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将来の夢はヒーローです。  作者: 死希
交差する夏
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夏祭り4

しばらく泣いて泣きまくった鈴峰と千早はお互いに支え合うように立ちあがった。

 気づけば二人は目元を真っ赤にしており、グスンと泣き止んでも鼻を鳴らしていた。

「良かった、本当に」

「富田君。ありがとう。わたしをここに連れて来てくれて」

「ううん、そんな事。俺の方こそ色々とありがとうね。いっぱい助けてもらったから。少しは力になれて良かったよ」

 綾人の胸がくすぐったくなって、ムズムズした。

口元が自然とにやけてそれを隠すのが大変だった。

「私からもありがとうございます。富田さん、仙田さん。正直まだ気が動転してます。けれどあなたたちにはお礼を言わないと行けないと思いました。ありがとうございます」

 千早は相変わらず無表情であって言葉も淡々としていた。けれど千早の今の言葉に小さな温かさを感じたのは、綾人の勘違いでは無いはずだ。

「んじゃ行くか。祭り。終わっちまうぞ」

 勝喜は頭の後ろで腕を組んで背中で言った。

「だね」と鈴峰が答えて綾人たちは人混みに溶け込んでいく。


 どこにでもいる高校生が祭りを楽しんだ。

 射的にチョコバナナに輪投げ。それからイカゲソにお好み焼きにリンゴ飴。射的は鈴峰がめちゃくちゃ上手くて、勝喜と勝負してボロ勝ちでピースサインフィニッシュを決めた。ちなみにビリは綾人だった。

 金魚すくいは勝喜の十八番だが、まさかの強敵に千早が名乗り出た。たった一分で十五匹以上を機械のような無の精神で取る姿に、店主が泣いていた。ちなみにビリは綾人。

 勝喜が先頭を歩いて中間ぐらいに綾人。綾人の後ろで鈴峰と千早が何かを話している。うっすらと横目で確認すると、二人は何かぎこちなくて少し不安になるけど、きっと大丈夫って少しの安心もした。

 お互いにまだ壊れてしまった距離をどう元通りにするのか話し合い中なのだろう。

 鈴峰は途中、綾人の隣を歩いたり、勝喜の隣で楽し気に話したり、色々と忙しく動きながらその手にはたくさんの食べ物を持っていた。

 綾人も千早と少し話したけど、さっきの涙が嘘のようにいつもの千早で少しだけホッとしたような寂しいような気持ちだった。

 途中、勝喜と鈴峰が先頭で真剣な顔で何かを話をしていたけど、一体何の話をしていたのか、少しだけ気になる。

 祭りを楽しむ事一時間ぐらい。綾人と勝喜が言葉を交わすことは無かった。 

 ババン!!!

 和気あいあいとそれぞれの足取りで歩いている人たちを一斉に止めて、その視線を独り占めした欲張りな音の正体は空から聴こえたものだった。

 周りの人たちが空を仰ぐのに合わせて綾人たちも星が飾る夜空を仰ぐ。

 闇が支配する舞台を飾る星々たち。そして主役の満月。けれど今日だけは主役が二人居る。

 月の神々しい光に負けじと、一瞬の命を世界に伝えようと言わんばかりに夜空に大きく咲いた一凛の花。それは連鎖するように一瞬の命を紡いで行き、無限の時間を作り上げる。

「花火だ!」

 ボソッと目をキラキラさせて呟く鈴峰。

 この夏まつり定番の花火だ。

 数千発の花火が短い時間だけ世界を輝かせる。心に響き渡らない人はいないはずだ。

 しばらく綾人は久しぶりの花火に見惚れてしまった。

 一瞬の時間を生きる花火は誰にも邪魔されず、自分の全てをさらけ出すように生き生きとしている。そんな花火を見ていると少しだけ自分を覆っていた将来の不安が薄れていく。

 頑張らなきゃ。という気持ちが空気と共に体内を洗浄してくれた気がした。

「千早……さん?」

 綾人は地上に視線を戻す。周りの人たちは未だに花火に見惚れていて幸せな表情をしている。

 綾人は何かに気付いて視線を泳がせる。先ほどまで綾人の近くにいた千早の姿が消えていた。

「鈴峰さん、千早さんは、それと……勝喜も?」

「どこ行っちゃたんだろうね。二人とも。はぐれちゃったかな」

 鈴峰はきょろきょろ探しているけど、あんまり心配していない様子だ。

 花火の音が耳をくすぐる真夏の祭り。どこかで鳴いているコオロギの声を聞きながら綾人は、嫌な予感がしてならなかった。


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