初めての戦争で見た空中戦艦
戦闘を知らせるベルが鳴り響き、本能的に持ち場に滑り込んだ。漏れた話を聞けば反航戦だ。こっちとあっちの飛行戦艦が逆向きに進んでいる形だ、古の一騎打ちと同じで撃ち合うのだ。砲塔内で、速射準備に砲弾を抱えていた。周囲を薄い装甲で囲われていて外はわからない。だが、敵が近いのだ、ということは微かに伝わる足からの振動でわかった、抑えていた気分が高揚した。装甲越しにも伝わる、大発動機のプロペラが回る轟音。統制射撃班長の号令で砲座がガクンと下がり、新しい砲弾を渡す繰り返しだ。当たっているのかなんてわからなかった。命令、行動、待機の繰り返し。「電気がこない!」信管調整の機械が止まったらしい。応急修理をするが、それを報告する為に伝令に走った。外では、戦いが始まる前までは人間だったものが四散していて、飛行戦艦の風にそれらが赤く線を引きながら飛ばされていく。戦友を掻き分け、偶然に敵の飛行戦艦を見た。巨大で、雲と同じように空を漂っている装甲化されたそれは、砲口をこちらに全て向けている。戦争にいて、初めて戦争を見た。