第九話 三年後 前編
あの婚約が決まってしまってから大体三年が経った。
今の私は十歳だ。そう、学校に入る年齢だ。
私はあれから大したことはしていない。ただ三年が経っただけの様に感じる。
確かに店は前より少し大きくなったし、剣術だってあの時よりは成長したと思っている。魔法の方も、最近は幻想魔法に挑戦している。
私は洋服の仕上げをする魔法を作った。これを使ったら自分が作った洋服が一層キラキラして見えた。他には、戦闘で使えるようなのも考えた。昔観ていた戦隊少女アニメに出てくる技だけど。イメージしたら思っていたよりできた。
トランペットの方は曲を吹いていて、難しいのに挑戦している。先生から課題として渡されているのだ。
でも、合奏とかしたいが、そうはいかない。年齢のおかげでオーケストラの練習に参加が出来ないのだ。だって十歳でトランペット吹いている人なんていないからね。この世界に。現実世界には居る。
こんな生活をしていて楽しいが、めんどくさい事だってある。それは王子との面会だ。しかも最近剣術を習い始めた様なのだ。しかも、
「上手くなったら手合わせを願いたい。」
と、言われた。
流石に王子の誘いだから断りたくても断れなかった。確かにここ三年で私は強くなった。兵士の方たちも強くなったって言っているし。だから王子に負ける事は無い。でも、私が勝ったらいけない気がする。でも、負けたくない。
だから私は今、衛兵の稽古場で練習している。
「 シャロンお嬢様、お手合わせを願いたい。」
衛兵の男の人が言った。私はこの人には一度も勝ったことがない。29回戦っているが。今回は30回目。
「ええ。喜んで!」
久しぶりの対戦。今回こそは勝つ!30回目の正直!
私とこの人は同時に剣を構えて、同時に動き出した。
数分ほど戦った。
結果は…負けました。0勝30敗。
「 シャロンお嬢様はいつになったら僕に勝てるのでしょうか?」
「 さあ?でもいつかは勝つ!」
「 その勢いですよ。シャロンお嬢様。」
私は負けたのが悔しい。次こそは勝ちたい。31回目の正直!
でも、これが楽しい。今なら失敗してもいい。練習の時に沢山失敗をするのはいい事だから。大切なのはその失敗を次につなげる事。何度失敗をしてもいい。それがいつか、成功に変わるから。