エピローグ
『盛り上がらなかったわねえ。そりゃあ相手がゴーストだもの、盛り上がり様もないわよねえ』
「盛り上がってたまるか、元々ゴミ掃除みたいなもんだったんだろう?」
洗い残した皿がある。
それをきちんと洗う必要があり、それを終えてきた。それだけの事で、特別なことはない。
独り言の多かったマサヨシは、結局自分のベッドの上で余人から見れば独り言にしか聞こえない、脳内魔族との会話をすることになった。
結局、相変わらず、マサヨシは当人の希望通りに街へ『潜伏』できている。『協力者』として雇用者であり住居を確保してくれている、店長との信頼関係も築けた。結果的に、心理的な負担も和らいでいる。
「第一、お前強いんだろう? 苦戦したら名誉にかかわるんじゃないか?」
『まあ、それはそうなんだけどね~~。やっぱりお披露目は、もっと派手な方がよかったわ』
「……俺はごめんだよ」
結局、今回も失敗しなかった。
ヒーロースーツを一巡させ、更に自分の力を手に入れたマサヨシ。
その戦いは一区切りを迎えた。つまり霞の女王一派による被害は、完全に収まったのだ。
「異世界に来て、ヒーローとして振る舞って、地方の魔王を倒して街を一つ救いました。まあ悪くない結びだな」
『……まさか、このまま隠棲するつもり? つまらないわねえ』
「このやり取りも何度目だ」
本当に、しつこいぐらい『俺は戦いたくない』『俺がやらないといけない気が』『セイギ!』『あんなことするんじゃなかった』のループである。
もちろん、一般市民としては普通なのだろうが、死線を乗り越えたわりに成長が見られない。
良いんだろうか、こんな感じで。
「結局、お前との戦いが一番の盛り上がりだったとは思うが……」
『あら、嬉しい!』
「一番喜んでるの、お前なんだよなあ……」
結局、一番身近な相手がこの化け物である。脳内魔族に呪いの言葉をささやかれ続ける人生である。
どっかの神殿にいって浄化してもらえないだろうか。っていうか、成仏するなり昇天して欲しい。
「孤独な戦士にも理解者は必要というが、それは店長一人で十分だしなあ」
『あらあら、貴方のことを一番理解しているのは私よ?』
「お前に理解されても嬉しくねーよ」
悪人が更生して仲間になる。それはそれでお約束だが、正直立ち会ってみるとちっとも楽しくない。本当にただ呪われただけのような気がする。
もちろん、呪われるということもある程度覚悟したうえでの戦闘ではあったのだが。
「でもまあ……」
『なに?』
「お前の協力のおかげで、ようやくすっきりして寝れそうだ」
『あらそう、子守歌でも歌う?』
「眠らせろ」
これから先、何が起ころかわからないのが人生ではある。本当に、短い間に色々あった。
案外、これから先は何事もなく過ごせるのかもしれない。
そうだったらいいのにな、と思いつつ。
しかし心のどこかで期待もしながら瞼を閉じる。
「つまりは、普通が一番だ」
七人のヒーローを演じたマサヨシは、充実感と共に目を閉じていた。
しりすぼみになって、申し訳ありませんでした。
とりあえず、この物語はここまでとさせていただきます。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。




