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2度目の婚約破棄は余裕です。  作者: 八山はちた
9/9

8話 嘘だと言ってよ。バー◯ー!!




「どどどどどどどどういう?!」

あ、完全にパニくった。

「あはは、吃りすぎだろ」

それを見て、エイダンは可笑そうに笑い飛ばした。さっきまでとキャラ、全然違うじゃん!

でも、そう言う悪戯っぽい笑顔も可愛いですね!いいと思います!

「お前、すっごい元気じゃん。病弱設定何処にいったの?」

病弱設定?魔力過剰症のこと?

「え、病弱って」

「まぁ、黙って悪役令嬢になろうなんて思わないもんな」

「悪役…?」

悪役令嬢?悪役令嬢ってあの?よく乙女ゲームとか転生令嬢小説とかにでてくるあのヒロイン虐めの、あれ?

「で?どうやって病気治したんだ?やっぱり、よくあるシナリオの先取りとか?チート能力とか、もってんだろ?」

「ちょっと!待って、ストップ!悪役令嬢って」

その時、不意に納屋の外から声がした。

「ラナリィー?何処だい?」

兄だ。

「アリスト兄様ぁ!俺はここです!」

エイダンは悪戯っぽい顔からキュルンと可愛く顔面を花咲かせると兄の元へ走っていった。

え、何?今のキュルン。人間、怖いっ。

そんなことより、ちょっと待ってくれ。どう言う事なんだ?

病弱設定に、悪役令嬢?

固まって動けずにいた私へ、エイダンを伴った兄が納屋の外からやってくる。

「ラナリィ?お昼、過ぎてるよ?…どうしたの?具合でも悪い?」

近づくと私のおでこに手を添えながら、心配そうに顔を覗き込んでくる。

「あ!な、なんでもありませんわ、お兄様。芋の事を一生懸命見てたら考えが色々止まらなくなってしまいましたの、あはは」

「本当に?大丈夫?」

さらにグイッと近づかれる。鼻先が着きそうだ。あぁ、どんな状況下でも顔面偏差値高い!あんまり綺麗な顔を近づけないで。鼻血でそう。

「大丈夫です!」

鼻血が出てしまわない様に、顔と気持ちをキリリっと引き締め一歩距離を取った。

兄の後ろには、エイダンがいて兄の服を引っ張る。

「兄様、帰りましょう。俺、お腹空きました!」

可愛らしく笑うエイダンからは先程の不適さは消えていた。

こ、こいつ!兄にめっちゃ猫被ってやがんじゃん!!




その夜、与えられた部屋でベッドにダイブして云々と私は唸っていた。

あの猫被りエイダンに転生者だとバレてしまった。

何故か。

考えられるのは一つだ。エイダンも転生者だと言うこと。

結局、その後はエイダンが兄にベッタリだった為、事の真相を追求することが出来なかった。

エイダンは私が悪役令嬢だと言っていた。

私が悪役令嬢だと?どう足掻いたら私みたいな良い子が悪役に成り得るのか。

皆さん分かりますか?いえ、分かりません。

だって、私はこんなに良い子なんだぞ!!

悪役令嬢ってことは、もしかしたらこの世界、前世でよくあった小説やゲームに転生しちゃったー⭐︎っていうアレなのかも知れない。

ラナーリアと言う登場人物がいて、その設定があり、私がそこに転生したと言う事か。

マジか…。それは、とても胸熱なのだが、しかし、ちょっと可笑しいのだ。

ベットにゴロゴロと転がり云々と考える。

セントクレオス王国、エルドガルド、エルガイア、魔法、精霊………。

うーーん???

何故だ!出てこない!!

数多の乙女ゲームを制覇し、転生令嬢小説を読み漁った私だが、この世界の物語がピンこない。それどころか、全く心当たりがないのだ。

え?転生した私がそのシナリオを知らないのってどうなの?

俺強出来ないじゃん!!

悪役令嬢って、基本的に破滅しかないんじゃん?爵位剥奪、国外追放、島流し、修道院送り、はたまた死。

待ってくださいよー。

もうっ、死ってー(笑)

いやいやいやいや待って待って待って!

