異変
短め。すみません
ようやくと言うべきか。
アリサに告白をした。
思った通り、即答はもらえなかった。
だが、うぬぼれかもしれないが、嫌われてはいないと思う。
あれほど勝手に囲いこもうとしたのだ。それだけでも良しとしなければいけない。
後夜祭の準備のために生徒会室に行くと、すでにグレイとレイノルドはきていた。レティシアはドレスを着るといっていたから、当分来ないだろう。
「どうしました? 何か考え事でも?」
レイノルドに声をかけられた。
「いや、なんでもない」
用意された後夜祭の計画票にめをやりながら、手順の確認をしていく。
「ルーク」
グレイが気づかわし気に俺を見る。
「なんですか?」
「その御様子では、即答はもらえなかったってことか?」
グレイは大きくため息をついた。
「予想はついたが、あまり急かして彼女を困らせないでやってくれ」
「……俺は急かす癖に」
思わず肩をすぼめた。
昨日の段階で、俺は皇太子であるグレイに暗に告白するように言われた。
アリサを護衛すると言う名目までつけて、いわばおぜん立てしてもらったようなものだ。
「ルークがトラウ嬢、いや今は、ナーザント嬢か。を大切にしているのはわかる。彼女も、ルークに心寄せているだろうとは思うけれど、彼女からみたら、ルークは雲の上の人間だろうからな」
「……そんなことはないと、最初から言っています」
アリサの才能があれば、それこそ皇族に望まれる可能性だってあるのだ。
「聞いていたとしても、納得はしていないでしょう。そうでなければ、うちの養女になるとき、あれほど悩まないと思いますよ」
レイノルドが苦笑した。
「養女になるとき、これでルークさまに手が届く! くらいの感覚だと、良かったのでしょうけれど、まじめな彼女がうちに来た決め手は、どうやら父の説得のようでしたからね」
「アリサは誰が相手でも臆することはないが、誰よりも身分差を越えられないものと思っている。また、簡単に越えようとしてはいけないとも思っていそうだ」
彼女は本当に不思議だ。
俺相手に、まっすぐに意見するくせに、どこかで絶対に越えてはならない線を引いている。
「そもそも、公爵家のルークに告白されて、舞い上がらない令嬢は珍しい」
くすくすとグレイが笑う。
「まあ、だからこそ、ルークが振り回されているのだろうけれどな」
「氷の貴公子も形無しですね」
にやにやと笑う二人に俺はいらだつ。
「いいかげんに……」
やめろと言いかけた時、不意に脳内にヴィジョンが浮かんだ。
使役精霊が発動したのだ。
女が剣を振り回している。
「くそっ、なんだ、この狼はっ」
「リゲル!」
女の声と、アリサの声がした次の瞬間、突然、ヴィジョンが途切れた。
「アリサ!」
俺は立ち上がる。あれはホールわきの細い道だ。
襲った女は、おそらくクアス・ファナック、剣術部の三年。顔に見覚えがる。
俺は生徒会室を飛び出した。
「どうしました?!」
走る俺をレイノルドが後ろから追いかけてくる。
「アリサが襲われた」
言いながら、俺は必死に使役精霊とのコンタクトを試みるが、どうしてもつながらない。
いったいどういうことだ。
わけがわからぬまま、ヴィジョンの見えたホールわきの道にたどり着く。
「アリサ!」
声を上げて呼ぶ。
返事はなく、人の姿もない。
「ルークさま」
追いついてきたレイノルドも周囲を見回しているが、何も見つけられないようだ。
「──ん?」
その時、使役精霊の気配を感じて、下を見た。
契約の石が落ちていた。




