第十六話 ヒロインとコルセット
この学校では女子は必ずコルセットを付けないといけないのだ。
ゲームではヒロインが庶民出身の為コルセットをつけていなくて、理事長にコルセットを無理矢理着つけられて苦しかったところを、悪役であるシャロンが助ける。というシーンがある。
そのせいか、シャロンは最初、いい人と思われていて、悪役令嬢だと分からなかったらしい。
それがまもなく始まる。ヒロインが理事長に無理矢理コルセットをつけられるシーンが。
この日が来ると思って私は、ブラックローズの新作で柔らかめの新作コルセットを作った。私が今つけているコルセットもその新作だ。試作品だけどね。
私達は今、コルセットを付けているかのチェックを受けている。
だからみんなコルセットと下にズボンをはいた姿なのだ。
もちろん、男はいない。
「 ミス・ミルクリア。これはどう言う事ですの?貴女は何故、コルセットをつけていないのですか?」
黒のシスター服に銀色の大きな十字架のネックレス、綺麗に三つ編みに結ばれた茶色い髪にマリアヴェールを被っている。そして、とてつもなく冷たい目の持ち主。
この学校の最高権力者、理事長のミル・コスモス。
彼女の目の前にいるのは、茶髪のショートボブにピンク色の眼を持つ可愛らしい少女。ヒロインのエミリア・ミルクリア男爵令嬢だ。
「 私はコルセットを一度も身につけた事がありません。」
「 そうですか。なら言いますね?この学校ではコルセットをつける事が規則なのよ?ですので、貴女にはこれからこのコルセットをつけてもらいます。使用人たち!」
「はい。」
「 !!」
理事長の言葉に理事長の使用人が一気に動いた。
そして理事長に無理矢理コルセットをつけられたエミリア様。なんだかとても苦しそう。
そしてエミリア様にコルセットをつけさせ終えた理事長は私の近くに来て…
「それに比べてミス・スティアードはこのようにデザインにまでこだわったものを。皆さん、彼女を見習いましょう。とても素敵ですわよ?ミス・スティアード。」
「 ありがとうございます。」
何故か褒められた。そういえば、ゲームでもシャロンは理事長のお気に入りだった。たとえお気に入りになったとしても、これは嬉しくない。
今日の学校が終わり、私は教室から自分の部屋に戻ろうとした。
戻っている途中、とても苦しそうに壁をつたって歩いている人がいた。エミリア様だ。
心配だからと彼女に近づいた瞬間、エミリア様がいきなり倒れた。
目の前に倒れている人がいたら放って置けない。
私は倒れているエミリア様を自分の部屋に連れて行った。そして彼女からコルセットを外した。このコルセット、とても硬い素材でできている。そりゃ、苦しいよ。ひどい。こんなにきつく縛っていて。
数分してようやくエミリア様が目を覚ました。
「あ、あれ…私…?ここは…どこ?」
「目が覚めたのね。気分はどう?」
エミリア様は驚いた顔をしている。仕方ない。目が覚めたら自分よりも格上の人がいるのだから。
「 あなたは確か、シャロン様…。!コルセット…どうして…?」
彼女はコルセットが無いことに気がついた。
「 貴女が苦しそうにしていたから。放って置けなくて。コルセットなら簡単に外せたわ。」
「 た、助けて頂き、ありがとうございます。」
「 いいのよ。コルセット付けたの初めてなんでしょ?」
「 はい。」
エミリア様は申し訳なさそうに俯いた。
「 やっぱり。じゃあ、これあげるよ。」
私はそう言って新作のコルセットを出した。
「ダメです。こんな高いもの!」
エミリア様は慌てて断った。
「 いいよ。どうせ試作品だし。これを機にコルセットを体になじませて。柔らかくしているから大丈夫よ。」
私は彼女にこの試作品のコルセットと付けた。少し緩くして。
「 ありがとうございます。私、どのようなお礼をしたらいいのか…。」
「 いいって。それより、理事長には気をつけて。ああいうのは、逆らっちゃいけないの。」
「 はい…。」
そしてエミリア様は部屋に戻っていった。無事に戻れたかな?ここ意外と広いのよね。




