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6.何やら不穏な会話が!?(改行修正済)



 シルヴィアが簡易ベッドに少女を乗せて寝室へ連れて行ったその後、治療室に残った二人はというと



「それで、おちびちゃんのルースは結局どうなんですか?」

 おちびちゃんのおでこと胸元にはすでにかなり成長したルースが存在していた。

「それについては予想以上の成果が出た、という所でしょうか?予想をはるかに上回る適合性の高さです。硬度の方も予想通り硬度10に到達するでしょう。ただ、これだと能力が高すぎて制御に失敗しないかが逆に心配になりますね。さすがに小さき子のために用意している船については大丈夫だと思いますが、一般的な船に使用されている様な普通のジェネレーターだと下手に制御に失敗すると供給エネルギー過剰で暴走させるか、最悪吹き飛ばす可能性も否定できません」

「そ、そこまでなんですか?」

「まぁ、普通の船を操縦する機会があるのかも判らないですし、その辺は大丈夫と思いましょう」


「で、ファセット様。おちびちゃんのルースなんですけど、そんなにすごいんですか?おでこと胸元のダブルで、大きさ的にもかなりの大きさがありましたし、硬度も10と言う事でしたけど、それでもジェネレータを吹き飛ばすほどの出力が出るとは思えません」

 それにしても、驚くべきはファセット様からの直接の加護だった。

 普通は加護を与える施設での簡易的な加護を9歳の時に受けた時にルースが発現し、その後一月ほどをかけて徐々に成長しながら硬くなっていくのだが、おちびちゃんの場合はすでにほぼ成長しきっているように見える。


「あぁ、あなたは気が付かなかったのですね?そうですね、あれの存在は絶えて久しいですし、判らないのも仕方がないですね」

「と、いいますと?」


「胸元のルースですけど、中に別のルースが入っていたのは気がつきましたか?」

「ルースの中に別のルース、ですか?いえ、まったく気が付きませんでした」

「まぁ、ルースの中にルースが入っているとか、普通は思いませんしね。気が付かないのもしかたないでしょうね」

「んん?どういう事でしょう?それって結局1つのルースなんじゃないんですか?それとももしかして、ルースの中に別の硬度のルースが入っているという事ですか?」

「その通りです。小さき子の胸元のルースは硬度10、その中に超硬度の別のルースが内包されていました。もっと、見た目に関してはどちらもまったく同じですし、ほぼ同化しているので一見しただけでは判らないと思いますけどね」


 ガラスの中に別のガラスが埋まっている様なものなのだろうか?もしくは、水の中に気泡等のない完全に透明な氷を入れてその水を凍らせた感じ?

「なるほど、それはさすがに見ても判らなさそうですね。ちなみにその中のルースはどの位の大きさなんですか?」

「そうねです、この感じだと、最終的には20カラットほどになると思いますよ?」

「20カラットですか?それだと言うほど大した事はないのでは?」

 一般的なルースの大きさは1カラットから100カラットほど、よっぽど大きくても200カラットほどまでで、それ以上のサイズの物となると国に数人いるかどうかというレベルだ。20カラットと言うのは平均的な大きさでしかないだろう。

 ちなみにおちびちゃんのルースは、おでこ物は100カラット、サイズで言うと縦3cm横2cmほどの楕円型、胸元の物は特に大きくて300カラット、縦5cm横3cmほどもある涙滴型だった。


「そう思いますよね?でもあれは、エネルギーの変換効率に関しては普通のルースとは全の別物なのですよ」

「別物……と言いますと?」

「先ほども言いましたが、あれの硬度は10を超える超硬度なのです。そのエネルギー変換効率は、硬度10の実に数十倍にも及びます」

「えっ?硬度10の数十倍って……そんなものが存在するんですか?」


「存在するというか、存在していたというか……まだ私達モース星人が本来の肉体を持っていた時、この身に宿していた原初のルースと言われていた物がそれですね。そう、はるか昔にはあれと同じ物が私にもあったのです。実に懐かしい感覚です」

「え?たしかそれって、他の種族には一度として現れた事が無かったはずじゃ?」

「そうですね。今までわたし達モース星人以外には一度も現れた事は無かったですね。そして、私たちが本来の肉体を失った後はこの世から失われていた物でもあります」


「それが今、この銀河の危機によって再びこの世に現れた。これはそういう事なのでしょうか?」

「どうなのでしょうね?宇宙の、大いなる意思によるものなのか、はたまた偶然の産物なのかはわかりません。とりあえず、あれの存在は世間には秘密にしておくのが良いと思います。もっとも、世間に出回っている計測器ではあれの存在は検知も計測もできないでしょうし、まさかルースの中に別のルースがあるだなんてだれも思わないでしょうしね」

「秘密に……ですか?」

「計測できないということは言わなければ誰にも判らない、という事なのよ?ふふふ、せっかくだから小さき子本人にも内緒にしておきましょうか。あ、シルヴィアには一応伝えておいた方が良いですね」


「ファセット様、それは意地が悪いんじゃ?」

「大丈夫だと思いますよ?知らなければ他人に知られることも無いのですからね。そうすれば騒ぎになる事も無い。もし知られたら、国同士で小さき子の取り合いになるかも知れないですからね。それに、普通にしている分には周りのルースの力は引き出せても、中心にあるあのルースの力は引き出せないと思いますよ?」


「おちびちゃんを護るため……なんですね」

「いえ、その方が面白そうだと思いましたので。ピンチに陥った時に引き出される隠された力って、ロマンがると思いませんか?うふふふふ……」



 そう言って、屈託のない笑顔を浮かべるファセットであった。



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