第十一話 私はアリス
私の名前は、アリス・キルクダム。シャロンお嬢様の専属メイドです。
シャロンお嬢様のお話をしましょう。
シャロンお嬢様は七歳になるまでは、それはそれは大変なお嬢様でした。わがままで、自分勝手で…でもとても可愛いのです。
七歳の誕生日の日、お嬢様はパーティーの最中に迷子になってしまい、悪い大人達に攫われそうになりました。
無事でしたが、その次の日からお嬢様は変わりました。
わがままを言わなくなり、勉強に興味を持ち、さらにトランペットにまで興味を持ったのです。しまいには洋服店も開いてしまうなど、お嬢様は天才かと思いました。
あれから三年が経ち、お嬢様も学校へ入学するお年になりました。勿論、私はシャロンお嬢様の専属メイドですので付いていきます。
お嬢様は三年前に王子の婚約者に選ばれました。お嬢様は王子の婚約者になったことを喜んでいませんでした。
普通の御令嬢なら飛び跳ねて喜ぶのに。お嬢様は逆に嫌がっておりました。
一体、何がお嬢様の幸せなのでしょうか?王子との結婚では無いとしたら、お嬢様は何を求めているのでしょうか。
ですが、王子が関わらない所では楽しそうな顔をします。それを見ていると私も嬉しくなります。
お嬢様が幸せならそれでいいのです。
そんな幸せだったのか最近、夢を見ます。
その夢は変なのです。私が今いる世界には無いような服、景色なのです。魔法もありません。
ある時は、銀色のフルートを吹いている夢。またある時は、誰かと喋っている夢。
そんな夢を見ているうちに、ある事がわかりました。
これはただの夢ではありません。
私の記憶だ。しかも私は一回死んでいる。この夢は私の前世の記憶なのだ。
私の前世の名前は桜井 天音。死んだ時の年齢は二十八歳。職業、公安警察です。
私は公安警察の仕事で、とある凶悪組織に潜入していて、その組織を潰す作戦を実行していた。途中から銃撃戦に変わってしまい、戦っている途中に打たれて死んでしまいました。
でも、死ぬのはわかっていた事。
私は自分が死んだ時、十七歳という若さで死んでしまった親友が迎えにきてくれると思っていたから。
でも、親友は迎えには来てくれず私は転生してしまった。
その親友の名前は天野 実亜。幼稚園の頃からの付き合いで、高校まで一緒に仲良くしていた。勿論、部活も同じだった。私と実亜は吹奏楽部に入った。私がフルートで実亜がトランペットだ。
喧嘩した時もあったけど、私は実亜が大好き。親友が死んだ時、悲しくて悲しくて沢山泣いた。実亜を殺した人を許せなかった。
この時に私に優しくしてくれた警察官に私は憧れて、私は警察官になった。でも私がなったのは普通の警察官ではなく、公安警察官だった。
ここがどこだかわからなかった。異世界なのはわかったけど。
前世の事を思い出しても、アリスとしての記憶があるから仕事は普通に出来た。
今日は仕事が早く終わった為、軽くお屋敷の中を歩いていた。
そしたら、外から綺麗なトランペットの音が聞こえた。
でも、曲が私の知っている、とある曲のワンフレーズだ。この曲のワンフレーズは、私が高校三年の時のコンクールで吹いた曲のトランペットソロのところだ。
でもどうして…この曲が…
しかも…この吹き癖…聴いたことある音色…
まさか……実亜……?
だとしたら…実亜も転生してるってこと?
私はこの音色の持ち主のところへ走った。音がだんだん大きくなってくる。
だどりついた時、そこに居たのはシャロンお嬢様だった。シャロンお嬢様はトランペットを吹いていた。私はつい、
「 実亜!」
と叫んでしまった。
「 え…?アリス…?」




