//第1話 User
窓際の席に座りながら外を眺める。
どんよりとした曇り空。
雨も少し降っている。
じめじめと暑くて嫌になる。
代り映えのしない毎日。
何か変わらないかな。
そんなことを考えていた。
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ぼーっと授業を受けていると、放課後になっていた。
「風宮、一緒に帰ろ」
「うん、いいよ。ちょっとまって」
友達の綾城が一緒に帰ろうというので、帰り支度を済ましてしまう。
支度といっても、授業で使っていたノートパソコンを鞄にしまうだけだけど。
「OK。帰ろっか」
綾城に声をかけて、一緒に昇降口に向かう。
昇降口まで来たのはいいけど、雨降ってるな。
綾城に話しかける。
「雨降ってるね」
「ちょっとまって、今天気予測調べてみる」
綾城は眼鏡を操作しながら何かを調べているようだった。
眼鏡とはスマートグラスのことだけど、最近は眼鏡としか呼ばれないことの方が多い。
綾城が天気を調べ終わったようだった。
「あと5分で止むって」
「それじゃ、少し待ってから行こうか」
綾城の言った通り、5分すると雨が止んだ。
「風宮、行こう」
「うん」
2人で雨上がりの青空の下、駅までの道のりを歩いていく。
そんな中、綾城が話しかけてきた。
「ねえ、風宮。VRって知ってる?」
「仮想現実のこと?ゴーグルかぶるやつでしょ」
「そう。やったことは?」
「一度だけ。けど、ゴーグル重いし、触った感覚はないし、あんまり楽しめなかった」
「まあ、そうだよね。けど、フルダイブのVRだったら?」
「フルダイブって、アニメとかであるようなやつ?仮想世界に完全に入り込むような」
「そう。それが実用化されるんだって」
「そうなんだ」
「…興味薄いね」
フルダイブとか言われてもね。よくわからないし。
綾城が熱弁してくる
。
「現実と遜色ない感触や匂いや味があるんだって。しかも、仮想世界の時間経過は現実は1/100!」
「…それって、現実で8時間ダイブしたら、仮想世界では1カ月経過してるってこと?」
「そう!すごいでしょ!」
「…大丈夫なの?それ」
「大丈夫だって!ということで、次の週末行くよ」
「どこに?」
「VRダイブできる場所。ノアズアークへ!」
「ノアの箱舟って意味だよね。不穏すぎるんだけど…」
「まあ、私も一緒だし大丈夫だって!」
そんなこんなで綾城のごり押しで、仮想世界に行くことになってしまった。