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殺意

両親?

私の……両親の遺骨!?

何なの、もう何がどうなのか分からない!

私は思わぬ衝撃の事実に、今までに一度もなかったほどにヒステリックに叫ぶ。


「どういうことおばあ様!?その骨は私の両親のもの?両親は山火事で焼け死んだはずでしょ!なのになんでここに骨があるの!!」


「声を荒げないでください。とても無様に下品な声で叫ばれるのは耳障りですよ」


おばあ様はランタンを汚い石床に置き、代わりに別の物を手に取る。

その物は一瞬ランタンの光りを反射させたけど、何なのか視認できなかった。


「お嬢様は山火事で死んだと聞き、一度も不審に思わなかったのですか?山火事というものは一度起きてしまったら、全体に広がってしまうものなんですよ。もしこの屋敷の近くで山火事が実際に起きてたら、いくらお嬢様が小さかったとしても、その光景は脳裏に焼け付くものです。まぁ外に出さなかったため、本当に山火事が起きたなど調べようもなかったでしょうが」


……そういえばテラに山火事で両親を死んだと教えたとき、テラが少し不思議そうな顔をしていた気がする。

きっと焼けた場所や跡なんて、一切見なかったのだろう。


「では私の両親は何故亡くなったの…!?」


おばあ様はゆっくりと、だけど足取りは軽く、そして心なしか力強く近づいてくる。


「簡単な事ですよ。私が殺したんです」


「おばあ様が……!?」


あっさりとおばあ様はそう答えたけど、とんでもない発言だった。

その発言に私が驚き戸惑っていると、突然おばあ様は足を速めて文字通り目の前にまでやって来た。


「えぇ…、これで刺し殺したんですよ!」


不吉で嫌な笑顔を私にわざと見せつけ、所々赤黒くなった銀色の刃物を私の頬に押し当てた。

だけど私は高ぶった感情のせいか刃物に恐れず、質問をぶつける。


「何故?なんで私の両親を殺してしまったの?」


「……お嬢様は知らないでしょうけど、あなたの両親は皇帝との財産について契約していたのですよ。その契約で皇帝から頂ける財産は、お嬢様には到底想像できないほどの物なのです。私はただそれが欲しかった!」


おばあ様は私と同じようにかつてないほどの感情の高ぶりを見せ始める。


「なのに肝心な契約書は見つからない!!いくら探しても両親を脅しても分からなかった!最終的に殺してしまった時に気が付いたんですよ…。あなたの両親はすでにお嬢様に契約書を託していると」


