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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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十七話

「警戒するのは、さすがは殺し屋さんということでしょうか?」

「何が言いたいんだ?」

「そうですね。わたくしがここであなたと出会ったということが最初からわかっていたと言えば、信じます?」

「何を…」


言っているのか?

そう答えようとしたが、考えてしまう。

それがわかってしまう、そんなことがあり得るのではないのかということを…


欠落者としての能力というのは、人それぞれ違う。

多くの人は確かに弱い能力なのかもしれない。

そんな中でウタのように強力な能力を持つ人というのも存在している。

だから、目の前にいるヨミと呼ばれた彼女も同じように強い能力をもっていると考えることがあるのかもしれない。

でも、そうなるとどういう能力だというのだろうか?

体の欠落はわかるとはいえ、そもそもどうして俺がここに来るということがわかった?


「考えていますね?」

「だったら、どうなんだ…知ろうと思うことはおかしいのか?」

「いいえ、そういうことではありません。むしろ、わたくしが言っていることを変なこととも畏怖するようなこともなく、どうなんだろうかと考えるのはあなたの素晴らしいところです」

「そうかよ」

「はい。わたくしの能力を知るためには、情報が少ないでしょう?よく考えてもらえると嬉しいですね」


ヨミはそう言葉にして、にこやかに笑う。

見た目に反して、かなり大人びた口調の彼女に警戒を解くことはない。


「それほど警戒されても、わたくしはあなたのような力は全くありません。できることはこうしてあなたと話すことだけ」

「話して何になるんだ?」

「わかりませんか?わたくしは、あなたをわかっています。そして、あなたと一緒にいる彼女のことも」

「どういうことだ?」

「あなたもわかっているはずです。彼女は、純粋であり、力強く、そして…いざとなれば力を使うことに躊躇しません。あなたと違って」

「!」

「知っていることが以外でしょうか?わたくしは全てわかっています。それは、あなたにもわかることでしょう?」


ヨミは俺の目をしっかりと見つめて、そう問いかける。

どういうわけか、初めて会っただけだというのに、俺のことを知っているとヨミは言う。

そして、その言葉に嘘はない。

能力がどういうものかはわからない。

でも、これだけできるということは…


「それじゃ、ここから俺がどうするのか、わかるのか?」

「はい。そのためにも、この都市で起こっている儀式について教える必要がありますね」

「聞かせてくれ」

「はい、そう言われると思っていました」


ヨミは嬉しそうにそう答えると、体を動かし、ベッドから少し移動する。

そして、隣に座れとベッドを叩く。


「行かないとダメか?」


思わず聞くが、ヨミはにこやかに笑って再度ベッドを叩くだけだ。

俺は諦めて、ヨミの横に腰を下ろす。


「来てくれましたね」

「強制みたいなものだっただろう?」

「でも、あなたは利用価値があると思ったから、こうやって隣に座ったということでしょう?」

「そうだな」

「でしたら、話は聞いておくべきですよ。ここウエストのことはわたくしがすべて知っていますから」

「どうしてだ?」

「決まっています。わたくしがウエスト三代目御使いというものですから」

「御使い?」

「はい、簡単に言ってしまえば、ウエストの一番上の存在になります」


衝撃の告白だった。

横にいるヨミがウエストの一番上の存在?

どういうことだ?

そもそもの意味がわからない。

だが、ヨミは俺に頭を下げる。


「このままでは、あなたの大切な彼女がわたくしの変わりになってしまいます。だから、本来のわたくしがやらないといけないんです」

「どういうお願いなんだ、それは…」


意味がわからない俺はただ、そう答える。

ただ、ヨミは頭を上げると俺の目をじっと見る。

まるで、俺は知っているかと言われているようだった。

意味がわからない。

だって、俺はウエストに来たのは、少し前なのだ。

後はセントラルにいた。

そのときにやってきたことも、ただの人殺しなのだから、何か大切なことを知りえることはないはずだ…


俺はそのとき何かが頭に引っかかるのを感じる。

何にひっかかっている?

セントラルでやってきたことを思い出す。

だけど、それはただの人を殺してきた…


「欠落者はそういうことなのか?」

「気づかれましたか?」

「ああ、なんとなくな…」


おかしいと思ったのは、殺した証として提出するものだった。

セントラルにいたとき、確かに俺は普通の悪いことをしている奴らだけでなく、それに加担するようにして能力を使った欠落者も殺していた。

ターゲットとして…

そのときに証として持っていったものというのが、人の血だった。

どうしてそんなものを証として提出するのか、疑問だった。

でも、何かに必要だったというのなら、納得してしまう。


「でも、それなら、どうして生贄に欠落者が必要なんだ?」

「あなたは、欠落者が出始めたころのことをわかっていますか?」

「最初からいるわけじゃないからな。詳しいことはわからないが、世界が暗闇に包まれ始めたときだと」

「はい、その通りです。だから、その時から必要だったというわけです。欠落者という生贄が…」

「それは、どうしてだ?」

「あなたは、各都市だけには暗闇が包まれないことを不思議ではありませんか?」

「来たのが、初めてだからな」

「そうでしたね。ですが、ここに来るまでの道中で、ここの異常さというものに気付かれたと思います」


言われて確かに気づく。

ここだけは暗闇に覆われることもなく、モンスターなどと呼ばれるような存在もいない。

そうなると、そこに何かがあるということに気付く。


「何があるんだ、ここには…」

「あれです」


ヨミは外を指さす。

そこにあったのは、神木。


「神木。そう呼ばれるあそこにあるのです。木脈が」


俺は聞きなれない言葉に困惑しながらも、大きな何かに巻き込まれることに驚くしかないのだった。

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