7.治療が終わった様ですよ?
薄暗い部屋の中、そこにある天蓋付きベッドの中で寝る一人の幼…少女がいた
「んぅ~ん……んにゅぅ……」
「ん、そろそろ目が覚めそう」
銀髪の女性はそう言ってベッドの横に行き、少女の顔をその赤い瞳で覗き込んだ。
「んん……ふぁ~あ、よく寝たぁ」
目を覚ました少女はゆっくりと目を開け、見たことのない景色に目だけを動かしてきょろきょろと周りを見ていた。
そして途中で赤い二つの瞳と目が合い
「知らない美人さんだ……」
「おはよう、おちびちゃん」
「んぅ~、おはおーございます」
その挨拶に微笑ましさを感じ、かすかに微笑みを浮かべている赤い瞳に肩に掛かる位の長さの銀髪の女性。
そんな女性をみて、寝起きの少女はなぜか顔を赤らめるのだったが、次の瞬間
「はっ、ここはいつ?今は誰?私は何処??」
「ここは寝室でもうすぐお昼、今はもうすぐお昼でわたしはシルヴィア、あなたはおちびちゃんでベッドの中」
照れ隠しのためか、どこかずれた発言をした少女だったが
「むぅ、素で返された……えっと、おはようございます?」
「おはよう、体調はどう?どこか痛い所とか調子のおかしい所はある?」
そう問われ、布団の中でもぞもぞと体をあちこち触り確認してみる。
「あれ、ない?ないないない、着けてないっ」
「治療した後だから、バスローブだけ着せてある。下着はこの後お風呂に「貞操帯が無いーーーー」入った後に着けるといい」
その発言に、下着より貞操帯なんだ……と思ったシルヴィアだったが
「前着けていたのは長期的には体への負担が大きいし、衛生的にも良くないと判断したので新しい物に付け替えた」
「ほむ」
そして、片手をおでこに当てて何かを考えていたかと思うと
「はっ、そうだ。突然頭の中に声がして、いろいろお願いされて……その後どうなったんだっけ?」
「記憶が混乱しているようね。今ファセット様を呼ぶから、そのまま楽にしていて」
そう言うとシルヴィアと名乗った女性は左腕に付けている銀色の腕輪に対して何かを語りかけていた。
どうやら何処かに少女が起きたことを伝えているようだ。
その後、シルヴィアに体を起こすのを手伝ってもらい、ヘッドボードに寄り掛からせてもらった。
少しすると部屋のドアが開き二人の女性が入ってきた。
入ってきのは、黒い瞳に腰に届きそうなほどの長い黒髪の女性と青い瞳に長い金髪をポニーテールにまとめている女性だった。
ちなみにこの金髪の女性、かなりの胸部装甲の持ち主のようだ。
黒髪の方の女性が近くまで来て
「無事起きたようですね、小さき子よ」
「あ、その言い方、あの時の人?」
「覚えていてくれましたか」
黒髪の女性は、少女が覚えていた事が嬉しかったのか、柔らかい微笑みを浮かべた。
「あー、うん。まぁ、結構強烈な体験だったし?」
「とりあえず自己紹介を、するわね?私はファセット、ファセット・モース・プライモディアルと言うのよ?あなたを、ここに連れてきた張本人、なのよ?私の事は是非『お姉ちゃん』と、呼んでほしいのよ?」
なんだろ?ファセット様?お姉ちゃん?の口調が急に砕けたというか、ちょっと独特の口調になった。
「そしてこの子は」
そう言うと銀髪の女性が
「シルヴィア・ステワルド・セバス」
そこには起きた時から側にいた、赤い瞳に肩に掛かる位の長さの銀髪の女性がいた。
「そしてこっちの金髪の子は」
「サリナ・ケープエル・スコーランよ、よろしくねおちびちゃん。無事目が覚めてよかったわ」
こんどはファセット様と一緒に入ってきた金髪の女性が自己紹介をした。
私もあいさつした方が良いと思い
「初めまして。深山 知美です」
と、ベッドの上に座った状態だが、軽くお辞儀をして言った。
「さて、シルヴィアにもすでに聞かれたと思うのだけど?体調の方はどう?どこかおかしい所とかは無いかしら?」
「それなんですけど……」
「どこか調子の悪い所でもあるのかしら?」
ちょっと恥ずかしいけれど、思い切って気になったことを言ってみる。
「えっと、その……新しい貞操帯がなんか、変というかこれ本当に貞操帯?」
「それについては、お風呂で詳しい機能説明を、しようと思うのよ?小さき子が以前着けていたものよりもはるかに頑丈なので安心して?」
自己紹介したのに小さき子と言われるのはちょっと寂しいな。そう思ったのが顔に出たのか
「何か、表情が優れない様に見えるけど、新しい物だと不安なのかしら?」
あぁ、そっちに誤解されちゃったか。これは、はっきり言った方が良いよね?
