十五話
「セツ、どういうことか説明してもらえますか?」
「そうだな、簡単にになるがいいか?」
「はい、それで大丈夫です」
俺たちは神木の中に隠れたまま会話を続ける。
「言ってしまえば、会話を盗み聞きしたときに、気になることを言っていたからだ」
「それが、先ほど言っていた見てもよくわからないものだと…」
「実際に見てはないけどな。あれだけ釣れるってことは、隠しているものというのはどれほどなのか気になるな」
「それはいいのですが、どうやってそれを知るつもりなのでしょうか?」
「決まっている。技術でだ」
そうして俺は、単独行動を行う。
殺し屋としてのスキルを使って、ここからは潜伏だ。
気配を感じながら、俺は外に出る。
出るタイミングで、ウタにまずいまずいと不評の携帯食料だけはおいてきた。
あれがあれば一日くらいは我慢してくれるだろう。
「早く帰ってきてほしいと言われたが、目的を達成するまでは無理だよな」
まずは確認だ。
人はいた。
最初の受付から、ここにくるまでには何人かの人がいた。
でも、そこで思い出すのは、木の屋根だ。
実は都市の中心部と呼ばれる場所は神木を囲うようにしてできているというのは歩いているとわかったのだが、その部分にはすべて木で覆われていた。
あのときは、日差しが強いこともあるので、それを防いでいるものだと思っていたが、あの男たちが水に濡れていなかったことを考えると、防いでいたのは水なのではないかと思われる。
水に濡れるのがダメだったということなのか?
でも、それが何になる?
「いや、神木から水が降ってきたと考えると、あり得るのか?」
一つ仮説があった。
あの水が神木からの神の恵みと考えるのであれば、かかることはよくないと考えている人が多いのではないのかということだ。
だから普通の人であればかからない。
俺たちのようなよそ者だけがかかる。
と考えるとだ…
「簡単に俺たちが普通じゃないってことがわかるってことか…そして、やっていることは絶対あれだよな」
神を崇めるなにかということだろう。
殺し屋として、セントラルにいたときも、いくつかの宗教を行ってきた人たちを殺害したこともあった。
人を救うのも、人を殺すのも宗教だということをわかっていた。
だからこそ、この場所に蔓延している宗教がなんなのか?というものを見ればどんなものかわかるだろう。
「早めに戻らないとな」
俺は暗くなり始めたこの都市を駆けるのだった。
※
「まず…」
ウタはさっそく携帯食料を食べていた。
まずいのはわかっていても、さすがに数回食べていることもあって、飲み込むことくらいはできるようになっていた。
「私は足手まとい、わかってはいます、います…」
セツはウタのことを狙ってきた殺し屋だ。
そして、ここまでの戦い方を見てきただけでも、かなり優秀だということがわかった。
ウタ自身も、欠落者としての能力を使い、よくないことをしてきた。
だからこそ、そういうこともわかる。
目が見えないと、こういうときに足手まといにしかならないということも…
誰かがいる場であれば、ウタの声というのは武器になる。
でも、誰もいないときというのは何も役にたたないのはわかっていた。
「暇ですね…」
隠れるというのは、暇だ。
だから、ついつい何かが起きてくれと考えてしまった。
そんなときに気配を感じる。
「誰ですか?」
ウタは、すぐに気配に話しかける。
その気配は明るく声を返してくる。
「あっれー、先約がいるなんて」
「だから言っただろ?そういうこともあるってな」
「でも、よかったじゃん。うちらと同じ御使いの人だからね」
「確かにそうだな。僕たちと同じで特別な人は、引き寄せられるってことだ!」
豪快に笑う男と、楽しそうに笑う女性。
二人がどうしてここに入ってきたのかはわからない。
だけれど、隠れるわけにはいかなくなってしまった。
「ウタです、あなたたちは?」
「うちは、ミミ」
「僕は、ロングだ」
「どうしてここにいるのでしょうか?」
「それは、うちらも同じセリフ」
「そうだ、そうだ」
「えっと、私は迷っただけで…」
「確かに、この都市の服装とは見た目が違うよね」
「ほんとうだ、ほんとうだ」
「おい、ロング?どうしてうちの言葉を囃し立てるようなことをいうの?」
「仕方ないだろ?僕はミミの従者みたいなものなんだからな」
ロングと名乗った男が、そう答える。
そこで、ウタは音で気づく。
二人がウタと同じ欠落者であるということに、歩き方がおかしいことで、ミミと呼ばれる女性は片足がないということ。
ロングと呼ばれた男は、片方の腕がないのがわかる。
同じ欠落者だかこそ、ウタは油断していた。
気づけば気を失っていた。
何かを吸わされることによって…