今日もまだ雨は降っていた
外を見れば、今日も雨が降っている。天気予報もこのところ1週間雨ばかりだ。
じとじとと降り続ける雨に、僕の心はすっかり塞ぎ込んでいた。
それでも雨音が小さくなると、僕は首をもたげて外を見るが空はまだ分厚い灰色の雲に覆われている。
雨は嫌いだ。気圧に左右されて出てくる頭痛に、纏わりつくかのような湿気。
梅雨明けしたはずの夏に、突如降り続く長雨。
テレビをつけても大雨の影響で起きる災害の情報。
どこもかしこも、憂鬱になることしか目に入らない。
こんなはずじゃなかった、今年は違うんだと奮起したはずなのに。
仲良くなって、一緒に出掛けることもあって、誰よりもそばにいたつもりだった。
夏休みに入っても、二人で遊びたくて想いを告げたら断られた。
「嬉しいけど、……ちょっと、無理かも…」
そう言われて別れたあの日から、ずっと雨が続いている。
降りやまない雨に、すっかりやる気も削げて、学校もさぼりがちだ。
現に今も、頭は起きているのに身体はベッドに横たわったまま。
授業がなくてもサークルで集まったりしていたけれど、この雨なら練習もできない。
そう思うと、目が覚めて雨が降り続ける様子を見ては安堵する。
ずっとこのままなら、あの子に避けられて傷つく事もないだろうなと空笑いがこぼれた。
あの時、言ったのが間違ってたのか。
僕だけが楽しかったのだと勘違いしていたんだろうか。
そう何度も自問自答しては、考えるのをやめて惰眠をむさぼる。
また目が覚めたら外を見ると、雨粒が大きく音を立てていた。
時々空が光ってはゴロゴロと音が鳴り響く。
何度もそれが繰り返されて、だんだん音が大きくなってきた時のことだった。
眩しいくらいに光ったかと思うとズガガンッと音にあわせて地響きがした。
するとバツンっと音がして電気が消えた。
思わず起き上がって外を見れば、周りの光は消えている。
どうやら落雷で停電でもしたようだ、部屋は一気に薄暗くなった。
そんな日もあるさ、と僕は少しでも光が入る窓際に身を潜めた。
窓の下の壁に背をつけて、身を丸くしてぼんやりとする。
外ではまだゴロゴロと音が鳴っているが、さっきほどではない。
それに目が慣れてきたのか、薄暗い中でも特に苦痛になる事もなかった。
ぼんやりと外の音に耳を澄ませながら、目を閉じようとすると突然電子音が鳴った。
僕にとってそれは、先ほどの雷のような衝撃に相当した。
雨音の中でもはっきりと分かるそれに僕は辛くなる。
この音を発するのは「あの子」からの連絡だから。
何度か鳴って、静かになるスマホ。
手を伸ばそうか、いややめようかと戸惑う手。
しばらく葛藤して、でも急用かもしれないと言い聞かせて手に取った。
スマホを持ち上げると画面には通知が出ている。
何度かメッセージを入れたのだろう。
それでもまだ少し悩んだ後、観念してロック解除をしメッセージを見た。
メッセージは他愛もないものだった。
あっちでも停電したのだと言う、課題をやっていたのにパソコンの電源も落ちて消えたのだと。
ついてないな、とぼやいて不満げなスタンプが押されていた。
相変わらず変わらないな、と思わず鼻で笑ってしまう。
僕の告白を断ってから、まったく連絡がなかったから拒絶されたと思っていた。
でも、これを見て思い出した。
僕はなんかちょっとズレたあの子が好きだったんだってことに。
別にいいじゃないか。彼氏になれなくてもあの子に嫌われなければ。
こうやって、メッセージが来る友達でもいいじゃないか。
そう思うと、僕はこのメッセージにスタンプで返した。
今は言葉にできなくても、たとえ気遣ってくれて連絡してくれたとしてもそれでいい。
まだ降り続ける、止まない雨を見ながら、僕はおもむろに窓を開ける。
少し振り込む雨。湿っぽい空気と共に、ぶわっと暑い風が部屋に吹き込んできた。
久しぶりの外気に触れて、大きく深呼吸をして伸びをする。
いつか止んだらまた笑って過ごせるように。
長い事座りこんでいた僕は、ようやく立ち上がった。
長雨にうんざりしている中、ふと窓を開けたら匂いが変わってきて
雨が降る感じがしたり、晴れ間がでそうな感じがしたり。
そんな移り変わりが、主人公にもあるんじゃないのかなと思って書いてみました。