夏祭り3
目の前で泣く二人は一言で言えば幸せそうだった。
シンプルな幸せではない。そこに至るまでにお互いが抱えた苦労とか、すれ違いとか、様々な気持が沢山ぶつかって傷ついて、そして今、目の前で一つになったような。
二人の過去に何があったのか知らない勝喜でも、壮絶な過去があった事は容易に理解出来る。
横目でこの状況を作り上げた演出家の綾人を捉える。
いつも弱々しくてハッキリしなくて、けれど優しい奴。普段は勝喜の意見に頷く事ばかりのこいつが初めて勝喜に牙を剥いた。
最初は驚いたよ。すげぇ。んで思った。絶対に失敗するって。
初めてこいつが自分の意見を強く押して来たから。しかも失敗しそうな意見をあたかも大丈夫って根性論みたいな見えないモノで押して来たからムカついた。
今日は勝喜にとっても大事な日――だから邪魔をして欲しくなかった。
結果、綾人の推し通した『鈴峰と再会』という意見は目の先の光景となった。
千早が、決壊したダムのように崩れ落ち、全ての気持ちを吐き出している。その様子は見た事もないし、多分勝喜にも綾人にも壊す事の出来なかったことだろう。
初めて千早の本心を見て正直嬉しかった。けど、
勝喜は無意識に自分の胸が痛くて服をギュッと握りしめた。
だけど嬉しくない。
この状況を作ったのは綾人なんだから。
勝喜が失敗すると思った未来ではなく、鈴峰にとっても千早にとっても、そして綾人にとっても見たかった最高の未来が実現した。
勝喜だけがいなかった。また。
綾人を見ると苦しくなってつい強く当たってしまう。
勝喜の方が千早の事を好きなのに。その気持ちに早く気付いたのに。自分なりに頑張って先を歩んだのに。
けど、けど――いつも先にいるのは綾人だった。
千早の秘密も、鈴峰との過去も。そして今の状況を作ったのも。
全部、全部、全部、綾人が先を歩いている。
悔しくて、苦しくて、見えない何かが勝喜の心を刺して傷つけて。無意識にもそれら全部を綾人のせいにして。気づいたら綾人を突き放している自分がいた。
いつからこんな嫌な奴になっちまったのか。分かっている。分かっているけど、自分の理不尽さとか弱さとか薄々気付いているけど、だけど勝喜はまだ大人じゃない。どこにでもいる未熟な高校生なのだ。
気持ちに気づいていても元通りの関係にすぐ戻せるほど勝喜はまだ大人じゃない。
勝喜は握り拳に力を入れて、千早と鈴峰を力強い目で見てから、ほっとした表情の綾人を睨んで心の中の自分に言い切る。
――俺も負けない。




