第五場(日光街道・本郷付近)
登場人物
友矩
宗矩
町人1
茶坊主1
槍持ち1
忍者6~15 全員、黒装束で能面を被っている。
その他、大名行列参列者、町人のモブキャラ多数
〇日光街道・本郷付近
テロップ「日光街道・本郷付近)
大名行列が街道を歩いている。
友矩は馬に乗り、駕籠の真後ろの位置で行列に参列している。
友矩の後ろには数名の槍持ちと押え箱持ちが歩いている。
行列の両脇では町人たちが土下座している。
町人たちの背後には蕎麦屋や呉服屋などの民家が並んでいる。
町人1が体を半分起こす。
友矩「そのほう、図が高い!もそっと頭を下げよ」
町人1「ははあ」
町人1、半分起こした姿勢から、怯えて頭を下げる。
ナレーター「徳川将軍が春に日光東照宮を参拝する行事を日光社参と呼ぶ。日光社参の大名行列は参勤交代のそれより規模が大きい。
日光御成街道を北に進み、岩槻城で一泊。さらに幸手宿から日光街道に入り、古河城で一泊。最後に宇都宮城で一泊し、四日目で日光へ至る。
日光で連泊した後、復路も往路を逆に巡るので、合計八泊九日の長旅となる。
武士を乗せた騎馬百騎。鉄砲や弓で武装した足軽八百人。その他、道具箱や槍持ちの中間、近習、茶坊主、医師など千五百人余が、駕籠に乗った将軍と同行する」
両脇の民家の屋根から、忍者6~15が飛び降り、刀を抜いて大名行列を襲撃する。
群衆にざわめきが起こる。側にいた町人たちは一目散に逃げる。
茶坊主1、背中を忍者6の刀に斬られ、「ギャァァァァー」と一声叫んで息絶える。
駕籠の周囲にいた近習たちは抜刀し、忍者たちに応戦する。
友矩「槍じゃ。槍を貸せ」
馬上の友矩、歩兵の槍持ちから槍を手渡される。友矩、近くにいた忍者7の胸に槍を刺す。
忍者7、胸から血を吹き出しながら数歩後ずさり、ややあって仰向けに倒れる。倒れるとき能面が顔からはずれ、髭面の若者の顔が露わになる。
忍者8、瓢箪に入れた油を駕籠にかける。
忍者9、火のついた松明を籠めがけて投げつける。
駕籠に火がつく。駕籠はたちまち火だるまになる。
友矩「上様!お逃げください」
すると駕籠から宗矩が飛び出す。
友矩「(つぶやく)父上......」
宗矩、抜刀すると機敏な身のこなしで、忍者8、9、10をたちまち斬り捨てる。
友矩「父上!上様はご無事で」
宗矩「家光公はここにはござらん」
松明を持っていた忍者11が背中の刀を抜いて宗矩に襲い掛かろうとすると、そうはさせまいと友矩が背後から忍者11の背中を槍で突く。
忍者11、燃えている駕籠の上にうつ伏せに倒れる。
火が燃え移り、忍者11の全身が炎に包まれる。
他の忍者たちは駕籠に将軍が乗っていないことに気づくと、急いでその場を後にする。
(つづく)