冗談じゃない!!嘘だと言ってよバー◯ー!!どれもこれも、ごめんなんだが!

私はこのエルドガルドでやりたい事がいっぱいあるんだ!

大体、普通に考えて、誰かと争いたいとか、誰かを蹴落としたいなんて思わない。虐めなんて以ての外、私はそんなに暇じゃないし、出来れば他人とは深く関わらずに平穏に生きたい派だ。

他人に対して感情を露わにしたら負けなんだ。私が前世の経験から学んだ事だ。何かに感情を込めれば込める程、自分に与える快楽も影響もダメージも大きい。そうすると失ったり、裏切られた時、身体も心もひたすらに疲弊するのだ。

強い感情は、疲れる。

私は真面目には生きるが、楽しく美味いものを食べ、やりたい事をやり、ただエルドガルド領をクレオス一住みやすい土地にするんだ。悪役なんかやってる時間なんかない。

ここが物語の世界なのであれば、対策して悪役なんて無駄な事、回避すればいいだけだ。

よし、明日、エイダンとっ捕まえて知っている事を、まるっと全部吐き出させてやろう。






ふっと吐き出した息が白く空に登っていく。高地にあるこの里は春になっても、夜は芯から冷える。

更に北に聳えるタイダルの山頂にはまだ厚い雪が覆っている。

冷えて澄んだ空には、いつもより近い星が瞬き合っている。

「エル、いるんだろう?」

アリストは所々、岩が突き出す草原で一人、くうに向かって声をかけた。

ふわりと眼前に旋風が巻くと一匹の猫が現れた。

「なぁうん…」

猫は一つ鳴くと、突風と輝きを発して、真の姿に戻った。

「あはは、何か、小さくなってない?」

象の様に大きかった巨体は、馬と獅子の間くらいの大きさになっていた。

「ラナーリアから大き過ぎると苦情が出てな。跨がれるサイズが最高なんだそうだ」

「あはは、ラナリィらしい。エルは相変わらずラナリィに甘いよなぁ」

そう言って微笑むアリストにエルガイアはお主には言われたくないと、半眼になった。

「違いないや」

クスクスと笑ったあと、改めてエルガイアを見るとアリストは本題に入った。

「エル、ラナリィの呪いは輪廻の祝福だったよね?」

「そうだ」

「エルが僕に与えた祝福はクラウディアの魂を追う転生。ラナリィは輪廻。するとラナリィは何度も転生していてもおかしくはないって事だろう?」

「そう我もそう思っていた。しかし、我はあれの魂を追っていたが、この三千年余り一度も見つけることはなかった」

「うん、それで思ったんだけど…もしかしたらラナリィは、この世界はとは別の世界で転生を繰り返していたんじゃないかな」

アリストは嬉しそうにエルガイアに微笑むと言葉を続けた。

「ラナリィには、この世界にない知識がある様に思う」

「……芋か?」

「そう、芋しかり。たまによく分からない単語を言うだろう?」

「モエるとか、エモいとか、キャパいとか言ってるな」

「そうそう、ラナリィは別世界にいた時の前世の記憶があるんじゃないかなって」

「ふむ…、あり得るかもしれん。世界が異なるならば我が見つけられないのも無理はないか」

エルガイアからの同意を得てアリストは更に笑顔になった。

「絶対にそうだよ。きっとここじゃない何処かの世界で自由に生きてくれていたんだと思う。ラナリィの奔放さはディアには決してなかったし、とても魅力的だ」

黙って聞いていてくれているエルガイアにアリストは続けた。

「笑顔だって、心からの笑顔だし、冗談だって言うんだ。ディアみたいに遠慮がちじゃなくて、やりたい事には一直線だしさ」

アリストはラナーリアを思い返しながら、クスクスと楽しそうに笑った。しかし、不意にその笑顔を消して、憂う様に声を出した。

「ディアだった頃の事は全く覚えていない様だし、それなら、こんな業などから抜け出して別の世界で幸せに生きてくれたなら、それでよかったのに、ラナーリアとして戻ってきてしまったんだね」

