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白黒世界の告白

作者: 一人待

黒い林檎と白い林檎。どちらかを必ず食べなければならない時、あなたはどちらを選びますか?

私は松江奈津江。古臭い名前だけど、まだ17歳の高校生です。

突然ですが、私の目には色が映りません。白と黒、時々灰色の混じった世界に生きています。

街を歩くとき、身体を帯びている熱で「今日は晴れ」だということが分かります。でも私の視界には白い空にしか見えず、駅前の交差点の人混みも薄い黒や濃い灰色で表現されるのです。


「まるで白黒映画にいるみたい。ずっと昭和が続いてる様な気がするわ」


私の世界はずっと前から昭和中期です。カラー映像が普及しなかった平成か、昭和91年を1人で生きてきました。

私の友人が教えてくれました。

クリスマスには緑色のツリーがオレンジや赤色の電球に飾られて綺麗に輝くこと。

春には薄桃色の桜が咲き誇り、散っていく様を見ながら人がご飯を食べること。

沖縄の海が透き通った青であること。

しかしそれは自慢にしか聞こえず、いつの間にか彼女とは疎遠になってしまいました。

世界中の人々は目に見えるものの美しさを判断するとき、”色”もその対象に入れます。特に女性はそうです。

ただ、色で苦労する事がないのが唯一の救いです。

それでも色の無い世界は寂しく冷たい場所です。幼い頃は特にそれを気にして、母にどうして私は色が見えないのか尋ねました。

母はとんちんかんな答えを私に返しました。高校生になった今でも色が見えない理由を聞くと、彼女は激怒して以下のことを言うのです。


私の母は私を身ごもっていると周りに伝えた際、知り合いの占い師から妊娠祝いとして真っ白な林檎と真っ黒なら林檎を貰いました。

彼女は「片方は生まれる赤ん坊が見る世界が華やかに見える林檎、片方はモノクロにしかみえない林檎」と説明しました。ですが母はそれを信じないで白い林檎を選び食べました。

不吉な物をプレゼントする友人がいるわけが無い。そう思ったのでしょう。

ですが生まれた私は空の色がわからず、女性が何故アイシャドーや口紅をするのかが理解できませんでした。

色が支配する世界に、私は最初からすんではいけなかったのです。

母はこうも言いました。

「白は祝福をもたらしてくれる感じがしたから、選んだ」

私を出産後、林檎をくれた占い師は失踪したそうです。執着心の強い母親は説明してほしいと思い、占い師を血眼になって探しましたが、結局見つかりませんでした。

しかし、最近占い師は私の元に現れました。そして白い林檎と黒い林檎を差し出して、どちらかを食べる様に言いました。


「片方は祝福の林檎、もう片方は不幸の林檎だよ。」


私ははねのけ、走りながら家路を急ぎました。でもたまに思うのです。

どちらかを選べばカラー映像が肉眼でみられる世界が待っていたのでは無いかと。

もしあなたが私みたいな状況になったら、どっちを選びますか?

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