42.レースで不正を疑われていますよ?
ロビーでお二人の姿を見つけました!
「たっだいまー、良いタイム出たよー」
「おつかれー、みてたよー」
「えへへ、トップ取れたみたいー」
「おちびちゃん速かった」
「それなんだけどね、なんか審判団が審議に入ったみたいよ?」
え、審判が審議中?なにかあったの?え、私の事で?なんかやらかした?
「なんかね、おちびちゃんが早すぎるのが問題っぽい?」
ふえっ、早すぎる?え?いつも通りなんだけど?まあ、自己ベストは出たけど練習と比べてもちょっと早かっただけだよ?
「なんでもぶっちぎりすぎたとかなんとか」
むむむ、ほかの人と比べて早すぎるですと!?
どのくらい?あー、これは、確かに差がすごいねぇ。
「おちびちゃん、運営の人が別室用意してくれたみたいだから、そっち移動しよっか」
え?周りの雰囲気が悪いから運営側が別室用意してくれた?審判団からの公式発表があるまでそっちに?わかったー。
んー、わたしとしては普通に飛んだだけなんだけどねぇ。むしろ何でこんなに差がつくの?もしかして、カスタマイズした船で出ちゃダメだったとか?
あ、その辺は事前の規定チェックで大丈夫?てか、ダメなら登録時にはじかれてる?まぁ、そうだよね。
ちょっと公式掲示板チェックしてみるー。
うわー、荒れてるというか、すでに炎上レベル!?
なになに、早すぎワロエナイ、チートだろう?未発表のカスタムパーツ使ってるのでは?、マクロでも組んだんじゃねーの?艦種詐称?
えー、普通に飛んだだけじゃんー。
最初の加速からあり得ない?いやいや、普通にブーストしただけじゃん?
公式発表が出た?問題なし?だよねー、何も悪いことしてないもんっ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おーっと、どうやら審判団による判定が出ました。様々な観点から検証した結果はオールグリーン、全くの問題なしとの事です」
「驚きの結果ですね。どうやら操作画面とコントローラの入力数値、そして画面上での動きや使用した船の設定等々全てのデータをコンピュータ解析にかけてこのタイムが実現可能なのかシミュレータにかけて確認したようですね」
「その結果、問題なしという事ですね?」
「そうですね。それにしても私も検証中におちび選手の操作動画を見たのですが、どうやら異常加速は意図して行われたもののようですね」
「といいますと?」
「動画にはプレイヤーの音声も入っていまして、異常加速するときにおちび選手が「ブースト」と言っているんですよ」
「ブースト……ですか?もしかして、新型のオブションか何かなのでしょうか?」
「それはですね……(これ言っちゃってもよろしい?許可出てるの?本人のも?あぁ、スポンサー側から疑いがあるなら全て公開していいと許可が出てると)えー、お待たせしました。今確認したところ、情報公開の許可が下りているとの事でしたので説明させていただきますね」
「まず見ていて分かったエンジンの異常加速についてですが、おちび選手本人にとっては異常でも何でもなく、意図して行った加速だったという事です」
「えっと、その様にエンジンを整備したという事でしょうか?」
「エンジンの整備というより、コントロール系の設定という事ですね」
「すいません、その辺をもう少し具体的にお願いできますか?」
「そうですね。まずエンジンの出力とコントロールですが、通常はエンジンの寿命などを考えてそのエンジンが本来出せる最大出力の約80%ほどが、通常コントロール側での最大出力と設定されているんですよ」
「なるほど、それで?」
「で、ですね。おちび選手の場合はこの出力を、えー具体的な数値は隠させていただきますが最大100%以上の出力を引き出せるような設定をしていたらしいんですよ」
「それは…結果として普通の場合の1.2倍以上の出力が出せる、という事であっていますか?」
「そういう事になります。ただ、当然のことながら当初予定されている出力を上回るわけですから、そんな出力を出し続けているとエンジンはすぐ壊れてしまうわけですね。そのための最大出力80%での設定な訳ですよ」
「となると、おちび選手はあえてエンジンブローの危険を冒してまで最大出力を上げて今回の大会に参加した……という事でしょうか?」
「そうなりますね。ただ、(これもいっちゃっていいの?ほんとに?問題になった時はそっちで責任とってくださいよ?)えー、おちび選手の過去のタイムアタックのデータを特別に見させてもらったのですが……あ、一応非公開設定でのタイムなのですが、今回特別という事でタイムを公開してもらえたのですがね?どうやら上級コース全てにおいて非公開コースレコードを所持しているそうです。それも今回と同じようにずば抜けたタイムを、です」
「と言いますと、普段からこの設定を扱っている……という事ですか?」
「そういう事だと思われます。通常各種レースモードでは一回飛ぶたびに船の状態を初期に戻せるので、毎回船の性能を本当の意味で限界まで絞り出して使っている、とそういう事なんでしょうね。あと、データを見るにそれを行っているのはメインエンジンだけではなく、姿勢制御用スラスターも同様に行っているようです」
「それは、すごいと言いますかなんといいますか。ちなみにそれは誰でも可能な事なのでしょうか?」
「どうでしょうね?そのような設定で操作しきれるのか、という点については実際に設定してやってみないと判らないと言うのが正直なところですが、壊してしまってもいいのでしたらこの出力はコントロール系の設定を変えることで誰でも出せるものという事ですね。もっとも様々な要因もありますので、どこまで出せるかは各パーツとの相性などもあると思いますけどね」
「そうなんですか。ちなみにこの方法、おちび選手はご自分で気づかれたのでしょうか?」
「そこら辺についてはおちび選手本人に聞いてみないと判らないですね。あとですね、実はおちび選手はかなり特殊な操作を行っているようでして、その操作方法があの異常出力、おちび選手のいう所のブーストですか?のコントロールを行ったり、異常とも思われる高速度でアステロイドベルトを潜り抜けた秘密だと、私は思っています」
「ほほう、それはどのような方法なのでしょうか?いまここで教えていただくことは?」
「さすがにそこまでは許可が下りていませんので、もし興味がある方は是非有料ページのおちび選手のデータ参照権を購入して見てあげてください!」
「ここにきていきなり宣伝しちゃいますか」
「えぇ、ちょっと秘密をバラしすぎちゃったかなと思うので、そのお詫びを含めて少しくらいならいいかなと」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ふみ?私の動画のデータ参照権の購入がすごいことになってるの?
