鈴峰の心境
静かな来客者によってカーテンがなびくと同時に鈴峰 美空のスマホが点灯する。寝っ転が
ったままの鈴峰は横目でスマホの場所を確認して手に取った。
『何とかテスト勝ったぞ!』
『何と明日、千早さんと遊ぶことになりました!』
最近友だちになった二人と鈴峰を入れた三人のグループラインが賑やかに音を鳴らす。
どうやら夏海とのテスト対決に勝利したようで、富田と仙田の二人が九割を超えたテスト用
紙を持って嬉しそうにピースをしている写真が送られて来た。
チャットを鈴峰も何度か返して、色々と事情を把握する。
明日、二人はテストの約束を利用して夏海と食事に行くようだ。そこで何とか仲良くなって
これから先のきっかけを作る予定だそうだ。
多分、元気で明るい仙田を中心に行動するのだろうけど、きっと成功するんじゃないかって
鈴峰は根拠のない自信があった。
何と言うか二人は特別だ。変な意味ではないけど、話を聞く限り夏海の態度は普通の人から
見たら最低最悪だ。見た目とかで多少補正がかかったとしても、無関心で冷たい態度を幾度と
なく取られれば声を掛ける事は自然と無くなるはずだが、二人は夏海のどこに惹かれているの
か、うっすらと予想はつくけどそれでも声を掛け続ける辺り、二人は変わり者と言っても過言
じゃない。
二人には感謝している。特に富田には本当に感謝している。夏海を思って、夏海の事を色々
と気にかけてくれている。おかげで鈴峰は、富田や仙田と出会って間接的に夏海と繋がる事が
出来ている。
――間接的に。
凄く嬉しい事なんだよ。本人の意志ではないとはいえ、学校の人たち、それも素敵な二人と
夏海が遊ぶことは。本当に本当に嬉しい事なんだけど、
鈴峰は少し顔を曇らせた。
けど、少し寂しい。ううん、違う。凄く寂しくて切なくて悔しくて。今にも胸が張り裂けそ
うで辛かった。
だって自分はそこには居ないから。自分はただ見ている事しか出来ない。例え夏海が変わり
始めたとしてもそれは二人のおかげで、自分の存在はきっと忘れられてしまっている。
それが辛くて、苦しい。
中学の時、鈴峰はいじめられていた。鈴峰の明るい性格は男子たちとも仲良くなりやすく、
それを妬んだ女子たちが次第に多くなり、不登校になる程の大きないじめとなった。
けれどある日、そんな悪夢は消え去った。
同じクラスメイトだった夏海がそれを先生に伝え、学年会議に発展した結果、いじめっ子た
ちと鈴峰は一切の接触禁止が決まり、鈴峰は徐々に学校に通い始めて、復帰に成功する。
それからだ。夏海と仲良くなったのは。本当に毎日毎日、お互いに助け合って、笑い合って、
たまに喧嘩したけど、放課後もずっと一緒に居て、まさに親友――だった。
いつまでも続くと思っていたそんな日常は、存在すら都市伝説と言われていたモノに一瞬に
して奪われてしまった。
何とかこうして夏海と繋がってはいるけど、本人はそれを知らないし、彼女の頭にはきっと
自分はもう居ない。一人っきりになると弱った自分がどうしても出てしまう。
頑張るけど、だけどどんなに頑張っても結局、鈴峰は蚊帳の外なのだ。
だから悔しくて辛い思いが心を蝕むけど、それでも自分が二人に頼んだ事は最後まで成し遂
げないと行けない。
鈴峰は『夏海に変な事しないでね。それと撮れたらスリーショットおなしゃす!』と気持ち
を悟られないように送信する。
チャットを閉じて、カメラフォルダーを開く。
最近見る回数が増えた昔の思い出を何度も何度も見返して鈴峰は瞳に涙を浮かべる。




