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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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十四話

「男はどこに行った?」

「わからん、気づいたらいなくなってやがる」

「半分は周りを探せ、そして半分は女の監視だ」

『は!』


人数は十人くらいだろうか、男たちはやはり俺たちを監視していたようだ。

監視している理由がわかるまでは隠れているのがいいだろう。

ここまで接触してこなかったことを考えると、一人いなくなったところで、すぐに接触してくることはないだろう。

とはいえ、心配は心配なので、見える位置でこちらも動いていく。


消えた俺を探し始めたほうに関しては無視をすると考えても、ウタを先ほどと同じように追っているやつらのことを見る。

すぐに違和感に気付いた。


「どうして服が濡れていないんだ?」


かなりの疑問だった。

ウタと俺は、空から降ってくる水滴によって濡れたのだ。

それに対して、男たちは全く濡れている風に見えない。

どうやって追ってくれば、そうなるのかを知りたいくらいだった。


「わかっているな、あれを見られることだけは避けないといけないからな」

「そうだな」

「あれだけはな」


あれとはなんだんだ?

気になる会話が聞こえるが、そもそもが人がいないことで何をしているのかわかるわけではない。

そんな中でもウタは、ずんずんと進んでいく。


ウタに説明した内容というのは、今のまま神木に向かって進んでいくというものだ。

何があるのかわからない以上はまずはやってみたいことをやらないと意味がないからだ。

だからといって、何もしないというわけでもない。

欠落者として力を持つウタには、神木になるべく近づいてその神木に話しかけるというものだ。


声に力をもつウタには、その力が人以外にも効果があるというのはセントラルの壁でわかっていた。

神木と呼ばれるものにどういう効果があるのかはわからないが、神木と呼ばれるからには、ウタの声によって何か変化が起こることもありえるのではないのかと思ってしまう。


「書かれていた内容はなんだ?」

「は、神木に向かうという内容のものでした」

「なるほど、他の都市から来たなら普通のことだな」

「はい。内容としては当たり前ですね」

「進路も間違っていないな」

「そうです…ですが、あの女性は御使いで目が見えていないという記載があります。だというのに神木に向かって真っ直ぐ歩けるというのは…」

「おかしいと?」

「は、はい…」

「でも、考えてみろ、御使いと呼ばれるからには、何か特殊な力があるってことで間違いないだろ?」

「なるほど、言われてみれば…」

「今はあの女性を追いかけることが優先だ」


男たちはそこで会話を終わり、ウタを追いかける。

御使いという言葉は、やはりこの都市での欠落者ということなのだろう。

特別な能力があるというのは間違っていないだろう。

だが、普通に歩けているのは技術によるものだろう、目が見えないというハンデから身に着けた棒を扱うことによって、正確にどこを歩いているのかを把握するものだ。

簡単にやっているようですごいことなのだが、今はいいだろう。


男たちが言っている隠したいことがなんなのかを知るというのが、今一番重要なことだ。

ここで四人を殺し、一人を尋問することで内容というものが知れるかもしれないが、この都市まで来て、さらにはお金がもらえない殺しをやるというのも、必要なことではない。


「ウタを一人にするわけにはいかない…となると、ここはあれだな」


俺はなるべく勢いよく視覚外から現れると、ウタに声をかける。


「ウタ」

「セツ?」

「すまない、トイレの場所を探していて迷った」

「それは、いいのですが…」


ウタは戸惑っている。

だが、俺は近づいていくと、その手のひらにバッテンを書く。

これは中止の合図だ。

ウタもすぐにそれに気づいてくれる。


急に俺が現れたような状況に、少しざわついているような気配を感じる。

ウタも早すぎる中止に、驚きを隠せないようだったが、俺はそんなウタに話しかける。


「ウタ」

「なんでしょうか?」

「トイレに行く途中で、人を見た」

「そうなんですか?」

「ああ、何をしていたのかは、俺にはわからないが、帰るときにでも、聞くというのがいいかもしれないな」

「それはなんですか?」

「うまく説明ができない」

「でしたら、一緒に見てみたいのですが…」

「見るなら、帰りがいいんじゃないか?ここからだと、戻ることになるからな」

「そうですね。それなら神木を見てからのほうがいいかもしれません」


俺の急な会話にウタはうまく合わせてくれる。

さすがはというべきか、こういうことをしたことがあるのだろう。

命を狙われるわけだからな。

一緒に行動しているとはいえ、完全に信用できるわけではないということだろう。


そうして今度こそ神木にさらに近づいたときだった。

気配は、姿を現す。


「セツ」

「大丈夫だ」


人数は、先ほどと同じで五人。

残り半分は見失ったとされる俺をまだ探しているということだろう。

大きな都市なので、なかなか合流するのも難しいことじゃないということだ。

だが、驚きはそこではない。

どうして隠れることをやめ、出てきたかということだ。

まあ、理由はわかっている。


「すまない、急に出てきて」

「いや、いいんだが、どうかされましたか?」

「なんだ…あれだ。君は何を見た?」

「何をと言われましても、どう表現していいのかわかりません。初めて見たものでしたので」

「そうか…」


男たちはその言葉とともに、何かをこちらに向かって投げてくる。

予想通りの行動に俺の口元を思わずにやけさせてしまう。

口封じというものだろう。

俺はそれを簡単にかわす。

見たと言った俺だけを狙っていることを考えても、俺だけを殺す気なのだろう。

それともウタが御使いだからなのか?

どちらかなのか、どちらもなのかは正直わからないが、今はやり過ごすしかない。


「ウタ」

「はい、どうしますか?」

「殺すのは?」

「セツがそうしたいのであれば…」

「だったら、逃げるほうがいいな」


そう言葉にする。

一人ならまだしも、殺し損ねるとウタを人質に取られる可能性があるからだ。

だったら、先に殺せばというのは、相手の目的がわからないことにはどうしようもなかったからだ。

でも、目的がわかった以上は、余計に隠しているものというのが気になってしまう。


「逃げられると思うのか?」

「逆に、逃げられないとでも?」

「どういうことだ?」


俺は隠していた玉を投げる。

シミソウが入っているものだ。

広がったそれは、男たちも何かわかったのか、声をあげる。


「シミソウだ!避けろ!」


これを知っているというのか、すぐに距離を置く。

だが、距離を置くというのは逃げやすくなるというものだ。

何かというのを知っている以上、男はシミソウを防ぐべく目を瞑っている。

そんな中俺たちは、逃げるのだった。

身を隠すべく。

だが、ウエストを知らない俺たちは、どこに身を隠すべくか迷っていたときだった。

神木に一つ空洞があるのが見えた俺は、そこに飛び込むのだった。

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