今まで聞いていたエルガイアだが、慰める様な諭す様な声色で応えた。

「…クラウディアは儚く弱い人間であった。たがあれの魂は、儚さとは無縁だな。令嬢とは思えんほどの猪突猛進ぶりだ。あの魂は確実に強くなっている。この広い宇宙を旅して強くなって戻ってきたのかも知れぬな」

「…そうだね、ラナリィとなら、何だか乗り越えられそうな気がするんだ」

そう言って一人と一匹は広く高い幾億の星が瞬く空を見上げた。

これから、襲ってくる現実はラナーリアを煩わせ傷つけるだろう。

しかし、それでも絶望だけが待っている訳ではない様に思う。ラナーリアを見ていると業を覆い潰す様に希望が溢れて湧いてくるのだ。






次の日、父と兄は朝食後、数人の護衛を残し防護陣の印を守る殿舎へと向かって行った。

私も行きたいと強請ったのだが、エルドラとの境界が近いため却下された。

まぁ、仕方ないと早々に諦めたのだが、兄が私の護衛の為、残ると言ったので、ミリアーナがいるしエイダンと町探検して遊びたいからと断った。

兄は私と離れる事を渋ったが、どうせ着いていけないなら、この隙にエイダンを捕まえて話が聞きたい。

昨日の様子からして、兄がいるとエイダンは会話にならないと思う。

それに、こんな突拍子のない事を兄に聞かせられない。

私は、兄は後継として着いて行くべきだと言う事、危ない事はしない事と里から出ない事、ミリアーナのいう事をしっかり聞く事などを高らかに宣言し、宣言に宣言を重ね、漸く納得してもらった。

