽しくなってきたね」

「確かにな」

「やめろ、そういうのをフラグっていうんだよ」


見ることに夢中になっている一人を除いて三人の声が暗闇に響き渡るのだった。

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