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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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二十二話

「いい?」

「なんだ?」

「わたくしは考えましたよ、言いたいこと」

「そうかよ。今更聞く気はないけどな」

「ど、どうしてですか?」

「わからないのか?」


俺はそう言うが、ヨミは全くわからないようで、言葉に詰まる。

そもそもだ。

人は死ぬ前に正直になるのだというのが、セツの持論だった。

だから、死ぬと決めたときに出る言葉というのは、その人の本当の言葉だと考えている。


それが何もないやつを信用するというのは無理だな。

毎度のことながらそう考える。


「わからないのなら、大丈夫だ」


俺はヨミにそう言葉にする。

ヨミはどこか悔しそうにしながらも、まるでいたずらをする子供のようにボタンを押した。


「おい、何を押したんだ?」

「ふん、意地悪をする人には教えません」

「なんだと…」

「それに、そこまで偉そうにするのであれば、わたくしに力を示してください」

「なんだと…」


何を言ってるんだと、思いながらもすぐに理由を理解する。

外が騒がしくなっているからだ。

これが意味することというのは、決まっている。

俺だって、長く殺し屋というものを生業(なりわい)にしていたわけではない。

だからこそ、何かが起こるという前に、何が起こるのかという大体のことはわかるというものだ。


「警報装置みたいなものってことでいいか?」

「さすがはわかりますか?」

「まあ、これくらいはな。それよりも、言葉使いがさっきからいろいろとおかしくなっているぞ」

「そ、そんなことないです!さっさとわたくしを守るのであれば、倒すしかありませんよ」

「ま、そうだな」


俺は、警戒しならがらも、戦いに備える。

といっても、そもそも戦いになるのかはわからないが…

武器がある場所を確認するためにも、体を触る。

かなり雑な方法ではあるが、どこに何があるのかを把握するには一番楽な方法でもあった。


そんなタイミングで、ガシャっと音が鳴る。

ヨミが呼び寄せた人が入ってきたということだろう。

入ってきた場所というのは、俺たちが入ってきた場所とは違うところだ。

俺は足音を聞きながら、タイミングを見計らってナイフを膝のあたりの高さに向かって投げる。


「あぶっ」

「どうした?」

「ナイフが飛んできて…」

「何!それは、本当か!予想通り、侵入者がいるってことか!」

「そうみたいです」

「ならば、陣形を整えていくぞ」

「はい。並べー!」

『は!』


何人いるのかはわからないが、男女の声が聞こえる。

ただ、こういうことを言っていいのかわからないが、俺のほうに声が聞こえているというのを考えていないのだろうか?

陣形を組むなどということを大声で話すなどということは、こちらに対策をしてくれと言っているようなものだからだ。


「いくぞ!」

『は!』


声が響いたと思うと、多くの人たちがこちらに向かってくるというのが気配でわかる。

だが、忘れてはいないだろうか?

ここが普通の場所ではないということにだ。

俺たちが入ってきた場所というのも、一人ずつでしか入れないくらいには狭い空間だった。

もし横並びに入ってこられたとしても、二人だ。

そして、そもそも俺は無意味に武器を無駄にするような使い方はしない。


足音を聞きながらも、俺はタイミングを合わせる。

ここだ!

そして、俺は勢いよく手を上にあげた。

傍から見れば、何をしているのかわからない行為ではあったが、すぐに異変というのは起こる。


「ぐあ」

「どうし、ぐは」

「警戒、警戒」


向かってこようとしたタイミングで前が倒れる。

そうなってしまえば、後ろから前に行こうとしたやつらに押されるようにして前は身動きがとれなくなる。

すぐに対応できないのはわかっている。


「目を閉じてろ」

「え?」


戸惑うヨミを無視するようにして、俺はいつものように玉を集団に向けて投げる。

音とともに、玉が割れて中身が出る。

固まったものたちに対して、シミソウが猛威を振るう。


「うわあああ」

「しみ、しみる!」

「ぎゃあああああ」

「阿鼻叫喚だな」

「あなた、かなりひどいことをするんだね」

「何を言ってるんだ?こいつらを呼び寄せたのは、お前だろ?こうなることはわかっていたはずだがな」

「そうなんだけど…」


ヨミが言いたいことはそうではなかった。

だって、普通だったら、一人ずつ相手をして倒すものだと思うだろう。

それを裏切られただけではなく、向かってきた相手が全員目を押さえて悶絶しているのだからだ。

俺からすれば、見慣れたような光景ではあったが…


「じゃあ、処理するぞ」


俺は、悶絶して何もできないで暴れまわる男女たちを気絶させていくのだった。

その姿を見たヨミは俺に対して言う。


「殺さないんですね」

「そうだな。殺すと面倒くさいからな。処理も含めてな…捕まえるだけなら、あとは勝手に逃げることもできるからな」

「そうかもしれませんが、逃げてもいいのでしょうか?」

「いいだろ?逃げたところで、そこからわざわざ向かってくるやつもいないだろ?」

「どうしてですか?」

「ま、トラウマってやつを植え付ければいいんだよ」

「何をする気ですか?」


俺はそう聞かれて、ニヤッと笑うと、男女たちを縛り上げるのだった。


「よかったのでしょうか?」

「お前が呼んだ相手を心配するって、どういうことだよ」

「だって、仕方ありませんよ。あんなことをするとは思っていませんでした」

「仕方ないだろ?簡単でいいんだ」

「そうかもしれませんが、あれでは仲間割れも起きますよ」

「そうなったら、なっただろ?」

「セツを試すために、人を呼んだのが、間違いでした」


どうしてそんなに非難されるのかはわからない。

俺がやったことというのは、二人一組で背中合わせで縛っただけだ。

あれは、二人の動きを合わせないことにはちゃんと動けないというものだ。

それもわざわざ狭い場所に移動させたうえで行うという確かに鬼畜ぶりだ。


「そんなことよりも、次に行くぞ」

「わかっています」


俺たちは次に向かっていた。

どうしてなのか?

それは、ヨミがいらないことをしたからだ。


「そもそもあんなことをしなければ、あそこにいられたんじゃないのか?」

「いえ、わたくしがあの家にいないことがばれれば、すぐに探す人が来ますよ」

「そういうものか」

「はい。だって、わたくしは生贄ですから」


ヨミは再度そう言葉にするのだった。

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