兄と父は、ミリアーナと何故かエイダンにまで私を一人にしない事を口酸っぱく念押した。

しかも何故か家でお留守番してたはずのエルがいて、兄はエルにまで、ラナリィを頼むよ、と言うとやっと出発して行った。


「エル、ワープでもしてきちゃったの?」

顎下をこしょこしょしながらの私の問いかけにエルは

「なおん」

と鳴いた。

エルは額の精霊石を隠していて、誰が見ても猫ちゃんにしか見えない。

「なんだ?その猫。お前のペット?」

振り返るとエイダンがエルを覗き込んでいる。

父や兄からは私が精霊と契約している事は隠しておくように言われている。

私の額の核石も相変わらず隠しているし、実際、エルはどこから見ても可愛い猫ちゃんだ。

一度、改めて父に隠す理由を聞いた所、精霊と契約する程の魔法士は、有無を聞かずその殆どが王宮魔法士として召し抱えられるらしい。

それは即ち、お国の為に様々な問題を処理しなければいけないという事。結界付近のドラゴンの討伐しかり、魔物の討伐や、国家間の争いなど。

しかも、膨大な魔力を保有している令嬢は漏れなく王子達の婚約者候補となる為、精霊と契約しているとなると、確定、またはその筆頭として名を連ねる事になるそうだ。

因みに私の場合は、魔力量は多いが病弱であることから婚約者候補から除外されているらしい。

全く喜ばしい事だ。国に首輪を繋がれるなんで真っ平ごめんである。

しかし、病弱設定はいつまで効果があるのか、私は既に領地内を滅茶苦茶元気に走り回っている。

大丈夫なのか尋ねると、父はエルドガルドの兵や民達は公爵家に対して忠誠心がとても高いので、母や父のお願いを聞いてくれているんだよ、と笑っていた。

要するに箝口令が敷かれているのだ。精霊との契約については公爵邸でのみ知られている事で、使用人達は一致団結し口外しないでくれている。

と、言う訳で元気なのは兎も角、精霊との契約についてはエイダンにも秘密のなのだ。

「可愛いでしょ?エルって言うの。着いてきちゃったみたい」

「山登ってきたってことか?根性あるなこのにゃんこ」

エイダンは私の隣にしゃがみ込んでエルの頭を撫でた。

エルは苦しゅう無いとでも言う様に目を細めている。

それはさて置き。エイダンだ。昨日の事を尋問しなければ。

私はチラリと護衛達を見遣った。兄同様、幾ら子供の言葉とは言え聞かせられる会話内容では無い。

「エイダン、私のことは隊長と呼びなさい。探検よ」

「…はぁ?」

「ミリアーナ!あんまり近くを着いてきちゃ駄目だよ!探検隊に大人の助けは不要なの!」

私は腰に手を当て踏ん反り返って見せた。

ミリアーナは少し困った様な顔をしたが、私のドヤり顔を見て

「では、ほんの少しだけ離れて護衛させていただきます」

と微笑ましそうに笑い騎士の礼をとった。








「それで、詳しく教えて」

「何を?」

サンドイッチにかぶりつきながらエイダンが間の抜けた声で答えた。

聞こう聞こうと思いながら、街探検を大いに楽しみはしゃぎ倒してしまったのはちょっとそこに置いといて、今は草原で昼食を取っている。

ミリアーナが敷物をしいてくれ、フレア邸で詰めてもらったランチボックスを広げてくれた。

ミリアーナや他の護衛の騎士達も少し離れた所で草原に座り休憩している。

「何をじゃ無いでしょ?昨日の話だよ!私が転生者で悪役令嬢だって」

問われたエイダンはキョトンとしてこちらを見ている。

「え?転生者だろ?」

「そうだよ。転生者だよ。でも悪役令嬢ってどう言う事?やっぱりここは何かの物語の世界なの?」

「は?お前。え?何?知らなかったの?」

エイダンは見るからに焦る様に目を見開いた。

「だから聞いてるんでしょ?いいから教えなさいよ」

「嘘だろ…」

エイダンから戸惑いが見える。何?私、そんなにやばいキャラなの?

「何?ラナーリア、そんなにやばい奴なの?!」

「いや…やばいけど」

や、やばいんだ!?

「取り敢えず、ここは乙女ゲームの世界だよ。恋と魔法のシュミレーショRPG。セントクレオス物語。恋駆ける魔法のサーガ。略して恋サガ」

恋サガ…恋サガ…。

「…知らない。数多の乙女ゲームはやってきたけど、恋サガ聞いたことない。いつでたゲーム?」

「えっと、にせんにじゅー」

「あーそれは知らないわ!私がジプシーしてた頃だもん」

「んあ?ジプシー?」

「こっちの話…。でも、エイダンは今後の展開を知ってるってことでしょ?」

「いや、まぁ、知らなくはないけど…。…でも、多分もう多少はシナリオ変わってるんじゃないか?アリスト兄様もゲームと全然雰囲気違うし」

エイダンは、残りのサンドイッチを口にひょいと入れると、咀嚼しながら続けた。

「まぁ、最愛の妹が元気なんだもんな。おかしいと思っんだよ。病弱設定の妹が元気に山登って来るって聞いてさ」

「そう、それ。病弱設定って私、とっくに元気なんだけど、ゲーム上では治らなかったって事なの?」

「お前は寝たきりで学園にまともに通う事も出来なかったんだ」

「ピンピンしてるけど」

「だよな。だから実際、もうシナリオと違うんだよ。ゲーム中の俺は兄様と殆ど絡みなかったし、ゲーム上のアリスト兄様は誰にも心を開かない憂いを帯びた人だったし。今のあんな柔らかい微笑みなんてスチルでも見たことない。妹思いで、妹の病を治す為なら悪事にも厭わず手を出すようなダークさも兼ね備えた孤高のキャラ…。あぁ、あの美貌でクールでダークで孤高とか、控えめに言って神だよな。しかしながら今の兄様も最高だ。あの美貌であの微笑みとか、女神も凌駕してるから」

