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5.治療を受けましたよ?(改行修正済)



 おちびちゃんの治療を始めてから二週間が経ち、いまはファセット様のお屋敷にいる。



 おちびちゃんの治療の経過は良好で、もうすぐ医療ポッドでの治療も完了するだろう。

 現在ファセット様のお屋敷にある医療室には、私の他にファセット様とシルヴィアがいておちびちゃんの治療が終わるのを待っていた。


「さて、小さき子の治療はもうすぐ終わりそうですね」

「待ってた。いよいよおちびちゃんとお話ができる」

 シルヴィアはおちびちゃんとお話したくて仕方ないようだ。


 普段は感情が無いのではないかと言うほど表情を変えないのに、今は珍しく嬉しそうな表情をしている。

「あ、治療は終わるけどまだしばらくは寝たままだから、まだ会話は出来ないわよ?目が覚めるのは、医療ポッドから出てから4~5時間後になると思うわ」

「残念。でもおちびちゃんの健康第一だから我慢する」

 あと数時間で目が覚めるのだからそこまで残念そうにしないでほしい。


「シルヴィアはもう……まぁいいけどね。それでファセット様、おちびちゃんのルースの方の状況はどんな感じですか?」

「それなのですが、これはちょっと予想外というかなんというか……」

「良くないんですか?予定の出力に達しないとかですか?」

「大丈夫、たとえ駄目でも私はおちびちゃんの面倒を一生見るから」

まったくこの子は。宣言していないだけで、心の中ではすでにおちびちゃんを主と決めているのだろうか?


「あんた、本当にどうしたの?まだ直接会話もしてないし、どんな性格をしてるのかも判らないのにそこまで傾倒するって、ちょっと異常よ?」

「あぁ、シルヴィアは小さき子のこれまでの生い立ちを知ったのでしょう。それで同情してしまったのでは?」

「同情……それが全くないとは言わない。でもこの子は可愛い。可愛いは正義。それにこの子はこっちには家族がいない。だから私がこの子の心も体も悪意ある全てのものから護る」

 あぁ、やっぱり心の中ではすでに決めちゃってるのね。

「まぁ、可愛いのは認めるけど、わたし的にはあくまでも小さい子供的な可愛さかな?生い立ちに同情するところもあるけれどね。でも、この子よりもっとひどい人生を送ってる人なんてこの宇宙には掃いて捨てるほどいるのよ?そういう人たちはどうするの?」


 そう、広い宇宙を探せばおちびちゃんよりも酷い生い立ちの子供なんていくらでもいるのだ。

「それはそれ、これはこれ。私の両手で直接守れるものには限りがある。そして私の手の内に入ってきたのはこの子、だから私はこの子を命の続く限り護ると決めた」

「それって、おちびちゃんを主と見定めて専属を誓うって事?」

「そう。おちびちゃんにはその価値があると判断した」


 あぁ、やっぱりすでに決めちゃっていたのね。それじゃ私も覚悟を決めますか。

「そっか、それじゃ仕方ないね。それならわたしは、あなたがやりすぎないように、そしてあなたが護りきれなさそうな時にサポートすることにするわ」

「サリナも誓うの?」

「そうね、いままでシルヴィアと一緒にやってきたわけだし、今後も一緒の方が何かと便利でしょう?それに私もこの子を見ていると、なぜか目を離せないというか、目を離したら何をするか判らない不安があって、つい見守りたい気持ちになるのよね。なにより、こんな可愛い子の面倒を一生見れるチャンスなんて、ケープエル星人の一人として見逃せないわ!」


 この子、なんとなくドジそうだし、色々とフォローとか必要よね?

 それに足が不自由だから色々とサポートが必要だろうし、すごくお世話のし甲斐がありそうなのよね!

「もともと二人に小さき子の面倒を見てもらう予定でしたので特に問題は無いのですけれど、まさか小さき子が目覚める前に専属を誓うのはちょっと予想外でした。そこまであなたたちから慕われているのを見ると少し嫉妬してしまいますね」


 やっぱりファセット様としては、私たち二人をこの計画の中枢担当にしたのはこうなる事を分かっていたのかな?

