秋3
放課後、帰ろうとした佐々木は腕を掴まれて、トイレの個室に閉じ込められた。
「あんたのせいで、私たちの学校生活は滅茶苦茶なんだよ!」「いつもやって来た事を自分が受けるのってどんな気分(笑)」
複数の女子が扉越しに閉じ込められた佐々木に罵声を飛ばして、水の入ったバケツが天から佐々木に降りかかる。
歯をグッと噛みしめる佐々木は、罵声を飛ばしている奴らを知っていた。
彼女らは元々佐々木の友だちだった奴らだ。仲が良かったが、佐々木に嫌われてカースト最下位に転落した者たち。
何度か冷たい水を掛けられてから佐々木はまた腕を掴まれて校舎裏に連れていかれる。
「何か言ってみなさいよ!!」
壁に追いやられた佐々木の胸倉を掴む一人の女子。彼女は高校二年から仲が良かったが、ある理由をきっかけに佐々木に嫌われた。
だいたい一つの理由で佐々木は人を嫌い、その者たちに言う。『あんた嫌いだわ』って。そう言われたら最後、彼女らはカースト最下位の片道切符を渡されることとなる。
学生も社会人も共通で、その場の立ち位置は今後の物事を進めるのに重要な事である。それが転落するというのはある意味死ぬのと一緒の事ではないだろうか。
佐々木に憎しみや怒りの声で罵倒している者たちは先程も言ったが、片道切符をもらった者であり、『佐々木被害者の会』である。
独りでは何も出来なくても複数人集まれば気持ちや勢いは膨らむ。結果、今の惨状が生まれたのだ。けれど佐々木は屈しない。胸倉を掴まれて壁に押しやられているけど、
「うっさいわね。ばーか」佐々木はニヤリと笑って、唾を顔に飛ばす。
「――あんた!!!」
最高の侮辱行為に血管をぶちぎった女子たちが、思いっきり佐々木の頬を叩いた。パンっと甲高い音が響くと同時に女子たちの中で何かが吹っ切れる。
そこからは暴力の嵐だ。フラフラになる佐々木を二人の女子が押さえてビンタして髪を引っ張って、また叩いて。そんな事が何度も何度も繰り返された。
「あんたのその顔、ムカつくのよ! いつも人を見下すような目しやがって!」
佐々木の屈しない力強い瞳に一人の女子がポケットからカッターを取り出す。
やりすぎの光景に周りの女子が少し戸惑うけど、場の空気が完全に取り込んでいる。誰もがヤバいと思うものの口を開く者は居なかった。
カッターを持つ女子の手が震えている。彼女もまた勢いに呑み込まれて引くに引けないのだ。何よりもこれだけの事をされても光を宿している佐々木の顔が気にくわなかったはずだ。
彼女は「アアアアアァ!!!」と尖った叫び声を上げて、鋭利な刃を持つカッターで佐々木の顔を襲う。
――鮮血が無表情の地面に零れ落ちる。
「あんた……」
「何をしているのですか」
カッターの刃を握りしめて立つ――千早がそこには居た。




