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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【BL】俺はお前の着せかえ人形

「コスプレパーティーだって。行こうよ、カズサ。」


「行かない。疲れた。いいよなミナトは。ミシン使うの速いもんな。もうほとんど終わってるんだろ。」


「文化祭までまだ一週間あるからいいじゃん。一緒に行こうよ。気分転換になるよ。」


「だから無理だって。」


 高校の帰りに駅前でチラシを渡された。どっかでコスプレイベントがあるらしい。でも無理だ。体力がない。


 俺カズサと恋人のミナトは服飾科の高校に通っている。服飾科は服のデザインをしたり作ったりする学科だ。

 来週は文化祭がある。メインイベント・ファッションショーに向けて、俺はウエディングドレスとタキシードを作らなければならない。


 ウエディングドレスはもう完成した。着るのはクラスのスタイルの良い女子。タキシードがまだ完成しない。


 今日は夜遅くまで学校に残ってずっとミシンをやっていた。文化祭近くになると毎年こうだ。


 モデル歩きも練習しなきゃいけないし、もう大変すぎる。寝不足だ。


「ねみー、家帰るのめんどくせー。ミナトの家泊まってっていいか?」


「フフッ。もちろんいいよ。」


 ミナトの家に向かう。ミナトの両親は仕事で世界中を周っているそうだ。お手伝いさんは昼間しかいないらしい。そう、今日はミナトの家で二人っきりの夜を過ごせる。でも眠いから何もできないけど。

 親に電話して、ミナトの家に泊まることを伝えた。


 電話の後、背の低いじーさんに話しかけられた。

「元気そうじゃのう。おぬしら。」


「あっ、魔法使いのおじいさん。」

 ミナトが返事した。


「ふぉっふぉっふぉ、覚えておったか。」


 このじーさんは美少年好きの魔法使いで、なんと千年生きてるそうだ。前回会ったときは「好きな相手を着せかえ人形サイズにしてイタズラしても怒られない魔法のふりかけ」と「魔法をとくブルーベリージャム」をくれた。


「じーさん、あのふりかけとブルーベリージャムもう無くなっちゃったんだけど、またもらえないか?」


「ふぉっふぉっふぉ、また欲しいというのか。このドスケベ野郎が。」


「いいじゃん、くれよ。くれくれ。」


「ふりかけもジャムもおいしかったから魔法がかかってなくてもいいよ。また食べたいなあ、おじいさんの手作り。」


「なんと! おぬし、いいこじゃのう! じじいはうれしいぞ!」

 じーさんは喜んだ。

「そんなに執拗に求められたらのう。何かあげないわけには、いかんのう。だが今日は何も持っていないのじゃ。全部わしの彼氏と食べてしまったのじゃ。」


「そっかあ、残念だなあ。またもらえるの楽しみにしてたのになあ。」

 ミナトがシュンとする


「ううむ。美少年におねだりされたら仕方ないのう。ふりかけは無いがの、魔法はかけられるぞっ。お主そのスケッチブックを貸せ!」


「えっ、これ?」


 俺はスケッチブックを渡した。


「ジジンプイプイ じじじのジジー!」

 スケッチブックがキラキラ光った。


「じーさん、なにやった?」


「今のは呪文じゃ。このスケッチブックに魔法をかけた。これに服の絵を描け。描いた後そのページを開いたまま、相手の頭を叩くと描いた服を着せることができる。どうじゃ、良い魔法じゃろう? 好きな男にしか効かないのじゃ。なんでも好きな格好させてよいのじゃよ。ふぉっふぉっふぉ。」

 じーさんは片方の口角をあげてニヤリとした。


「絵描かなきゃいけないのか。面倒だな。スマホの画像を相手に向けて、カシャッとボタン押せば着せられるとか簡単にできないのか?」


「……………なんと! ナイスアイデアじゃ! だがもうワシの魔力切れじゃ。今日はもう魔法は使えん! さらばじゃ!」

 そう言ってじーさんは、ピューっと走って消えた。


「相変わらず走るの早いな。元気で何よりだ。」





 ミナトの家に着いた。


「ねえ、さっきの魔法のスケッチブック試そうよ。」ミナトが言う。


「えー、ねみーよ。」あくびが出る。


「二人だけのコスプレパーティー、しよ。」


「…………しょうがねーな。でも男のコスプレって何がある?」


「板前とか好きだよ。」


「しぶいな。和服萌えってやつか? ってもう描いてるのか?」


 ミナトがスケッチブックに絵を描き始めた。


「そうそう。あと軍服もかっこいいよね。カズサは背が高いから何でも似合うと思う。」


「いや、かっこいいだなんて。改めて言われると照れるな。」


「軍服が、だよ。」


「なんだ……。」


「カズサはどんな制服が好き?」


「えーと、シシャモ鉄道の駅員の制服だな。おうど色の。」


「おうど色って。ハハ、キャメルでしょ。」


「違う。あれは、おうど色だ。キャメルとはちょっと違う。小さい頃からかっこいいなって思ってたんだ。ちなみにキャメルはフランス語でシャモーだ。」


「何それ。」


「豆知識だ。あと駅前のコンビニの制服もいいな。黒地に紫のラインの。」


「そこでバイトすればいいじゃん。もっと派手なコスプレない?」


「うーん、ミナトはテニスのユニフォームとか男の看護師とか似合いそうだな。」


「あっ、そういうイメージなんだ。」


「うん、爽やかでやさしい感じ。あと白衣もいいなマッドサイエンティストみたいで。」


「マッド……? なにそれ?」


「アブナイ化学者だ。ピッタリだろ?」


「フハハッ。そんなこと言ってると、勝手に着替えさせちゃうよ!」



 ポンッとスケッチブックで頭を叩かれた。



「うわっ!」



 俺の着てる服がみるみるうちに変化する。



「すごい、ホントに魔法なんだね。」


「これすごいな! ファッションショーの服これで作れないかな?」


「それはだめ。ちゃんと作って。オレはちゃんとカズサが着るやつ作ってるんだから。…………文化祭終わったら一緒に写真取ろうね。」


「ああ、お互いタキシードでな。」

 俺が作ってるのはミナトが着るタキシードだ。ミナトが作ってるのは俺が着る分。自分以外の人を採寸して服を作るのが課題だ。


「結婚式みたいにね。」


「ミナト………。」

 ミナトを抱き寄せる。

「お前、こんな格好好きなのか?」


「実演販売のお兄さんみたいでいいでしょ? ワイシャツにエプロン好きなんだよね。エプロン萌えいいよね。」


「ちがう、そうじゃないっ。」


「似合うよ。」


「なんでズボン描いてくれなかったんだ!」


 俺は裸にワイシャツとエプロンだけ着せられた。


「フッ、ヘンタイ。」


「お前がだ!」



おしまい







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