エイダンはうんうんと頷きながら一人語りをしている。それは聞いてないから。

「ねぇ、聞きたいんだけど…、乙女ゲームでしょ?エイダン、前世では乙女だったの?」

長くなりそうなので話をぶった切って気になった事を聞いてみる。

「っちげーよ!!姉貴がやってたの!」

「えー…、それにしてはお兄様にキュルンキュルンじゃん」

「お前なぁ!俺がどれだけアリスト兄様の素晴らしさを聞かされて生活してきたか!姉貴がアリスト兄様最推しだったんだよ!」

「へー、それで恋しちゃったの?」

「違うのっ!これは、あ!こ!が!れ!」

「ふーん?」

「お前なぁ…。まぁ、いいよ。実際、兄様は控えめに言って最高だし。俺が女なら是非とも結婚したい」

「私、偏見ありませんよ?」

「俺は女の子が好きなの!」

「キュルンキュルンなのに?」

「お前、俺の前世、悲惨だぞ?姉が3人の中で男一人って分かるか?ほぼ人権ないんだぞ?俺はな。兄様の様な人の弟になりたかったの!」

「まぁ、そう言うことにしておくわよ。で、知ってるなら教えてほしいんだけど、ゲームのストーリー。これからの展開。私、悪役なんかやってる暇ないの」

エイダンは、見るからに焦り出した。

「いや、俺、あんまり知らないよ?そんなに興味あった訳じゃなかったし。流石に姉貴の兄様語りは耳タコだったし、兄様のスチルとか毎日の様に見せられたけど。実際プレイしてた訳じゃないからさ。兄様のことしか解んないっていうか、兄様の事なら、スリーサイズから性癖まで設定資料集並に言える自信はあるけど」

「ちょっと待って、なんで性癖?恋サガCERO何?」

「何って、18だけど、乙女ゲームって全部そんなんじゃないの?」

「んな訳あるかっ!」

「え、そうなんだ?じゃあ、俺、乙女ゲームにめっちゃ偏見持ってたわ」

「全年齢向けの乙女ゲームもあるから。でもまぁ、CERO指定重要なのってヒロインだけでしょ?取り敢えずいいから、ゲーム中の私の情報何か思い出せない?」

「いや、うーーん…兄様の話し以外、殆ど流して聞いてたからなぁ。ストーリーは…主人公が平民の光属性の浄化の力持ちで、学園に途中入学して一癖、二癖ある攻略対象者と絆を高めながら愛を育んで………ラスボスであるお前を倒すって言うのが大まかな、」

「待って!待って待って。次から次へと、許容出来ない言葉聞こえた!ラスボスであるお前を倒すってなに?」

「そうなるよな、知らないんだもんな…。可哀想だけど、このゲームのラスボスになるんだよ、お前が」

はぁ??

「はぁ??待って。私、悪役令嬢なんじゃなかった?」

エイダンは、一つ深いため息をついてから渋々言う様に答えた。

「…悪役令嬢でラスボスがお前。それをヒロインと攻略対象者で倒してエンディング」

私の手からポロリとサンドイッチが落ちる。

「嘘でしょ…なんでラスボスがラナーリアなの…?」

「お前は初めから悪役令嬢な訳じゃなくて、深層の儚げな少女だったんだよ。それが途中で神隠しに合うんだけど。そこから、何故か病が完治して学園に通い出すんだ。でも人が変わったみたいに、悲観的で横暴になった。これはアリスト兄様がゲーム上でヒロインに話してたことな。んで大体どの対象者を攻略しててもヒロインの邪魔してくる全方位系の悪役令嬢に成り下がるって言う」

「成り下がる…全方位…」

余りの言い草よ。

「最終的に、前世を思い出したお前は全てを憎んで世界を破滅にって言うのがお前の設定だった」

私はガックリと項垂れた。

「……全てを憎んで世界を破滅…?」

ラナーリアの前世とはクラウディアか?クラウディアよ!何を恨むと言うのか?!

クラウディアに何があったのかは知らんが、私は毎日がハッピーディだ!!