おばあ様はそう断言してきたが、私には身に覚えがなかった。

契約書らしき物すら私は貰った記憶はない。

それに私はテラから契約のことを聞いたとき、両親はすでにその契約を破棄していると思っていた。

それが私の思い違いか、それともおばあ様に思い違いがあるのか確かめようがない。


「さぁお嬢様!!契約書を差し出してください!素直にそうして下されば殺しはしませんよ!」


おばあ様は完全に私が契約書を持っていると思っている。

私はもう失望するしかなかった。

今までおばあ様が私の世話をしていたのは、自分のために過ぎなかったからだ。

それに私を生かしておくのは、その方が何かと都合が良いだけに違いない。

結局全てはおばあ様自身のため。

おばあ様からしたら私は道具同然なのね……。

そう思うと裏切られたような絶望感に陥り、もう泣いてしまいたかった。


「おばあ様…。私は契約書なんて………持っていません。そんなの知らないんです……」


私が正直に答えた瞬間、おばあ様は怒気を帯びた顔つきになり、刃物を持っていない手で思いっきり私の頬に平手打ちをしてきた。

激しい音と共に私はそのせいで後ろに倒れるが、おばあ様は追い討ちをかけるように怒声をあげる。


「嘘をつかないでちょうだいっ!!あなたが持っていなかったら誰が持っていると言うのよ!?」


私は痛みと悲しさで涙で目を滲ませながら、手でそっと頬に触れた。

ジンジンと痛みが広がり、皮膚が熱い。


「本当に知らないんです、おばあ様。契約書なんて私持っていません……!」


もう私にはそれしか言えず、それだけを伝えるしかなかった。

それが本当に私の知る限りの真実であるからだ。

そしていつの間にか、涙が止まらなくなってきていた。


「あぁ、情けない。本当に情けない。お嬢様はもっと上手な嘘をつけないのですか?」


「おばあ様……」


「あまり気安く呼ばないでください。…まぁ、いいでしょう。そこまで強情にするなら私に考えがあります」


おばあ様は私から離れて、ポケットからマッチ箱を取り出してマッチを擦る。

そのマッチの火を壁に掛けられている別のランタンの中に火を移し、灯りは周りを照らした。

でもその灯りの下には…………。


「テ……テラ…?テラがどうして……!?」


服だけじゃなく、身までボロボロなテラが壁にもたれていた。

周りにはおびただしい血がこびりついていて、体は恐ろしいほどまでに真っ赤だった。


「あぁ…っ!ぁ…ぅ……!」


正常に呼吸ができなくなるほど胸が詰まる。

さらに嫌な汗が私の顔から垂れ、頭は生きたまま脳みそをかき回されたように耐え難い頭痛がして、さっきまで自分どうだったのかすら分からなくなるほどまでに混乱した。


「テラぁ……!テラぁぁあぁあ!!」


もはや悲鳴と同じ私の叫び声が地下室に響き渡る。

そして私の表情はあまりの悲痛で酷く歪み、涙が溢れて止まらなくなった。


「ぁぁあっ……!!っぅぁ…!」


もう何を言えばいいのか分からない。

今見たのを忘れてしまいたいぐらい辛い。


「お嬢様、泣くことはありませんよ。この迷い人は昏睡状態ですけど、確かにまだ生きてます」


それを聞いた私は本当に僅かだけ気持ちが落ち着いた。

でもどちらにしろテラの酷い有り様には変わらないし、命の危険性が十分にある。

もし私のせいでそうなってしまっているならせめて助けてあげたい。


「さて、お嬢様。迷い人の命が惜しいと思うなら早く契約書の場所を吐いてしまった方がいいですよ。このままだと、本当に死んでしまいますから」


こうなってしまったら適当に言ってしまおうか。

私はそんな低脳な考えを働かしたけど、すぐに自分の中で否定した。

きっとおばあ様は屋敷内は完全に調べ尽くしているはず。

そうだとしたら嘘とバレて、何かを言う暇もなくテラを殺してしまう可能性がある。

そんな最悪の場合は避けたい。

私は一生懸命どうしようかと頭をひねったが、打開策は何も思いつかない。

テラが殺されてしまうという焦りと、おばあ様に対する恐怖が余計に私の思考を邪魔するのだ。

しばらくしても私が何も言わないから、おばあ様はしゃがんでテラの顔をいやらしく刃物で擦り始めた。


「なるほど、よく分かりました。言わないのですね。では………」


「おばあ様、いったい何をするの?やめて……!」


おばあ様はニヤニヤと悪魔のような笑顔を浮かべ、テラの目に…………指を入れた。


「………っ゛!?」


まるで小さな穴を無理矢理こじ開けるみたいに指でぐりぐりと、ぐりぐりと、ぐりぐりと、わざと何度も何度も何度も眼を本当に取り出すかように指に力を入れているのが音で分かる。

その聞きたくない気持ち悪い音が私の頭の中で響き、あまりの残酷な行為に悲鳴をあげることもできなかった。

完全にどうすればいいか判断できない。

見たくなくても、ただ見届けるしかなかった。

おばあ様がテラの赤く染まった片目を抜き取り、それを床に叩きつけると目は果物のと同じように柔らかく飛び散った。


「ぁ………ぁあ゛……!」


私は自分の頭をかきむしる。

状況がしっかりと理解できず、視界が何も視認できないほどに歪み始める。


飛び散った。

何が?

何が飛び散った?

目?

誰の目?

テラ。

そう、テラの目。

私を優しい眼差しで見つめてくれたテラの目。

もう死にそうなテラ。

テラ……。

テラなんだ。

私のせい。

全部私のせい。

私が答えないから。

だからテラは眼をえぐられた。

私が悪い。

テラは悪くない。

テラが痛めつけられる理由なんてない。

テラが………。

テラがぁ……………!!


息が荒くなっていた私の中で、何かが崩れ発狂した。


「いや゛ァあぁぁぁぁあぁあああぁぁぁああぁぁあ゛ああぁぁああぁあ゛゛!!?ぁあぁあ゛あ゛ぁ!!テラぁあああぁあああぁあぁあぁぁああ゛ぁ゛!テラぁテラ゛ぁテラあ…!いやいやいやいやいやいやいやァァぁあああ゛ぁぁぅ゛あぁああぁぁあ」


無意識に私はかつてない叫び声をあげながら、テラに向かって走り出した。


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