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銀色の死風

「お前がユート・エスペラントか」


無骨な棍棒を持ったスキンヘッドとモヒカンの男二人組は倒れた巨木の幹に腰を下ろした少年を取り囲んだ。


「‥‥‥」


銀色の髪の少年は目もくれずパチパチと燃える焚き火を見つめている。


「おい小僧聞いてんのか?」


「‥‥‥」


黙ったままの少年にモヒカンの男は迫り棍棒を突き付けた。だが少年は変わらず焚き火を見つめたまま無言を貫いている。


「この野郎無視すんじゃねぇぞ?」


「相棒よ、こいつ本当にユート・エスペラントか? ただのガキじゃねぇか」


少年の横に立て掛けられている鞘から抜かれた大剣に燃える焚き火が写っている。


「間違いねぇよ。銀色の髪と碧い瞳にその巨大な剣、【銀色の死風】の2つ名を持つ騎士団出身のS級賞金首だ」


それを聞いた途端少年は鋭い目付きで二人の男を睨んだ。


「これ以上俺に関わるな。死にたいのか?」


「死にたい? おいおいあんまり俺らを舐めんなよ?」


モヒカンの男はスキンヘッドの男と肩を組んだ。


「スキンヘッドのハゲンとモヒカンのヨコハゲン、ギルド認定A級ハンターだ。いくらS級賞金首でもA級ハンター2人には敵わないだろ?」


男達は声を揃えて高らかに笑う。


「もう1度言う。死にたいのか?」


「腹の立つ小僧だぜ! 殺っちまえ!」


ハゲンとヨコハゲンは棍棒を振り上げた。


「な、なんで‥‥俺達が‥‥斬られてんだ‥‥‥」


胸に出来た深い傷から滴る血を拭いヨコハゲンは横で息絶えていた相棒のハゲンを見て青冷める。


「俺は聞いたぞ? 死にたいのかって」


大剣を肩に担ぎ凍りつくような眼差しで少年はヨコハゲンを見る。朦朧とする意識の中、まるで蛇に睨まれた蛙のようにヨコハゲンは後退る。


「もう1度チャンスをやろう。今すぐここから消えるか、そいつの後を追うか‥‥選ばしてやる」


少年は大剣を突き付けた。


「‥‥ば、化け物だ‥‥こいつは化け物だ!」


ヨコハゲンは滴る血を道を作りながら一目散に走り出した。


「化け物か。そうだよ、人の形をした化け物だよ」


焚き火を消し少年は森の中へ姿を消した。


ヨコハゲンは一目散に森を走った。胸には激痛が走り手でいくら押さえようと血は止めどなく流れてくる。


もうすぐ月が完全に姿を消し太陽が顔を出そうとする朝焼け。若干肌寒さを感じるが滴る汗と血にまみれながらヨコハゲンは森を出た。


「ヨコ!? どうしたんだその傷は!?」


まさに今から森へ入ろうとしていた同じギルドチームのマエハゲンとウシロハゲンはヨコハゲンの傷を見て驚く。すぐに寝かせ傷の治療に取りかかった。


「銀色の‥‥銀色の死風‥‥ユート・エスペラントは、あいつは化け物だ!」


「あいつと戦ったのか!?」


包帯を巻き付けるウシロハゲンはその名前を聞いて目を丸くした。


「何も見えなかったんだ‥‥気が付いた時には斬られてて‥‥ハゲンは殺された」


二人は顔を見合わせた。仲間であるハゲンが殺されてしまったこともそうだA級ハンターが2人かがりで手も足も出なかった事実はマエハゲンとウシロハゲンを焦燥させた。


「そう言えば聞いたことがある。そいつがなんで銀色の死風って呼ばれてるか」


ウシロハゲンはおもむろに後頭部に手をやり目を細めた。


「風ってよ、目に見えるか?」


「は? 見えねぇに決まってんだろ?」


前頭部に手をやりマエハゲンは呆れた声を上げる。


「それだよ。風が目に見えないのと一緒であいつも速さすぎて目で捉えられないんだ。でその風が吹き終わった後に待ってるのは死って誰かが言ってた」


「やっぱS級は別次元ってことか‥‥とりあえず町へ行こうぜ。ヨコの傷もちゃんと見せとかねぇと」


ヨコハゲンはマエハゲンとウシロハゲンに肩を借り町へ向け歩きだした。




















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