無料データのアクセス数が一気に100万アクセス超えてて、有料の動画データ参照権も3万件超えてる?それってすごいの?あー、でもヨウツーブで考えると100万アクセスって確かにすごいね!
えー、無料データの方でも一定アクセス数を超えると1アクセス辺りでお金もらえるの?まさしくヨウツーブみたい。
え?データ参照権て1件でそんなにもらえるの!?うわ、一気にお金持ちじゃーん!
でも、使い道ないよねぇ。お洋服はファセット様が沢山くれたし、ごはんはサリナさんが作ってくれるし、お菓子はシルヴィアさんが作ってくれるでしょ?
ゲーム内でも船は今の所いじる予定ないし?ゲーム内通貨もそこそこ貯まって来てるから、もしいじるとしてもそっちで足りそうだし。
使うのって冒険者パスのお金位?
よし、気にしないことにしよう!
もう結構いい時間になったし、お腹空いたからログアウトして夜ご飯食べよー
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おちびちゃん、優勝したそうね?」
「はい、もうダントツぶっちぎりでしたね。あまりに早すぎて運営からも不正が無かったか確認が入った位でしたよ」
「それで、問題は無かったのよね?」
「きちんと取れる限りのデータを提供していましたので、そちらを確認してコンピュータ解析によるチェックまでしたそうですよ?」
「そう、その位すごかったのね。私もあとで見てみるわね?」
「あー、一緒に飛んでる訳では無いのでおちびちゃん単体のだとあまりすごさが判らないかもしれないですよ?すごさを見るなら、公式動画の方だと全員の位置情報がコース図上に出ているので、他の人とどの位さがあるのか比べられてすごさが分かりやすいかもですね」
「そうなの?それじゃ、公式動画とリンクさせて見てみるわ?」
「そうですねー。ちなみに無料データのアクセス数がすでに200万件を超えていて、有料のデータ参照権もすでに5万件に達したようですよ。しかもいまだに増えて行ってるようです」
「それは、すごいわね?さすがおちびちゃんという事かしら?」
「最初にチートじゃないかって騒がれた事によって逆にみんなが何が起こったのかと興味を引いたみたいですね。あと、司会者の方が最後にちょっとだけおちびちゃんの宣伝みたいなことを言ったので、そのせいもあるかもですね」
「そうなの?司会者が特定のプレイヤーの宣伝とか、しても良かったかしら?」
「なんでも不正が無い事を説明するときに詳しく解説しすぎたからそのお詫びにって事らしいですよ?運営側からも特に注意もなかったそうですから」
「そう、それならよかったわね?」
「ちなみにおちびちゃん、お腹空いたっていってログアウトしたんですけど、表彰式のこと忘れてるっぽいんですよね」
「あら、そうなの?それは出たくなくてログアウトしたのかしら?それともただ単に表彰式の事を知らないだけなのかしら?」
「おちびちゃんの事だから、表彰式があるって知らないんじゃないんですかね?」
「何時からなの?ご飯の後でも間に合うのかしら?」
「確か21時からなのでご飯の後でも十分間に合うと思いますよ?」
「そうなの?それじゃ特に嫌がってる感じじゃなければ出てもらおうかしら?新しい着物のデータも送っておくので、それを着てもらってね?」
「良い宣伝になりますね」
「その分ギャラは多めに出すことにするわ?」
「でも、動画のアクセス料でもらえる金額知っても、使い道ないーって言ってましたよ?」
「そうね、今は無いかもしれないわね。でも将来何かやりたいことが出来た時のためにも、自由にできるお金は沢山あるに越したことはないと思うのよ?」
「そうですね、いざ必要な時に無いよりはある方が良いですものね」
「もっとも、大和の方も結構な売り上げが出ているから、そっちの方からの入金もすごいことになってると思うわよ?」
「あー、おちびちゃん口座の残高とか気にしてなさそうですしねー」
「まぁ、お金を気にして生活しなきゃいけないような事はさせる気無いから、それでもいいと思うのよ?」
「ですね」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
え?大会の表彰式?そんなのあるの?
あー、うん。そこまで見てなかったー。出た方が良いの?わかったー、新しい着物を着て出ればいいのね?
そして表彰式に出るため再度ログインする事になったのでした。




