第十八話 よくわからないランチタイム
朝にトランペットを吹いた後、普通に学校が始まった。
授業の方はあらかじめ予習をしておいたので楽勝である。最初の確認テストだって余裕だった。
このまま何も無く今日が終わればいいのに。
そう思っていた。だが、そうはいかなかった。
お昼時、私はランチを食べようと思って、食堂に向かおうとした。
「シャロン嬢、僕と一緒に食事でもしませんか?」
私の目の前でそういったのは、綺麗な金髪にエメラルドグリーンの瞳。
こ、この人は…!
彼の名前は、アレクシス・ミロサファイア。ここ、クロリア王国の隣の国ミロサファイア王国の第1王子で、このゲームのサブキャラ。
ヤバイ!あまり関わりたく無かったのに。でも、誘われたから仕方ない。
「はい、喜んで。」
こうするしかない。
彼はゲームではたくさん登場するが、攻略する事は無い。ただのサブキャラなのだ。
エドワルド王子の友人で剣術が得意。
ヒロインに恋しているのかと思われていたが、他に好きな人がいるらしいと噂されている人物。その人物は定かではない。
そんな人がどうして私をランチに誘うのだろう。謎だ。
「シャロン嬢はエドワルド王子の婚約者なんだよね?」
「はい。」
食堂に向かう途中、アレクシスが聞いてきた。
何故こんな事を聞くのかが私にはわからない。
「それは君が望んだことなのか?」
「い、いいえ。私は婚約など望んでおりません。」
「そう。ならいいや。」
そう言ってアレクシスは笑顔になった。でも、分かりにくい笑顔だ。でも、安心しているようにも見える。
どうして?私は疑問しかなかった。
食堂につき、注文をした。
私はパンとスープを。アレクシスも私のと同じのを頼んだ。
そして席に着き、しばらくしていたら
「そういえば、今日の朝に綺麗なトランペットの音が聞こえたんだ。」
あ、聴こえてたんだな。そりゃ、聴こえるよ。トランペットなのだから。
「え、ええ。私も聴こえました。」
「吹いていたのは……君でしょ?」
やばい!バレた!隠す気無かったけど。隠す気無いから言ってもいいか。
「はい、そうです。今日の朝、トランペットを吹いたのは私です。」
「やっぱり。とても綺麗だったよ。音も吹いている君も。」
その言葉に私は思わず顔を赤くしてしまった。
見られてたのかよ。どこで見てたんだよ。
「え、あ、ありがとうございます……。」
そう言ったら、アレクシスはニコっと笑って、
「美味しかった。それじゃあね。」
と。そしてもうアレクシスは食べ終わっていた。アレクシスは席を立って、とっとと教室へ戻って行った。
てか、食べるの早!
「気に入ったよ。シャロン・スティアード侯爵令嬢。エドワルドが知ったら……。」
シャロンと別れたアレクシスは歩きながら言った。
周りには誰もいない。
そして彼は思った。
なんでエドワルドの婚約者なんだろう。どうして婚約者になったのだろうか。
彼女があの時の少女なら。
彼は、ポケットから小さいネックレスを取り出して握った。