 主と決めた人を護ることに対して生き甲斐を感じるという種族特性を持つステワルド星人のシルヴィア、そして主と決めた人にとことん尽くしてお世話をする事に生き甲斐を感じるという種族特性を持つケープエル星人の私を数年前から担当にしたんですものね。


「あら、ファセット様は別に私たちがいなくても困ったりはしないでしょう?」

「それこそ、それはそれ、これはこれというものですよ、ふふふっ」

「ふふふ、そうですね」


 ピッピッピッ、ピーーーーーッ


 どうやらおちびちゃんの治療が終わったみたいだ。

「治療終了。脳波、血圧、バイタル……検査結果も全て良好、問題なし」

 そうして治療ポッド内の薬液が抜かれ、閉じていた蓋が空き始めた。


「あぁ、これで一安心ですね。やはり治療ポッドのモニターでは経過は良好と分かっていても、無事に終わると安心感が違いますね」

「私が薬液を洗い流す。サリナはおちびちゃんを寝室に連れていく準備をお願い」

「りょうかーいっと、どうやって連れて行こうか?お姫様抱っこで連れて行く?」

「あぁ、それなら良い物を用意してあります。本来は小さき子用の移動椅子なのですけど、簡易ベッドにもなるのでそれに乗せて寝室まで連れて行ってあげてください。今持ってきますね」

「それじゃ、シルヴィアは体をふくためのタオルと何か着せるものを用意してきてくれる?」



 ファセット様とシルヴィアが準備のために治療室を出た後、医療ポッドの下からシャワーを取り出し少女の体に付着している薬液を軽く洗い流そうとしたが、まだ外されずに残っていた貞操帯を見てこれも今のうちに外してしまおうと思い、工具を用いて貞操帯のカギを開け少女の体から貞操帯を外した。


 その後、薬液に濡れている少女の体をシャワーを使って洗い流し始めた頃に、ファセット様が床からわずかに浮いている小型の一人掛けソファーの様な椅子を押して治療室に入ってきた。

「体を拭いた後はこれに乗せて寝室まで連れて行ってあげてください。あぁ、貞操帯は外したのですね」

「代わりはファセット様が用意しているのですよね?」

「えぇ、ちゃんと良い物を用意してありますよ。そうですね、今のうちに着けておきましょうか」

 そう言ってファセット様は以前着けていたものよりはるかに小さい貞操帯を、どこからともなく取り出し少女に装着した。


 そうこうしていると、その手にバスローブと大量のタオルを持ったシルヴィアが現れた。

「お待たせ。服はバスローブにした。とりあえず体を拭く」

「私が拭くからタオルを頂戴」

そう言ってシルヴィアから大量のタオルを受け取り、おちびちゃんの体を隅々まで拭いていく。


「わかった、そっちはお願い。私は服を着せる準備をする。ファセット様、これが先ほど言っていた物?」

「そうよ?本来は浮遊椅子として使うものなのだけど、ここのボタンを押すとね、こうなるのよ」

 そういって背もたれの後ろにあるパネルに表示されているボタンの一つを押すと、背もたれが倒れ出すと同時にふくらはぎの当たる部分がせり上がり、簡易ベッドのように変形した。

「これでベッドどしても使えるわ」

 もし椅子の状態からベッドの状態に変わる姿を少女が見たら、まるで歯医者にある治療用の椅子の様だと思ったことだろう。


 その上にバスローブを広げ、少女を寝かせてすぐ着せられるように準備されていた。

「拭き終わったよー。そっちに移すけど準備は良い?」

「準備は出来てる。間違っても落とさない様に気を付けて」

「大丈夫大丈夫、そんなヘマはしないって」

 そう言って少女を横抱きの状態で持ち上げ、簡易ベッドの上に広げられたバスローブの上に寝かせ前を閉じ合わせた。


「それじゃ寝室に寝かせてきますね」

「えぇ、よろしくお願いしますね。寝かせた後も二人の内どちらかは側にいてあげてください。起きて見知らぬところに一人でいたら不安になると思いますので」

「大丈夫、起きるまで私が側に付いている」

「寝てるからって、変なことしちゃだめよ?」

「サリナとは違う。そんな事はしない」

「ちょっとー、わたしだって変なことはしないわよ!ちょっと触ったり、頭なでたり、頬っぺた突っついたりはするかもだけど」

「それを変な事という。むしろそんな事してる最中におちびちゃんが起きたら変質者に襲われてると認識するはず」

「まぁまぁ二人とも、その位にして小さき子をベッドで寝かせてあげて下さいな」

「行ってくる。サリナは治療室の後片付けお願い」

「りょうかーい、いってらっしゃい」



 そして、少女はシルヴィアに移動型ベットに乗せられた状態で寝室まで運ばれ、豪奢な天蓋付きベッドに寝かされた。



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