5話 龍の記憶
わが名は黒龍、最強にして全ての龍の頂点、龍王である。
だがそれは昔の事だ。今は、龍王の座を若い連中にまかせ、今は龍の里の奥でひっそりと暮らしている。
別に歳で弱ったから退いたのではない。
たしかに数千年以上生きているのだがまだバリバリ動ける。
ついこの前新竜王と手合せした時も新竜王は我に傷一つ負わすことができなかった。
別に新竜王が弱いわけではない。
仮にも全ての龍の頂点、弱くあっては大問題なのだ。
しかし引退した我にあっさり負けるとは、まだまだだの。
ではなぜ我が竜王の座から退いたのか。
それは至極単純、龍王よりこっちが楽しいのだ。
時間を気にせずのんびりできるし、何をするのも自由なのは最高なのだ。
しかし、最近退屈している。
いままでたくさんの事を自由気ままにすごしてきたがどれも飽きてしまった。
非常に退屈である。
いつものように龍の里周辺を散歩しそのまま帰路についた。
やはりなにも変わらない、若い龍たちと軽く世間話をすること以外本当になにもない。
帰ったら昼寝でもしようかと思っていた矢先不思議なものがそこにはいた。
人間である。
見た目10歳ぐらいの少年だ。
黒龍は首をかしげる。
はて?ここは龍の里の辺境とも言っていい場所、こんなところに人間が来れるはずがない。
その瞬間黒龍のいつの日か以来の好奇心がわいた。
この少年はいったい何者なのであろう。
幸いに外傷はなくきちんと呼吸をしている。
黒龍は少年を気を付けながら巣にもどった。
巣の隅に寝かせ、横に立ちじっと見つめる。
改めてみると、かなり良い体をしている。
整った顔立ちにすらっとした体躯。
これは鍛えれば勇者ぐらいの強さになるのではないか。
そんな気がしてきた。
この少年が目覚めたとき我をみてどう思うのであろう。
腰を抜かして驚くか、はたまた冷静に状況を飲み込むのか。
どちらにせよ面白そうな事この上ない。
はやく目覚めぬか、はやく目覚めぬか。
そう好奇心が募っていくばかりである