それより何より、神隠しって何なんですか?何ですか?!怖い、怖すぎる。

「ねぇ!神隠しって何?私を隠す神がいるって事?お願い!もうちょっとなんか情報ない?」

詰め寄ると、エイダンは両手をフリフリと振り困惑した。

「いや、だから、さらっと大まかなストーリーとアリスト兄様以外の事、殆ど知らないんだって。姉貴の語りは聞いとかないとキレられるから、聞いてるふりしてただけだったから」

エイダンはそう言うと申し訳ない様な顔をして、少し俯いきながら続けた。

「何に神隠しにされたのか、何で神隠しにあったかって言うのも、その時期も、俺、聞かされた気がするんだけど、記憶になくって。でも確か、お前、婚約者や攻略対象者に断罪されるんだけど、その時に完全に闇堕ちしてラスボスになるんだ、ごめん、これくらいしか覚えてない」

さらに来たかよ。お決まりの断罪イベント。

「………いや、こっちこそごめん…。エイダンが悪い訳じゃないのに。でも、ちょっと覚悟してたのよりかなり重い、から…」

予想の遥か斜めで、しかも顔面デッドボールだ…。

「因みに、バッドエンドではどうなるの?」

恐る恐る聞いてみる。

「………まぁ、国が、滅ぶ?みたいな」

マジかよ………。

「マジかよ………。」

心と身体がシンクロ率100%である。

「いや、俺も悪かったよ。お前、知ってると思ってて。転生者だし、前世の良くある俺つえー転生漫画みたいに、何か策があるから病弱克服して、しかも最強で、だからそんなお花畑な感じなのかと思ってた」

ディスってくんじゃん…。

あぁ、エイダンは転生は転生でも、転生したら俺だけ、レベルマックス!とか、転生した最強魔法使いは、強くてニューゲームで無双する!とかそっち系が好きだったのね。

私は、令嬢ものしか読まなかったからなぁ。

うん。間違いないよ。話聞くまで特に悩みなんか無かったさ。何とかなるっしょって思ってたさ。脳内お花畑だったさ。

「神隠しとか…そんなファンタジー望んでない…」





帰りの道すがら、エイダンに補足をしてもらう。私が神隠しに合うのはゲーム開始前で、ゲーム開始時には既に悪役令嬢だったらしい。3学年目に主人公が遅れて学園に入学してからゲームが始まる。

攻略対象者には、我らがお兄様。それにお兄様の同級生の王太子殿下。私たちと同い年になる第二王子、それからエイダンも対象者らしい。あと一人か二人いるらしいが、有料大型アップデート前に、前世のエイダンは亡くなってしまったらしく未プレイだから知らないそうだ。

私は病弱で学園に通えなかった。しかし、神隠しに合い魔力過剰症を克服し学園に通い出すと言うことは、私が神隠しにあうのは、学園に通う年、10歳以降13歳未満の内にと言うことになる。

それにエイダンの言う通り、私は元気にだし、お兄様だってゲーム上とは感じが違うらしい。シナリオが変わっていても可笑しい話ではない。

言うなれば、病弱で動けなかったはずのラナーリアが、そう私が動けば動く程、ゲーム開始時時点でゲーム上のシナリオと現実に大きな齟齬が生まれると言う訳だ。

エイダンもお兄様の微笑みの為に、私の闇堕ちは大変、有り難くない事柄らしく、エイダン自身の楽しい転生ライフの為にも滅亡は困るからと、一緒に悪役令嬢&ラスボス回避に全面協力すると言ってくれた。

まぁ、抗うだけ抗うしかあるまい。

なんくるないさーだ。

先ずは、出来ることからやっていけばいい。やりたい事をやればやる程、未来が変わるという事だ。

あと婚約とかしなければいい話しだし、実際したくないし、…寧ろ学園に行かなければいいのでは?

麓に帰ったら、改めて父と母に相談しよう。

それに、もしそれが無理でも学園入学まであと4年もあるのだ。

変えてやろうじゃないか、すんなりゲーム開始なんてさせてやるもんか。動き回って引っ掻き回して、ストーリーなんてものひっくり返してやる!







更新が遅くなりました。


作中にCERO18と出てきましたが、

出てきただけで全年齢版で書きます!安心して読んでください!

いつか、番外編で、ムーンライトの方でちょっと書けたらいいなぁと思ってます。


読んでくださってありがとうございます!

楽しんでくれたら、嬉しいです。


誤字脱字、あると思います。

どうぞ、よろしくお願いします(^-^)ノ

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