「いあ、んと……その小さき子っていう呼び方が」
「そうね、それについて説明をするわね?小さき子のいた所と比べてこちらの人々は平均的に背が大きいのよ?というか、小さき子のいた星の人々が私たちから見て、背が小さいのよ?」
「えぇ~、そうなの?てか、どのくらいおっきいの?」
「そうね、一般的な成人男性の平均身長が190cm~2m位、女性で170~180cm位、だったかしら?」
「ふえぇぇぇ、ちょ、大きすぎない?」
「あなたから見るとそうなのかしら?そういうわけで、11歳で140cm位と言うのはかなり小さいほうなのよ?」
「ん?11歳?私は13歳だけど?」
わたしの年を勘違いされている様なので訂正すると
「あなたのいた星の暦では、13歳だったかしら?こちらには銀河標準歴と言うのがあるのね?銀河標準歴だと、あなたの年齢は11歳になるのよ?」
「ちなみに15歳で成人よ。おちびちゃんのいた星だと18歳位になるのかな?」
とサリナさんがフォローしてくれた。
「んー、13歳で140cmは、特別小さかったわけでも、なかった…ような?」
確かに回りと比べると少し、すこーし小さい方だったけど、特別小さいというほどではないと思うのー。
「あぁ、こちらの人達で11歳、あなたのいた所でいう13歳だと、160cm位が普通なのよ?」
「にゃんですとぉーーーー」
ちょ、こっちの人たち成長早くない?だから成人するとそんなにおっきくなるのね。
「ふふふ、だから小さき子、なのよ?」
なるほど、まさしく的確な表現だったわけか、とは言え
「むぅ、バカにされてるわけじゃないってのは判ったけど、なんだろうこの残念感……」
「あら?可愛らしくていいと思うのよ?」
「か、可愛いっ……むぅ、そいうのずるいと思うのっ」
そんな言葉じゃごまかされないんだからっ
「そうね、すでに自己紹介も済んだわけだし?いつまでも小さき子というのも、良くないわね?それじゃおちびちゃんと、呼ぶようにしてもいいかしら?」
すでにサリナさんとシルヴィアさんはおちびちゃん呼びが定着しているっぽいのだけど……
「そ、そこは知美って、名前で呼んでくれるところじゃないの?」
「知美ちゃんって呼ぶのも、それはそれで良さそうなのよ?でも私としては、愛情を込めて『おちびちゃん』って、呼びたいのよ?だめかしら?」
「そういわれると、だめとは、いいずらい……かな?」
実際仲の良い友達からは「おちびちゃん」と呼ばれていたので、呼ばれ慣れている呼び方ではある。
「それとおちびちゃんは、わたしの事を是非『お姉ちゃん』って呼んでね?もう私とおちびちゃんは家族なのよ?」
「むー、そういわれると言い返せない……かな?あと、お、お姉ちゃん…ですか?それに、家族?」
家族、家族かぁ。私にはすでに家族と呼べる人はいないので、こちらで新しい生活を始めるのに私の事を家族と言ってくれる人がいるのはとても嬉しかった。
それにお姉ちゃんか、私ひとりっ子だったからお姉ちゃんには憧れがあったんだよね。
ちょっと変わったしゃべり方のお姉ちゃんだけどね!
「わたしも普段はおちびちゃんって呼ばせてもらうねー。あ、でも人前ではちゃんと知美様って呼ぶから安心してね!あと、私の事は『サリナ』って呼び捨てでいいわよ」
なんか、突然サリナさんから爆弾発言が来ました!
