第二十六話 期待
新学期が始まり新しく出会った可愛らしい子。侯爵家のシャロン・スティアードさんとそのメイドさんのアリス・キルクダムさん。二人は双子と言っても信じてしまいそうなほど似ております。
彼女たちは不思議な人たち。侯爵家だから私の家、公爵家ファルメルと交流を持とうとする他の家の人たちと同じなのかと思えば、予想をはあるかに超える人たちでした。
シャロンさんは明るく、真っ直ぐな人。アリスさんは真面目で優秀。そして正義感のある人。彼女たちは一緒に育ったようなのね。本当に双子みたい。
「お嬢様、二人を信用してよろしいのですか?」
「ええ。あの二人なら。かけてみましょう。」
「……かしこまりました。お嬢様。」
公爵家が目当てではない人たち。この学校では珍しいわ。ただでさえ、シャロンさんは王子の婚約者。本当に信じていいのかわからないと思ったが、あの真っ直ぐなトランペットの音色。あの人なら信じられる。
そんな気がした。
私が入学してから6年間。最初の頃は理事長に見た目と公爵家という地位のみで優遇され、そのおかげでクイーンにもなった。親からは期待され、公爵家の立場のみでしか知り合いなんていなかった。
友達なんて出来なかった。
私は過去に一度理事長に逆らった。その罰として鞭を打たれたのは今でも忘れない。
ここで生きるには逆らわず従い、優秀でいること。幼く、無知な私はそう思った。そこからはいつもやっていたから簡単だった。
でも、このまま卒業なんてしたくない。
だからこそ彼女達にお願いするべきなのだろう。
「お嬢様はあの二人を信用しているのですね。」
「ライト…あの子たちもだけど、貴方もよ。」
「光栄です。お嬢様。」
ライトは私の秘密を一切言わなかった。それが6年間生きてこられた理由。本当に感謝している。
私があの子たちのためにも、残さなくてはなりません。
「ライト、あの子に贈り物を。ドレスがいいかしら?また、情報をお願いね。」
「かしこまりました。ジェシカお嬢様。仰せのままに。」
公爵家の立場なんて、地位なんて、全て消えたら自由になれるかしら?
自由になりたいな。私はこのまま……。
ただ、お嬢様として完璧な淑女として過ごし、政略結婚に利用され、跡取りを生んで終わり。それが当たり前。それが公爵令嬢の運命。私の運命。
もし、こんな運命から抜け出せたら、海にでも出てみたいな。
でも、どうせ無理なのでしょう。
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