表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

処刑

おばあ様は死んだ。


テラも死んだ。


でもそれは二日前の話。

今、私は………………牢屋の中。

暗くて寂しくて冷たい牢屋。

鉄の檻で硬い石床。

だから中には私以外何もいないし、何もない。

別に何も無くても構わない。

どうせ私は明日、貴族殺しの加担で処刑されるんだから。


私は気力が無くなっていたとは言え、殺してないと一度も主張しなかったから、そういう結果に至ってしまったのかな。

でも主張しても無駄な気がした。

だって街に連行されたとき知ったけど、テラは……。

いえ、テリトラは街のみんなから愛されていた。

テリトラが死んだと伝わったと同時に、悲しみに包まれた街。

その愛おしい人物が殺されてしまい、街の人には悲しみと怒りをぶつける対象が必要に感じた。

なら見殺しにしてしまった私が、その対象に適任だろう。

それに私が死ぬことで街の人が憎しみの心を一切持たず、テリトラに冥福を祈れるなら、喜んで死のう。


どうせ、私には何もない。

あるのはペンダントについてるロケットに隠されていた契約書と、屋敷の生活とテラとの思い出。

意外にも両親は契約書を残していた。

気が付いたのは牢屋に投げ込まれたとき。

何らかの衝撃でロケットは壊れてしまい、外れた写真の後ろから小さな紙切れが出てきたのだ。

それが契約書。


こんな手のひらぐらいしかない紙切れのせいで、おばあ様は欲に目が眩み、テラは死んでしまった。

きっと両親は私の幸せのために残したのだろうけど、逆に不幸に陥れしまったのだから皮肉な話だよね…。


私は契約書を破り捨て、ペンダントと一緒に石床へ放置することにした。

もう私には不必要なものだから、気にしないようにする。


テラ………。

……あ、みんなはテリトラって呼ぶけど、私は最後まであなたの愛称で呼ばせて。

それにしてもテラは凄い人だったんだね。

テラの一族にも皇帝と契約書があっただけじゃなく、国を大きく発展させてた有力貴族で、特に貿易に力を入れていたなんて初耳だったよ。

それだけじゃなく、テラ個人だけでも凄まじい功績で、何よりこの街を愛していたんだね。


私、外の世界のことばかりで、テラについての話をあまりしてなかったことを思い出すと、残念に思うよ。

外の世界だけではなく、もっとテラについても知りたかったから。

そんなこと言っても、もう遅いよね。

ごめんなさい。


あぁ…………今日はもう寝よう。

明日からとても長い眠りについてしまうけど。

朝を迎え、私は処刑台に立っていた。

まだ早朝と言える時間帯だろうに、数え切れないほどの大勢の人が集まり、私に罵声を浴びさせてきた。

さらに辺り一帯は人だらけだけど、みんな地下室にいた時のおばあ様みたいな顔をしている。


だから少し恐いけど、大丈夫。

私は大丈夫だよ。

周りから嫌われようとも、脅されようとも、迫害されようとも、私の心の中にはテラがいるから。

そう信じてる。


でも、おかしいの。

今になって涙が溢れて止まらないの。

死が恐いわけじゃないのに、泣いてしまう。

不思議だよね……、テラ。


私は一歩踏み出した。

目の前には、頭がちょうど入る大きさの輪が作られた縄がぶら下がっている。

これに首を通せば床下が抜けて、私は宙吊りにされて死ぬ。

テラが死んだのだから、私も死なないと……。


テラが死んだ……から。


…死んだんだ、テラは。

もうテラは本当にいないんだ。

いない……、テラは………いない。


私はテラが死んでいなくなってしまったのを思い出し、再び悲しみに浸った。

突然、胸が潰れそうな辛い気持ちが込み上げてくる。

涙が溢れる。

私は悲しみに我慢できず、空へ向かって大声で叫んだ。


「テラ、何故あなたは死んだの!?何故あなたが死ななければなかったの!?私はもっとあなたと一緒に居たかった!だから死ぬなんてあまりにも酷い!外の世界なんてどうでもいい!だから私と一緒にいて!私を悲しみの淵から救いだし、笑顔にさせて!私にはあなたしかいない!あなただけが必要なの!あなたがいなければ私は………私ぁ…幸せになれないの…!私はあなたを……愛していたっ…!今もずっと…これからも!!私はテラを愛している」


最後の一言で罵声がより一層酷くなったけど、私はそんなのは気にせずに空を見続けた。

でも、次第に………溜まってきていたものが溢れてくる。


「うぅ……ぁ!テラっ……!!うわぁぁあぁぁぁあぁ……!ぅぁぁああぁぁああぁあぁぁぁあああ、うわぁぁああぁあぁあぁあぁぁぁあぁあぁああぁぁぁぁあぁぅっ…!!!テラぁぁ……!」


私は泣き崩れた。

悲しすぎて視界が全て涙で覆われる。

もうテラの名前を呼ぶので精一杯。

それでも何とか力を振り絞り、声を無理やり殺して私は立ち上がる。

最期にテラに笑顔を見せてあげようとしたけど、作り笑顔ができない。

やっぱりテラがいないと、本当の笑顔なんて無理だよ…。




そして間もなくして私は首を吊った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