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十一話

「どれくらいで着くんだ?」

「明日にはつくな」

「そんなに近いのか?」

「いや、最適なルートを通っているから可能なだけだ。これだけの暗闇だ。迷うと、いつまでたっても辿り着くことはない」


タクシーはそう言葉にするのだが、周りは暗いだけで正直なところ本当に明日にはつくのかわからない。

出発してから二日たち、セントラルからどれくらいの距離を走ったのかわからないが、タクシーが言うのだから、本当なのだろう。


「早くつかないのでしょうか?」

「明日には着くんだから、別にいいんじゃないのか?」

「でも、さすがに体が気持ち悪いです」


ウタは自分の服を見ながらそう答える。

さすがはセントラルから出るまでは、それなりのお嬢様だったということだろう。

何日も水浴びをしないことなんてことは、俺も普通にあり得ることだからだ。

それにだ。


「そもそも、汗をかく感じではない気がするけどな」

「そうですね。確かに空気はひんやりとしてますよね」

「だったら汗はかいていないんじゃないのか?」

「そういう問題じゃないです。こうやって同じものを着ているということ自体が嫌なんです。服だって、せっかく買ったのに、これでは着る機会すらないじゃないですか…」

「だったら、今から着替えるか?」

「さ、さすがに男性の前で裸になるというのはよくないです」

「それなら、我慢しかないんじゃないのか?」

「そうなんですけど、そうなんですけど…」


ここまで一緒にいる時間が増えたからか、どことなく話し方というのもくだけた感じになってきていると思う。

あとは、ウタがまずいまずいと言っていた完全栄養食をよく食べているからだろう。

モンスターがいるせいで、火を使えないというのも余計にウタが食べたいものを食べられないというストレスになっているのだろう。


「これなら、先に外のことをもっと調べておくべきでした」

「急いでいたからな、仕方ない部分もあるよな」

「本当です。仕方ないこととはいえ…もう少し余裕があればよかったんですが…」

「やっぱり、セツたちは何かあったのか?」

「ああ、殺し屋から狙われてた」

「まじかよ、それはなかなかの出来事だな。我も確かに欠落者だから、それだけ疎まれるようなことはあっても、命を狙われることはなかったな」

「まあ、そうだろうな」


そもそも、元々命を狙っていた相手と狙われていた相手が二人で違う都市に向かっているという時点で、おかしな状況ではあるのかもしれないが…

それでも、それなりに仲良くなっているものだと思っている。

そんなときだった。


「まずい」

「どうした?」

「あれを見ろ!」


目がいいタクシーが先に何かに気付く。

そして、それは俺も気づいた。

明るいのだ。

前から明るい何かに近づいている感じがした。


「あれがウエストなのか?」

「そんなわけあるわけないだろ?我がさっき言っていた、つくのは明日だってな。嫌な予感がする。少し動くぞ」


タクシーがそう言葉にして、進路を変更する。

さすがに特別な目で、いろいろなことが見えているのか、すぐに安全な場所に移動する。

そして、俺たちが見えていたものというが近くにやってくる。

隠れるようにしていた俺たちは、それに巻き込まれるということはなかったが、それというのは、横並びに走る車両だった。


数は六台はいるだろうか…

その数の車両が横並びになり、明かりをつけ走る姿というのは確かに見ている分はいいものなのかもしれないが、完全にあれはモンスター対策をしているためなのだろう。

台数が多いためか、音ももの凄く、見えていないウタも音に驚き耳を押さえている。


「すごいですね」

「ああ…」

「くそ、めちゃくちゃなことをしやがって…」


通り過ぎたそれを俺たちは見送る。

かなりの勢いで通り過ぎた車両たちと、それを追いすがるようにしていくモンスターたち…

それだけを見るだけで、世界が終わりに向かっているのだということをさらに意識されるのだった。


そのあとは、安全を確保すると俺たちはウエストに向かって進む。

そして、いつもと違う匂いを感じたときだった。

少しずつ明るい大きなものが見えてくる。


「見えてきたぞ」


タクシーがそう言葉にするが、俺たちにはまだ都市が完璧に見えるわけではない。

それでも、感じる。

何か乾燥したような匂いと、森にいるような匂いがする。

そして、驚くべきものが見えてくる。


「なんだあれは…」

「あれが、神木(しんぼく)だ」


大きすぎるそれを見た俺は驚く。

あれがウエストの象徴である、神木。

そして、それと取り囲むようにしてある、自然がセントラルとは全く違うものだということを認識させられるのだった。


「これが本当の土の匂いなんですね」


最初は静かにしていたウタも両手を広げてそんなことを言うのが聞こえたのだった。

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