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心声・神歌が交わるときに  作者: 美海秋


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十話

ウタの容態が落ち着いたところで、俺は男に話しかける。


「さっきまでのものは、なんなんだ?」

「ああ、外の世界は初めてって言ってたよな。あれがモンスターだ。名前くらいは聞いたことがあるだろう?」


男にそう言われて、かなり前の記憶を思い出す。

殺し屋として、少し経った頃。

依頼に書かれていた相手が、セントラルの外に出かけることが多いやつだった。


そんなやつだったからこそ、家を空けることが多く。

殺しのタイミングを考えるためにも、部屋に侵入して予定を確認する必要があった。

そのときに確かにあった、外について書かれたものというのが…

見たときは、おとぎ話か何かだろうかと思ったが、先ほどの感じたことのない気配を思い出すと、本当にいたのだろうということがわかる。

ただ、気になるのはそれだけではない。


「ウタがあてられたっていうのはどういう意味なんだ?」

「聞こえてたのか?」

「ああ…」

「あてられたというのはな、さっきのモンスターにだ」

「モンスターにあてられた?意味がわからないんだが…」

「なんだ?金をしっかりともってるから、外のことをもっと知ってると思ってたんだがな。見た目よりも年齢は幼いということか?我と同じような欠落者を連れているから何か問題があるってことはわかっていたけどな、何も知らなかったということなのか?」

「ああ、外の世界は暗闇に包まれていることくらいしか、知らないな」

「まあ、周りに関しては見ての通りだ。それ以外にいるのがさっき言ってた化け物。モンスターだ」

「あれはなんだ?」

「正体はわからない。暗闇にいる何か化け物だ。こうやって暗闇を走っていると、その化け物にあてられるやつがいるんだ。どうなって、そうなっているのかは我たちも知らん。あてられれば一時的に気分が悪くなる。少し横になれば治るから、今は動かず待つしかない」


男はそう言葉にする。

確かに、ウタのほうを確認すると、先ほどの荒めの呼吸から、落ち着いたのかゆっくりとした呼吸に代わっている。


俺たちは周りをほとんど警戒することをしない。

それはモンスターが俺たち以外にしか襲っていないからだ。

これが、男が光を使っていなかった理由なのだろう。


「もしかしなくても、モンスターは明るいものによってくるのか?」

「そうだ。モンスターはな、どうしてかは知らないが明るいものによってくる」

「だから夜目が効く夜に出発をしているのもあるのか?」

「おお!よくわかったな。そういうことだ。我はこの通り目がいい。だから、最初のときから気付いていた。これまで何度も都市を行き来してきた経験もあるからな」


男は簡単に言うが、言葉から、行って帰ってこなかった人もいるということなのだろう。

セントラルであれば、欠落者としてそれなりの力をもっていれば、生きられる。

ウタもそうだったように…

そんなことを考えていると、ウタがゆっくりと体を起こす。


「大丈夫か?」

「はい…何か、よくわからないですが、急に何かが私の中にきた感覚がして、気づけば気を失っていました」

「それだけか?体に異変はないのか?」

「特にはありませんね。むしろ、少しだけ体が軽い気がします」


ウタはそんなことを言う。

たぶん、体が軽くなったのは、睡眠をほとんどとることなくここまで来ていたからだろう。

これは車両の中で寝かしたほうがいいだろう。


「出発しますか?」

「少しだけ休憩してからでいいよな」

「大丈夫だ。急いだところで目的地は決まっているからな。金はしっかりともらってるんだ。小さいことは気にしないでくれ」


男はそう言葉にしつつ懐からあるものを取り出す。

それは、俺が食べているものと同じ非常食だった。


「お前、それは…」

「なんだ?」

「俺も持ってる」


その言葉とともに、俺は男と同じものをポケットから取り出す。

男はそれを見て、驚いたようだ。


「まじかよ。これを我以外に食べているやつを初めて見たぞ」

「いや、栄養を取るのには、ちょうどいいものだからな」

「それに関しては、我も同感だな。どうしても車両に乗っている間は、悠長に飯を食べている暇はないからな」

「俺も同じだ」

「まじかよ。これはさらにいいお客様ってやつだな」


そう言葉にして、男は笑う。

やはり俺以外の人も食べているということだ。

ただ、後ろでウタの言葉が聞こえる。


「あり得ない…」


だが、それは俺たち男二人の会話によってかき消される。

結局のところ話が盛り上がった俺たちは車両に乗るときに、今更ながらに自己紹介をする。


「いいお客だってことがわかったからな。ここからの旅は、このタクシーに任せろ」

「俺はセツだ。よろしくな、タクシー」

「なんでしょう。よくない気がします」


ウタがそんなことを言いながらも、タクシーは車両を出発させる。

暗闇の中を、車両は疾走するのだった。

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