「えぇ、知美様って、様ってなんでー?あと、呼び捨てはちょっと……なので、サリナさんって呼ばせてせてもらいますね」
「私もおちびちゃんと呼ばせてもらう。人前ではお嬢様?私の事はシルヴィアと呼んで」
シルヴィアさんからも爆弾発言が!?
「ふえぇぇぇ、お嬢様呼び来ましたーーー!って、なんでお嬢様?私なんて平凡……とはちょっと違ったけど、一般家庭の庶民の出だよ!?えっと、シルヴィアさんですね」
「まぁ、その辺についてはね、色々とあるのよ?」
「その色々について説明は、してもらえるのかな?」
「そうね?その辺の説明を先にした方が良いかしら?」
そして、説明を聞いたところ
・サリナさんについては、その種族特性で生涯でただ一人を主と決め、生涯にわたってその人の身の回りのお世話をしたり、面倒を見る事に生き甲斐を感じるらしい。
・そして、私の今までの生きざま?生涯?を知ったのと、この後の運命?命運?するべきこと?を思い、私の身の回りの世話をしたいという感情が爆発して、わたしを主として今後仕えてくれるとかなんとか。
・「決して、ドジそうとか、ついうっかりとかの理由で色々やらかしそうで、お世話のし甲斐がありそうと思ったわけではないですよ?」とはサリナさん本人から良い笑顔で言われました!(これ、絶対そう思ってるって事だよね?)
・シルヴィアさんについても、サリナさんと同じように種族特性として生涯でただ一人を主と決め、その人を生涯にわたって護る事に生き甲斐を感じるらしい。
・そして、シルヴィアさんもサリナさんと一緒で私の事を知って、わたしを主として認めて尽くしてくれることになったとかなんとか(私なんかでいいのだろうか?)
お姉ちゃんがシルヴィアさんの事を説明してくれている時にシルヴィアさんから「可愛いは正義」とか聞こえてきたから、子供好きな人なのかな?
結局はどちらも主と決めた相手に忠誠というか、専属で尽くす事を誓って、その専属になった人にとことん尽くすのが生き甲斐な人達なので、変に気を遣わずに頼ると良いと言われた。
私としても連れて来られたばかりだし、こっちの常識とかそういった事についても全く判らない。
知り合いと呼べる人も頼ることが出来るのもこの三人以外いないので、尽くすといわれるのはちょっと戸惑っちゃうけど、身の回りの面倒を見てくれたり色々と教えてもらえるのは正直助かるのでその申し出はありがたく受け入れることにした。
特に足がこんなだしね、一人での生活って正直無理があるのよね。
それに家族、家族かぁ……いきなり私に家族が三人も増えるなんて、こっちに来て本当に良かった。
私に家族は一人もいなかったから、生涯一緒にいてくれる、家族のように思ってほしいと言ってくれた事に対してとても心が温かくなって涙が出てしまった。
ファセット様……ううん、おねえちゃんはそんな私を見て、そっと私の頭を抱きしめて泣き止むまで頭をなで続けて慰めてくれた。
あぁ、お姉ちゃんが私をこっちに連れてくる時に、私が生活に困らないように色々を便宜を図ってくれるっていうのは、こういう事だったのかな?
ちなみに、途中でお姉ちゃんの口調が変わったことを聞いてみた所、サリナさんから
「あぁ、ファセット様は特に親しい人たち相手だとこの口調なんですよ。おちびちゃんの目が覚めるまでは心配していたせいか、ずーっとよそ行きの口調だったけどね」
と教えてもらえました。
さて、この後の予定として、まずお風呂に入れてくれるらしい。
なんでも一週間ほど医療ポッドの中で治療用の薬液付けだったらしく、その後もシャワー的なもので軽く全身を流したけなんだとか。
一週間もお風呂に入ってないと聞いてしまった後は、急に体がむず痒い気がしてきたので二つ返事で了解しました。
お風呂に入った後は新しい貞操帯をもらって、そのあとにお昼ごはんを食べて、今後についていろいろと説明してくれるらしい。
ということで、おっふろーーーー!